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標高1390mにある「廃線の終着駅」が大変化! 道路に負けて「10年で消滅」から58年 盛況のいま

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「赤城山観光」の主役だったケーブルカー

 群馬県の「赤城山」は、上毛三山のひとつとして、古来より信仰を集める山として知られています。山頂にはカルデラ湖の「大沼」や湿原の「覚満淵」など景勝地がありますが、じつはかつて、この山頂に「鉄道」が通じていました。

Large figure1 gallery18赤城登山鉄道の廃線跡(乗りものニュース編集部撮影)

 現在、赤城山へのアクセスのメインルートは、前橋市から富士見町を通り、南西方向から山頂に向かう「群馬県道4号」(赤城南面道路)です。しかしこの県道4号が主流となる以前、赤城山観光の主役を担っていたのが、赤城山中腹の「利平茶屋」と、赤城山外輪山の「鳥居峠」を結んでいた「赤城登山鉄道」でした。

 赤城登山鉄道は、北関東に広くネットワークを持つ東武鉄道グループが、桐生市側からの赤城山へのアクセスのために建設した鉄道です。東武鉄道は「桐生線」の終点である「新大間々駅」を「赤城駅」に改称、ここを拠点とした赤城山の鳥居峠方面へのルートを開拓したのです。

 赤城駅から赤城山中腹の利平茶屋までは路線バスで連絡、その先は山頂に向かっての急勾配が続き、道路が建設できないため、この区間をケーブルカー(鋼索鉄道)で結ぶこととしました。利平茶屋駅と、鳥居峠に設けられた「赤城山頂駅」との間が赤城登山鉄道として開業したのは1957年のことです。

 そして赤城山頂駅からはいったん「赤城平」に下り、そこからリフト、ロープウェイを乗り継いで赤城山の溶岩ドームからなる高峰、「地蔵岳」山頂に至る観光ルートが整備されました。

前橋からの道路の改良でわずか10年で廃止

 しかしこの東武鉄道の思惑は、わずか10年で瓦解します。その直接かつ最大の原因は、1966年の「赤城南面有料道路」、のちの県道4号の開通です。

Large figure2 gallery19群馬県道4号の山頂に近いエリアでは、“峠族”対策のため、うねりを持つ特殊な舗装が行われている

 赤城登山鉄道のケーブルカーを使うルートは、赤城駅、利平茶屋駅で二度の乗り換えが必要だったことに加え、赤城駅と利平茶屋駅を結ぶ道路が狭隘で、バス輸送にも時間を要していました。また東京方面からは、経由する「桐生駅」までの交通がけっして便利とは言えませんでした。それでも、赤城南面有料道路の開通前は、赤城山頂に直接向かう道路はいずれも悪路だったため、一定の観光需要を集めていました。

 しかし赤城南面有料道路は完全舗装の二車線道路として開通、東京方面からの所要時間も短い前橋駅から直通バスも運行されたため、観光客の利用はこちらに大きくシフトします。赤城登山鉄道のケーブルカーは1967年11月に休止、そして翌1968年6月をもって廃止となってしまうのです。

 この赤城登山鉄道を廃止に“追い込んだ”赤城南面有料道路は、モータリゼーションの進展を受け、バスに加え、マイカーの観光客を呼び込み、赤城山の観光振興に大きな役割を果たします。そして1995年には無料開放され、前述のように群馬県道4号として、赤城観光のメインルートの地位を確たるものとしているのです。

 ただ地蔵岳に上がるリフト、ロープウェイは、単独で黒字だったこともあり、ケーブルカー廃止後も営業を続けていました。またロープウェイからの長い斜面は「赤城山第一スキー場」につながり、冬は多くのスキーヤーで賑わった時期もありました。

 しかしこのリフト、ロープウェイも、1998年に営業を休止、その後、廃止となります。

廃止から58年で「駅リニューアル」

 標高1390mの鳥居峠に位置する赤城登山鉄道ケーブルカーの赤城山頂駅は、廃止になっても駅舎は取り壊されることなく、ありし日の面影を残していました。そしてケーブルカーの軌条に沿うコンクリートの側道は、利平茶屋駅までの中腹にある湧き水「赤城山御神水」を汲みに行く人々の往来に使われていました。

Large figure3 gallery20旧赤城山頂駅駅舎の運転関連施設が入った建物は、北関東を一望するテラスへと変貌した

 しかし2026年4月、この赤城山頂駅があらためて注目を集めることになります。それは糸井重里氏が代表を務める「ほぼ日」による旧駅舎のリノベーションです。

 新たに「ほぼの駅 AKAGI」として生まれ変わった旧駅舎には、かつての“廃墟然”とした姿は跡形もありません。そして屋内にはお洒落なカフェが、屋外には桐生市や太田市方向を一望するテラスが設けられ、多くの観光客が思い思いの時間を過ごしています。広い駐車場も週末は満車になり、空き待ちのクルマが出るほどです。

 その一方で、赤城御神水に向かう側道を案内する看板は朽ち果てるままに残され、その文字も、そもそもの内容を知っている人にしか伝わらないメッセージとなっています。また側道につながる階段もところどころで崩落が進んでいることから、以前のように「気軽な気持ちで水を汲みに行く」ということは困難になっています。

 それにしても、かつて鉄道の駅として利用客を集めた赤城山頂駅が、廃止から60年近くを経て、“ライバル”だった道路を使う観光客を多く集めているという現状には、歴史の皮肉を感じざるをえません。すでに緑に覆われつつある軌条だけが、かつてここに鉄道があったことを物語っているようでした。

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