自動車大手が「自爆ドローン」製造へ 一体どんなもの? かつての“戦車の名門”が防衛へ復帰 欧州メーカー“背に腹”の事情
- 乗りものニュース |

クルマ屋が作る「シャヘド」似の自爆ドローン
フランスの経済・産業専門誌「L’Usine nouvelle」は2026年1月20日、同国の自動車メーカーであるルノーが、軍用UAS(無人航空機システム)「コーラス」を生産する準備に入ったと報じました。
ルノーのル・マン工場(画像:ルノー)
L’Usine nouvelleによれば、コーラスは「シャヘド136」に相似した形状と機能を備えたものとなるようです。シャヘドはイランが開発し、ロシアも「ゲラン2」の名称で採用している自爆突入型UASです。
プロペラ駆動で弾頭重量30~50kg程度のシャヘドは、高度なステルス性能を持つF-35のような戦闘機や、海上自衛隊も導入する「トマホーク」のような巡航ミサイルに比べれば、国家対国家の正規戦ではあまり役に立たないと考えられていました。しかし、小型機であるが故に発見されにくく、価格も1~5万ドル(推定)程度と安価なうえ、ロシアのウクライナ侵攻などで大きな効果を上げたことから、正規戦においても有効な戦力と見なされるようになっています。
アメリカでも鹵獲したシャヘド136を分析してシャヘド型UAS「LUCAS」を緊急開発し、2025年末からLUCASを運用する最初の実戦部隊「タスクフォース・スコーピオン・ストライク」を中東に展開させています。
L’Usine nouvelleは、ルノーが中堅防衛メーカーのタージス・ガイヤールとコーラスを共同開発し、自動車のシャーシなどを製造しているル・マンとクレオンの両工場で製造を行うと報じています。
第二次世界大戦中には各国の自動車メーカーで軍用航空機の生産が行われていましたが、近年、平時にヨーロッパの大手自動車メーカーが軍用航空機の製造に直接参入する例はほとんどなく、1月20日付の軍事専門紙「ディフェンスニュース」も、驚きをもってこのニュースを報じています。
実は軍需産業と縁が深いルノー
1898年にルイ・ルノーとその兄弟たちによって「ルノー兄弟社」として設立されたルノーは、20世紀初頭にパリ市からタクシーの大量受注を得て、乗用車や小型商用車を大量生産する自動車メーカーとしての地位を確立しました。
ビジネスパーソンであると同時に発明家でもあったルイ・ルノーは、ドラムブレーキやターボチャージャーといった、現在の乗用車や小型商用車に使用されている技術を発明する一方で、戦車や航空機エンジンといった防衛装備品の新規開発も熱心に手がけていました。
たとえば第一次大戦中に開発された「ルノーFT」戦車は、車体の上に回転式の砲塔を乗せる現在主流のレイアウトを採用した嚆矢というべき存在です。アメリカや旧ソ連などでも生産されたほか、旧日本陸軍にも採用され、1931(昭和6)年に発生した満州事変では、旧日本陸軍の機甲戦力の中核としての役目も果たしています。
欧州の自動車メーカーが「軍需」へ参入、今後も?
ルノーは第二次世界大戦後に国有化された後も、子会社で大型トラックの生産も手がけていたルノー・トラックスを通じて、フランス軍向けのトラックや、四輪駆動軽装甲車「シェルパ」「VAB」の開発と生産を行っていました。
フィンランドの自動車メーカーであるバルメット・オートモーティブが生産を行う「パトリア6×6」(竹内 修撮影)
しかし2001年、同社はボルボグループへ売却され、ボルボグループの下で「Arquus」(アーキュス)と改名。さらに2024年にはベルギーの防衛大手であるジョン・コッカリルグループに売却されており、現在ではルノーと資本関係の無い企業として存続しています。
そのルノー・トラックス売却から約四半世紀に渡って、防衛事業と一線を引いていたルノーが再び防衛事業に本腰を入れる理由は、二つあります。
ルノーは2024年12月にカーシェアリング事業を終了し、2026年1月には電気自動車とそのソフトウェアを手がける子会社アンペア・ホールディングスの解散を発表しています。
また、ルノーはロシアに工場を設けるだけでなく、ロシアの自動車メーカー「アフトワズ」にも出資するなど、同国で積極的に事業を展開していましたが、2022年にロシアがウクライナへ侵攻したことを受けてロシア政府に全事業を売却して撤退し、約23億ユーロという巨額の損失を被っています。
前に述べたL’Usine nouvelleはルノーのUAS事業について、10年間で10億ユーロ規模のビジネスになる可能性があると報じており、期待していた本業の新事業や海外事業で成果を上げられなかったルノーにとって、生産インフラや労働者の転用が容易なUASの生産は、同社復活の起爆剤になり得ます。これが同社がUASの生産に参入する一つ目の理由です。
もう一つの理由はロシアのウクライナ侵攻や、アメリカのトランプ政権による圧力などから、ヨーロッパ各国の防衛費が軒並み増加傾向にあることです。
この点はフランス以外の自動車メーカーでも動きがあります。ドイツのフォルクスワーゲンが防衛事業への参入を検討しているほか、フィンランドの自動車メーカーで、主に欧州メーカーの乗用車のライセンス生産を行っているバルメット・オートモーティブが装輪装甲車「パトリア6×6」の生産を決定するなどしています。後者は陸上自衛隊も採用した装輪装甲車「AMV XP」のメーカーであるパトリアが開発したもので、欧州各国にて採用されています。
二つ目の理由、すなわちヨーロッパ諸国の防衛費増額をあてにして防衛産業の参入するヨーロッパの自動車メーカーは、今後も増加していくものと思われます。
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