目標は台風や噴火! 自然災害にあえて飛び込む「観測飛行」パイロットというお仕事
- 乗りものニュース |

台風、地震、噴火等々、大陸プレートが密集しており、台風の通り道でもある日本に住んでいると、ありとあらゆる自然災害に遭う可能性があります。そうした自然現象を調べ、防災に役立てるために働いているパイロットの方々がいます。
自然現象に挑み そのメカニズムを知る「観測飛行」
台風や地震、火山の噴火など、自然現象がどのようなメカニズムでどのように災害をもたらすのか、空から観測、調査する研究者を、その現場まで飛行機で運ぶ「観測飛行のパイロット」というお仕事があります。自然災害に関わるということで重要なもののはずですが、詳細について広く知られているとは言い難いでしょう。
実際どんなことをしているのか、観測飛行を行っているDAS(ダイヤモンドエアサービス)社の北原龍一機長に話を聞きました。
ダイヤモンドエアサービスが運用する「ガルフストリーム IV」(画像:DAS)。
台風に火山に人口降雨…飛行の目的は実に様々
「観測飛行」はDAS社が大学や研究機関などの依頼を受け行うもので、その内容は多岐にわたるそうです。
「(大学や研究機関などの)先生方の研究や調査のために、現場までお連れするのが我々の仕事です。分かりやすいところですと台風や線状降水帯など、様々な気象現象の観測を先生方と一緒に行っています。ほかにも火山噴火の観測や、面白い実験だと夏季の水不足を解消するため、冬季のダムに人為的に雪雲を作る人工降雪実験や、アラブ首長国連邦に行って、人工降雨の有効性なども調べました」(北原機長)
使用航空機は、三菱MU-300や米ガルフストリーム・エアロスペース社の「ガルフストリームIV」、米ビーチ・エアクラフト社(当時)の「キングエア 200T」などで、観測内容に応じて内部の装備は変更するそうです。たとえば雲の動きを観測する場合はマイクロウェーブレーダという機材を、台風の観測をする場合は空中投下式の観測機器「ドロップゾンデシステム」などを搭載します。なお、エンジンや機体の剛性などは特にカスタムされていないそうです。
「普通の旅客機は雷雲や嵐を避けて飛行しますが、様々な気象現象を調査する観測飛行では細心の注意を払い安全を確保してから飛行を行わなくてはなりません。異常な温度や数値を感知して、飛行機側が混乱してしまうという状況にもよく遭遇します」(北原機長)
そのような場合、もちろん自動制御も使えなくなり、マニュアルで操作しなければならないことが増えるそうで、北原機長は「パイロットとしての腕が問われますね」といいます。
「観測飛行パイロット」という資格はない?
豪雨や強風、火山灰など、通常ではありえない特異な状況へ自ら向かっていく飛行、ということで、専用の資格が必要なのかとイメージしますが、実は「観測飛行パイロット」という資格はないそうです。
「特に観測飛行用の資格というのはありません。私はこの会社に就職して、先輩などの飛行を見て観測飛行での操縦の基礎を学びました。この実験にはどのような飛行プランがいいのか、機材はこの程度、重量はこのくらいといった計算も我々がやります。経験が重要になる仕事だと思います。そうした観測飛行で得た様々な情報は社内で共有、蓄積し、今後に役立てます」(北原機長)
ダイヤモンドエアサービスの事業のひとつ「観測飛行」にて、台風の目の内側へ突入した際の窓外の様子(画像:DAS)。
北原機長の場合は、アメリカでしばらくパイロットの教官を経験した後にDAS社へ入ったとのことです。
「私の場合、決まった航路を毎日飛ぶよりも、毎回違う場所を飛行する方が性に合っていたんだと思います。一緒に乗る観測チームの先生方も個性的で、こういう考え方があるのかと感心するのも楽しいところですね」(北原機長)
ただ、たまにアグレッシブすぎる先生もいらっしゃるそうで、「危ない場所に行こうとするので、それはさすがに危険ですとお断りすることもあります」と北原機長は笑います。
観測飛行を行う常設の機関がないので予算面も悩みどころ
こうした観測飛行は、前記したように大学や研究機関の主導で行われています。つまり、それら大学や研究機関において予算が下りないと観測飛行の依頼もないわけで、実際そうした時期もあるそうです。
もちろん、DASが展開する航空機を用いた事業は、観測飛行のみではありません。たとえば「μ(マイクロ)G実験」という、飛行機内で疑似的に無重力空間を生み出す実験飛行も行っています。
「国際宇宙ステーションの運用、利用が進み、航空機によるμG実験に対する需要が縮小し予算が減少傾向であり、最近では多かった時期の半分程度しかμG実験のフライトはしていません。大学が単独で実験する場合などは、何度かのフライトでデータを取得する方が実験精度も上がるので好ましいものの、予算の関係から1回のフライトで、できる限り有効なデータを取得することに苦労しています」(北原さん)
DAS側では「こういうフライトも出来る」とアピールすることはできますが、最終的には大学や研究機関が依頼してくれるのを待つしかありません。そのため、政府が主導して、常に観測飛行用の機体をチャーターして欲しいという声も、研究者のあいだにはあるようです。
ダイヤモンドエアサービスの北原龍一機長(画像:DAS)。
「観測飛行用の機体をチャーターしたい」という声には、予算のほかに、即応性という面の課題もあります。
「台風が来た、地震が起きた、火山が噴火したといった自然災害が発生した場合、現状だと依頼が来てからそれ用の機材を機内に設置するので、最低でも飛び立つまでに2、3日かかります。東日本大震災のときは、徹夜で総がかりで準備をして翌日には飛び立ちましたが、これは例外であって、いつでもそのようにできるものではありません。常に専用の機体が待機するシステムがあれば災害直後に現場へ急行できるのですが、そうできないのはもどかしいですね」(北原機長)
たとえばアメリカには、ハリケーンを調査する「ハリケーンハンター」のように軍や省庁が管理運営しているチームや、そうしたチーム専用にチャーターしている機体があります。北原機長によると、限られた予算のなかでも、目覚ましい成果を出している大学や研究機関もあるそうです。海水温上昇による台風の大型化への懸念や、南海トラフ地震の危機なども叫ばれている昨今、こうした観測飛行がもっと円滑に行えるように祈るばかりです。
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