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「もっと頑張らなきゃ」と焦り続けた日々。長濱ねるが見つけた、自分らしい歩幅

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取材・文:渡邊玲子
撮影:大嶋千尋
編集:杉田穂南/マイナビウーマン編集部、五十嵐紫月/マイナビウーマン編集部

映画『ラブ≠コメディ』でヒロイン・南風美里を演じた長濱ねるさん。本作は、華やかな恋愛模様だけでなく、ドラマ制作の舞台裏も描くエンターテインメント作品だ。

監督やプロデューサー、俳優、そして現場を支えるスタッフたち。それぞれが自分の仕事に向き合いながら、一つの作品を作り上げていく。完成した映画を振り返りながら、長濱さんはこんな言葉を口にした。

「この作品を通して、改めて『熱くなるっていいな』と思いました」

その言葉は、作品について語るものでありながら、どこか長濱さん自身の現在地を表しているようにも聞こえた。10代から走り続けてきた日々。「もっと頑張らなきゃ」と焦っていた時期。そして今、少しずつ見つけつつある自分らしい歩幅。映画の話から見えてきたのは、長濱さん自身の変化の物語だった。

■「自分とは似ていない」と思った美里という存在

長濱さんが演じた南風美里は、アイドルとして活動しながら俳優業にも挑戦する人物だ。その設定だけを聞けば、自身との共通点は少なくない。けれど最初に台本を読んだ時、長濱さんが抱いた印象は意外なものだった。

「自分とはあまり似ていないなと思いました。美里は相手が先輩でも目上の方でも、自分の意見をちゃんと伝えられるんです。私はどちらかというと、まず飲み込んでしまう方なので

現場で何かを感じても、すぐには口に出せない。一度自分の中で考えて、考えて、それから言葉を選ぶ。これまで取材やエッセイでも垣間見えてきた長濱さんらしさは、そんな慎重さにある。ただ、美里を理解できなかったわけではない。むしろ、その強さの奥にある感情には深く共感したという。

「アイドルをやりながら俳優のお仕事をしていて、お芝居の現場でどう振る舞うべきかをすごく考えている子なんですよね。でも美里の強さの根源ってきっと、自分は畑が違うところからドラマの現場にお邪魔させてもらっている。その上で、全ての仕事に対して誇りを持って、自分自身に対してもプライドを持ってやっているからこその、『手を抜きたくない』っていう部分なのかなと思って。そこの内面的な気持ちにはとても共感できるなと思ったんです

自分とは違うようでいて、どこか近い。だからこそ演じながら気づかされることもあったのだとか。

「私はお芝居を始めるのが遅かったので、役者さん同士がお芝居について話している輪の中に入っていけないなと思う時期がありました。自分がここで同じ立場で自分の役について話したら、『何を分かってるんだよ』っていう風に思われちゃうかなとか。もちろん実際に言われたことは一度もないんですが、勝手に自分の中でそういう負い目があって」

そんな想像をするたび、どこか引いてしまう自分がいたのだそう。けれど美里を演じた時間が、その感覚を変えていったという。

「私はずっと、意見を言うことは対立することだと思っていたんです。でも美里のように口に出して言った方が相手にリスペクトが伝わるなと思いました。むしろ言うことで“みんなで一緒に一つのいい作品を作りたい”という愛情が生まれていくんじゃないかなと思いました。美里に影響を受けて、『ラブ≠コメディ』以降は、美里のように……とまではいかないんですが、私なりにいろんな意見を口にできるようにはなってきたかなと思います」

■「もっと頑張らなきゃ」と焦り続けていた20代前半

今でこそ、「心が健康的な状態で過ごせている」と語る長濱さんだが、そこにたどり着くまでには長い時間があった。

10代から25歳くらいまでは、ずっと焦りと戦っていた気がします。もっとこうやりたい、こうなっていきたいという思いは常にあって。けれど、できない自分に直面するととてももどかしくて。とにかくがむしゃらに頑張ることしかできなかったんです」

特に10代の頃は、環境の変化のスピードに心と体が追いつかない感覚があったという。

「身の丈に合わないような経験をたくさんさせていただいたんですが、自分自身はまだ成長できていなくて。体と心だけ置いていかれるような感覚がありました」

一方で、お芝居という仕事は、これまでとは少し違う時間の流れを教えてくれたと語る。

「お芝居って、一つの役とじっくり向き合えるんです。一つのシーンをみんなで時間をかけて作っていく。その中で、自分の変化やできない部分も受け入れながら進んでいけるようになりました

さらに、さまざまな世代の俳優たちと共演する中で、考え方にも変化が生まれた。

「慌てて追いかけても、先輩方が積み重ねてきたものに、すぐにはたどり着けないんですよね。それにお芝居は、自分ではなかなか『うまくできた』という実感が持てない仕事でもあるので。だからこそ本当に一歩ずつ進んでいくしかないんだなと思えるようになりました」

かつて自分を突き動かしていた焦りとの向き合い方が変わった今、長濱さんの表情はどこか穏やかだった。

■「こう見られたい」を手放せたから

長濱さんは、自身の変化について語る中で、「俯瞰」という言葉を口にした。以前は、「こう見られたい」という思いが強かったという。

「昔は、自分も『こう見られたい』とか『私はこういう人間のはずだ』とか、自分の中で決め切って、そこの枠から外れることが怖かったんです」

特に、女の子らしく見られることへの抵抗感もあったのだとか。

「けれどお芝居をやるなかで、どうやったってこの声やこの身体からは逃げられないんだなと思ったんです。その上で、自分が演じたらこの役はどうなるだろうとか、自分だからできることは何だろうって考えられるようになって。以前よりも、自分を少し離れたところから見られるようになった気がします」

自分を否定するのではなく、自分自身という「器」を通して役を生きるようになったという長濱さん。今なら、これまでなら躊躇していたような役柄にも挑戦できるかもしれない。そう語る表情は、とても軽やかだった。

■自分を見失いそうな時は、大切な人のもとへ

では、自分自身を大切にするために心がけていることはあるのだろうか。少し考えたあと、長濱さんは意外な答えを返してくれた。

「私は、自分を大切にできていないなと思う時ほど、家族や友達に会うようにしています」

忙しい日々が続くと、自分のことは後回しになってしまう。食べて、帰って、寝る。そんな毎日になっている時こそ、意識的に大切な人との時間を作るのだという。

「友達とゆっくりご飯を食べたり、短い時間でも実家に帰って親に感謝を伝えたりしています。何か恩返しをするみたいなことで自分のことも大事にできている気がするので。誰かに喜んでもらうことが、ひいては誰かを喜ばすことができている自分という、自尊心じゃないのですが、自分のことも少し肯定できるような気がします」

自分を大切にすることと、誰かを大切にすること。その二つは、長濱さんの中では切り離されたものではないらしい。

■何かに夢中になれることこそがすてき。「その熱は諦めなくていい」

映画『ラブ≠コメディ』について話す中で、長濱さんは何度か「熱」という言葉を口にした。映像制作に携わる人たちの熱量。作品を作り上げるために交わされる言葉。そして、自分自身を突き動かす情熱。

「今の時代、いろいろな情報に疲れてしまうこともあると思うんです」

だからこそ、本作には軽やかに楽しめるエンターテインメントでありながら、「熱くなること」の素晴らしさが込められていると感じているのだとか。

「私自身、この作品を通して『頑張るってすてきなことだな』と改めて思わされました。時には、自分が頑張っているのになんで周りのみんなは気づいてくれないんだろうとか、自分の頑張りが搾取されているような気分になったりすることもあると思うんですが、好きなことを一生懸命追いかけたり、何かに夢中になったりすることって、本当に尊いことだと思うんです」

焦りと向き合いながら歩んできた長濱さんだからこそ、その言葉はまっすぐ胸に届く。

頑張りすぎて疲れちゃうな、しんどいなと思うこともあると思うんですが、そういう時は少し休憩してもいいし、遠回りしてもいいと思うんです。頑張れていることがとってもすてきだから、その熱だけは諦めなくていい。私もそうありたいですし、皆さんにも自分の好きなものや大切なものへの気持ちを持ち続けていてほしいなと思います」

かつては「もっと頑張らなきゃ」と自分を追い立てていた。でも、今の長濱さんは、力を抜くことも知っている。焦りを手放したわけではない。熱を失ったわけでもない。自分の歩幅を知りながら、それでも前へ進んでいく。そのしなやかな強さこそが、多くの人を惹きつける理由なのかもしれない。

『ラブ≠コメディ』

主人公の神崎麗司は“360度全方位イケメン”と称され、数々のラブコメ作品で主演を務めてきた人気俳優兼アイドル。「ラブコメなんて、もうやりたくない!」――30歳を目前に、重厚なドラマで認められたいという思いを抱えている中、またもや届いたのは王道ラブコメの出演オファー。相手役はアイドル・南風美里と聞き反発する麗司だが、この出会いが彼の人生を大きく動かしていく……。
7月3日(金)全国公開

監督:紙谷楓
脚本:大北はるか
キャスト:中島健人 長濱ねる
板谷由夏 塩野瑛久 本多力 前野朋哉 今野浩喜 野村麻純 宮崎吐夢 磯山さやか 岩井拳士朗 信川清順 工藤美桜 今野大輝(B & ZAI) 北代祐太 アパッチ長男 / 菊田竜大(ハナコ) 三石琴乃 光石研 / 財前直見
配給:ストームレーベルズ/ライブ・ビューイング・ジャパン
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