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日本初「水素クルーズ船」東京湾に就航へ 日本郵船140年の集大成に!? バブルの香り残す36年選手を置換え

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36年ぶりのバトンタッチ 新たな“東京湾のシンボル”へ

 日本郵船は2026年7月6日、東京・天王洲アイルを拠点に東京湾を周遊するレストラン船「レディクリスタル」の後継船となる新クルーズ船「AMANE(海音、あまね)」を2027年5月頃に就航させると発表しました。36年間にわたり“東京湾のシンボル”として親しまれてきたレディクリスタルは、2026年11月末頃に引退します。

Large figure1 gallery1新造船「AMANE」のイメージ(画像:日本郵船)

 発表会に登壇した日本郵船の曽我貴也社長はAMANEについて、「日本郵船の新たな挑戦や価値観を社会へ発信する拠点にしたいと考えております」と語りました。

 既存のレディクリスタルは旅客定員200名弱の小さな客船です。「AMANE」の船体も全長約48m、総トン数約480トンと、現行からあえて大幅な大型化はしていません。これは「お客さまお一人お一人に寄り添った、きめ細やかなおもてなしを実現するための最適なサイズ」という考えに基づいているといいます。

 36年ぶりの新造船として大きな特徴となるのが、ディーゼルエンジンに加えてバッテリーを搭載したハイブリッド型電気推進船で、さらに日本郵船の船体としては初めて水素燃料を搭載することです。ここにはトヨタやヤンマー(ヤンマーパワーソリューション)が培った水素関連機器の知見も結集しています。環境負荷を低減するだけでなく、従来船に比べて振動や騒音、燃料油特有のにおいを大幅に抑えられ、レストラン船としてより快適な空間を実現するといいます。

「代替燃料には水素やアンモニアなど色々ありますが、水素やバッテリーは大型船より小型船のほうが合う。今回のAMANEは、我々の“ESG(環境・社会・ガバナンス)のショーケース”であり、このサイズの船に適したバッテリーと水素を組み合わせたシステムを採用しました。大型船ではできない部分を、この船で実現していきたい、という夢も含まれています」(曽我社長)

 冒頭で曽我社長が説明した「日本郵船の新たな挑戦や価値観を社会へ発信する拠点」としての価値が、ここに見て取れます。平成初期の“バブルの香り”を残すレストラン船としてのレディクリスタルから、脱炭素などの社会課題を踏まえた最新のテクノロジーを体現する存在へと脱皮するようです。

「旧岩崎庭園」にインスパイア

 AMANEの船内は1階にメインダイニング、2階に3つの個室とバーラウンジ、そして船首デッキや最上階のフライングデッキなどを備えます。船のトータルデザインを手掛けたのは、国内外で多彩なプロジェクトを手がける世界的なデザイナー、ワンダーウォール代表の片山正通氏です。

 片山氏は、初めてレディクリスタルに乗船した際に「こんな豊かな風景が広がってるのか」と感動した経験と、かつて訪れた旧岩崎邸庭園からインスピレーションを得て、デザインコンセプトを「庭園としての東京湾」としました。「東京湾を庭と見立てて、そこに浮かぶ邸宅」をイメージしたといいます。

 デザインのテーマは「和魂洋才」と「わびさびとエスプリ」。日本の伝統的な精神を大切にしつつ、西洋の文化や先端技術を融合させ、「30年後、40年後も古くならないようなデザイン」を目指したと語ります。プロジェクトの開始にあたり、約140年におよぶ日本郵船が紡いできた客船文化の歴史をひもといていったそうです。

 そのこだわりは、船の構造にも表れています。通常、風の影響を避けるために船尾に設けられることが多いプライベートな個室を、「どうしても船に乗ったときに、前を見たい」という片山氏の強い要望で、最も眺めの良い船首に配置。そのために操舵室の位置を移動させるという設計変更が行われました。これにより、船首には前面がラウンドガラスとなった12名用の大きな個室が誕生します。

「デザインよりむしろ海を見ていただきたい。空間を移動しながら、それぞれの場所から見る東京湾を楽しんでいただくような考え」と片山氏は説明し、船上での体験を最も重視していると強調しました。

“モノ”より“コト”を売る 「ブティッククルーズ」という体験

 ハード面を担当する片山氏に対し、レストランのプロデュースなどソフト面の顧客体験の構築を担ったのが、天王洲アイルのブルワリーレストラン「T.Y.HARBOR」などを運営するタイソンズアンドカンパニー代表の寺田心平氏です。

Large figure2 gallery2会見の様子。左から寺田心平氏、曽我貴也社長、片山正通氏(乗りものニュース編集部撮影)

 寺田氏は「飲食店が売るものは食べ物、飲み物を楽しみながら過ごす時間そのもの」という哲学のもと、乗船前から下船後まで、一連の“物語”として体験をデザインするといいます。

 コンセプトは「ブティッククルーズ」とのこと。「大型のホテルに対して、都会にはブティックホテルと呼ばれる小規模のホテルがあります。同じように小規模でデザイン性が高く、上質で、人と人との距離が近いホスピタリティのあるシティクルーズ体験を作ろうとしました」と寺田氏は語ります。

「小梅ちゃん」からの卒業 曽我社長の思い

 船上での食事は、日本郵船の客船の伝統を受け継ぐフランス料理です。レディクリスタルの羽山賢二総料理長が、日本各地の旬の食材や、時には港で利用されない魚(未利用魚)なども活用し、「日本でしか食べられないフレンチ」を提供するといいます。

Large figure3 gallery336年前「小梅ちゃん」と通称されていたレディクリスタル(乗りものニュース編集部撮影)

 寺田氏は「東京を海から見ると本当にきれいなんです。皆さんが知らないだけで、東京には豊かな水辺があります。その魅力を引き出すことに集中しました」と述べ、景色と食事、そして空間が一体となった体験価値の創造に自信を見せました。

 ちなみに、曽我社長は36年前、レディクリスタルが誕生した当時、初代「飛鳥」のプロジェクトを担当しており、隣のチームが進めるレディクリスタルのプロジェクトを間近で見ていたといいます。

「レディクリスタルのプロジェクト名は『小梅ちゃん』と言われていました。(飛鳥IIなどの)松・竹・梅に続く4番目の客船プロジェクトだったからです。『小梅ちゃん』もすごく成長して、36年間も頑張ってくれたのは本当にうれしい」と、長年連れ添った船への思いを明かしました。

 そして、新たなAMANEに向けて、「お客様の一人一人の心の中に、この『あまね』というのが、思い出のすごく大きなパーツとして残り続けるような、そんなサービスと船になってほしい」とエールを送りました。

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