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海を走る巨大トラック!? AAV7より前から活躍する陸上自衛隊の“激レア”水陸両用車両とは

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AAV7よりも以前に存在した! 知られざる陸自の水陸両用車

 陸上自衛隊の水陸両用車と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、2018年に水陸機動団の新編にあわせて配備された水陸両用車AAV7ではないでしょうか。島国である日本は、約3万5000kmにも及ぶ長大な海岸線を有しています。周囲を海に囲まれた日本にとって、海からの侵攻に備えることは陸上防衛を考えるうえでも重要な課題です。そのため、陸上を走行するだけでなく、海上を航行して水際まで進出できる水陸両用車は、着上陸侵攻対処において重要な役割を担います。

Large figure1 gallery4海から上がる94式水際地雷敷設装置。そのまま陸上走行できる展開の速さも売りのひとつ(画像:陸上自衛隊)

 しかし、陸上自衛隊が水陸両用車を運用するようになったのは、AAV7の導入から始まったわけではありません。AAV7に先立ち、陸上自衛隊にはすでに水陸両用能力を備えた特殊な車両が存在していました。それが「94式水際地雷敷設装置」です。

 島国である日本に対して大規模な着上陸侵攻を行う場合、侵攻部隊は海を越えて日本国内へ進出する必要があります。そのため、陸上自衛隊では従来から、敵の着上陸侵攻をいかにして阻止するかを重要な課題としてきました。その際に重要となるのが、海岸線付近の「水際」です。

 敵の上陸用舟艇や水陸両用車などが海岸へ接近する段階で、その進出を妨害し、上陸可能な地点を制限することができれば、侵攻部隊の行動を大きく制約できます。こうした水際障害の構築手段のひとつとして開発されたのが、94式水際地雷敷設装置です。

 94式水際地雷敷設装置は、その名称のとおり、水際に地雷を敷設するための装備です。ただし、一般的な陸上用の地雷とは異なり、海岸線から海へ進出し、海中に水際地雷を敷設するという特殊な運用方法を採用しています。

 94式水際地雷敷設装置は、大きく分けて地雷を敷設するための装置と、それを搭載して移動する水陸両用車によって構成されています。この車両の最大の特徴は、陸上と海上の双方で運用できる点にあります。

 陸上を走行する際には、車体側面に備えられたフロートを折りたたんだ状態で道路を走行します。そして海岸線に到着すると、フロートを展開。水陸両用車として海中へ進入し、そのまま海上を航行することができます。車体上部には航行灯なども装備されており、外観だけを見ても通常の陸上車両とは異なる、水上運用を前提とした設計であることがわかります。

 つまり94式水際地雷敷設装置は、駐屯地から海岸まで自走して進出し、海岸に到着した後は水上航行へ移行することができます。地雷を敷設するための専用装備でありながら、その運搬・敷設作業を一連の動作として行えることが、この装備の大きな特徴です。

海中に地雷を敷設! 「機雷」と呼ばれない理由とは

 94式水際地雷敷設装置によって敷設されるのが「94式水際地雷」です。名称には「地雷」とありますが、その使用場所は陸上ではなく、浅海域です。上陸用舟艇などの接近を阻止するために海中へ敷設されることから、一般的な分類でいえば機雷に近い性格を持つ装備といえます。

Large figure2 gallery5海上を航行する94式水際地雷敷設装置。最大6ノットの速度で航行することができ、多少の荒天にも対応できる(画像:陸上自衛隊)

 それにもかかわらず「機雷」ではなく「水際地雷」と呼ばれるのには、名称上の理由があります。名称を決める際には、海上自衛隊が運用する機雷との混同を避けることや、陸上自衛隊が運用する装備であることなどを考慮し、「水際地雷」という名称が採用されたとされています。

 水際地雷には、海底に直接沈めて設置する沈底式と、錘(おもり)を海底に沈め、そこからケーブルを伸ばした先に本体を保持する係留式の2種類があります。いずれも対象の接近などによって生じる振動や磁気を利用して作動する方式で、感度や作動までの時間を設定することができるとされています。こうした機能によって、単に海中へ地雷をばらまくのではなく、一定の条件下で作動する水際障害として運用することが可能となっています。

 94式水際地雷敷設装置は、東部方面隊を除く各方面隊に編成されている水際障害中隊と、施設教導隊に装備されています。ただし、その配備数は決して多くありません。AAV7のように陸上自衛隊の水陸両用能力を象徴する装備として広く知られている存在ではなく、駐屯地祭などでも頻繁に目にする車両ではないため、陸上自衛隊の装備のなかでは比較的珍しい存在です。

 もし駐屯地祭や一般公開などで見かける機会があれば、単なる特殊車両として見るのではなく、「海岸線に水際障害を構築するための専用車両」という役割にも注目してみると、その存在意義がより分かりやすくなるでしょう。

東日本大震災でも活躍! 水際地雷敷設装置のもうひとつの顔

 もっとも、94式水際地雷敷設装置の特徴は、水際地雷を敷設できることだけではありません。敷設装置を取り外すことで、水陸両用車の荷台を別の用途に使用することもできます。その能力が実際に生かされた例のひとつが、2011年の東日本大震災です。この際には、水陸両用車の荷台にダイバーを乗せ、沿岸海域における行方不明者の捜索に使用されました。また、水害発生時に要救助者を乗せて輸送することを想定した訓練も行われています。

Large figure3 gallery6左右のフロートを折りたたみ、荷台の水際地雷敷設装置を取り去った状態。超大型のトラックと同じくらいのサイズで公道も走れる(画像:陸上自衛隊)

 もちろん、94式水際地雷敷設装置は本来、着上陸侵攻に備えて水際地雷を敷設するための装備です。しかし、水上を移動できるという本来の軍事的能力が、災害派遣というまったく異なる場面でも有効に活用できることは興味深い点です。戦闘車両でありながら、災害時には「水上を走れる輸送車」としても機能する。94式水際地雷敷設装置は、そんな二面性を持った装備でもあります。

 現在、94式水際地雷敷設装置の調達は終了しており、後継となる「新水際地雷敷設車」の開発が進められています。新水際地雷敷設車については、2024年に試験車両が陸上自衛隊へ納入されており、現在、試験が進められています。

 AAV7の導入によって注目されるようになった陸上自衛隊の水陸両用能力ですが、その基盤には、こうしたあまり知られていない装備によって積み重ねられてきた水際作戦のノウハウがあります。94式水際地雷敷設装置は、まさにその一端を担ってきた車両です。

 海岸線から海へ進出し、水際地雷を敷設する。一見すると非常に特殊な車両ですが、「海からの侵攻に備える」という日本の地理的条件を考えれば、その存在には明確な必然性があります。AAV7の陰に隠れがちな94式水際地雷敷設装置。しかし、その姿を知れば、陸上自衛隊が長年にわたって構築してきた水際防衛の一端が見えてくるのではないでしょうか。

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