アメリカ製戦闘機もエンジンに泣いた!?「偉大なる凡作」と「WW2最優秀」の意外な共通点とは
- 乗りものニュース |

第2次世界大戦中に多用されたアメリカ製戦闘機のP-40「ウォーホーク」とP-51「マスタング」。前者は「偉大なる凡作」、後者は「アメリカ最優秀」と評価は真逆ですが、大きな共通性をもっているそうです。
空冷エンジンと液冷エンジンの違い
第2次世界大戦の緒戦から終戦まで使われ続けた「偉大なる凡作」カーチスP-40「ウォーホーク」。そして「大戦中の最優秀戦闘機」と称されるノースアメリカンP-51「マスタング」。メーカーも性能も異なる2種類のアメリカ製戦闘機、一見すると何のつながりもないように思えますが、実はどちらも、同じエンジンによって大幅な性能向上を果たしたという共通点があります。
アメリカ製のP-51D「ムスタング」戦闘機(画像:アメリカ空軍)。
しかも、両者とも「航空機の心臓」ともいえるエンジンを、最初のものから換装、たとえるなら「心臓移植」を受けることで、より高性能な機体へと進化しているのです。どういう経緯で、同じ道をたどることになったのか振り返ってみましょう。
そもそも、創成期の飛行機用エンジンは、飛翔する際に前から流れてくる空気の流れによって冷却するのが合理的と考えられ、エンジンでいちばん熱くなるシリンダー周りにこの空気を吹きつけさせるため、シリンダーの配置は自然と星型になりました。
ところが飛行機が前からの空気を広い面積で受けるということは、それだけ空気抵抗が大きくなり、速度低下を招くという弊害も含んでいます。
そこで、空気抵抗を減らすために考えられたのが、液冷エンジンです。機体の正面に空気抵抗の大きな空冷星型エンジンを置く代わりに、別の空気取入口から空気を取り入れてラジエーター内の液体を冷却。この液体をエンジン周りに循環させて冷やす構造だと、空気の流れをあまり気にしなくて済みます。結果、機首を絞り込み細くして空気抵抗を少なくできるため、液冷エンジンなら、高速性に優れた機首形状にすることが可能です。
イギリス製に劣ったアメリカ唯一の液冷エンジン
飛行機用液冷エンジンの開発は1920年代頃から活発に行われるようになりました。当初はアメリカよりもイギリスやドイツの方が先を行っており、これらの国ではさまざまな液冷エンジンが造られています。特にイギリスのロールスロイス社が開発した「マーリン」エンジンは、有名なスーパーマリン「スピットファイア」戦闘機やデ・ハビランド「モスキート」攻撃機、アヴロ「ランカスター」爆撃機などに搭載された傑作液冷エンジンでした。
P-51やP-40が搭載したパッカード社製の「マーリン」エンジン(画像:パブリック・ドメイン)。
一方、アメリカもまた飛行機用液冷エンジンの研究を進めており、戦前にはアリソンV-1710エンジンを完成させていました。そのようななか、カーチスP-40戦闘機は、このエンジンを搭載しました。また、アメリカのノースアメリカン社で造られたP-51戦闘機にも、当初はこのアリソンV-1710が搭載されています。
第2次世界大戦の前後、アリソンV-1710はアメリカ唯一の実用液冷エンジンといってもよい存在でした。しかしアリソン社は規模が小さかったので、エンジン出力を向上させる過給機の開発が遅れており、アリソンV-1710には1段1速の過給機しか付いていませんでした。
これが原因で、P-40もP-51も低高度での性能は優れていたのですが、中高度以上では性能が急激に低下するという弱点がありました。そのため、特にP-40と初期のP-51の供給を受けたイギリスでは、両機を主に低高度域で戦う戦闘爆撃機として運用したほどです。
一方、イギリスは自国で拡大するマーリンの需要に対応すべく、アメリカで「マーリン」を生産し、それを供給してもらうという策を立て、実行します。このプランで白羽の矢が立ったのが、自動車メーカーのパッカード社でした。
「やられメカ」の汚名を返上するまでに性能アップ!
乗用車は、第2次世界大戦中は生産が禁じられたため、その生産ラインが空いていたからです。こうして同社は1942年2月から「マーリン」の量産を始めますが、このエンジンには、2段2速過給機が備えられており、高高度においても性能が低下しません。しかも、パッカード社での量産も軌道に乗ったことで、アメリカ製戦闘機に同エンジンを回す余裕も出るようになりました。
P-40「ウォーホーク」戦闘機(画像:アメリカ空軍)。
そこでP-40とP-51のアリソンV-1710をパッカード社製「マーリン」に換装したところ、両機ともこれまで以上の高性能を発揮するようになったのです。
その結果、P-51は冒頭に記したごとく「アメリカ最優秀戦闘機」と称される傑作機にまで昇華しました。また、太平洋戦争開戦時には零戦(零式艦上戦闘機)や一式戦闘機「隼」の餌食だったP-40も、元来頑丈な機体であることに加えて、エンジンを「マーリン」へ換装したことで大幅な性能向上を果たし、それまでとは打って変わって日本製戦闘機に負けない優秀機へと変貌を遂げたのです。
なお、これにはアメリカ軍の戦闘機の運用法が、それまでの戦訓によって格闘戦能力に優れた日本機のペースに巻き込まれず一撃離脱戦法に徹するようになったこと、加えて日本側の熟練パイロットが戦争の長期化によって失われたことで形勢が変わりつつあったという情勢の変化も影響しているのは言うまでもありません。
P-40戦闘機というと、大戦前半における「やられメカ」のイメージがいまだに根強いので、このように大戦後半に劇的な性能向上を果たし、むしろ日本軍機を苦しめたというのは意外なのではないでしょうか。
また、こうしたP-40やP-51の性能向上を鑑みると、飛行機にとって、エンジンがなによりも重要というのもよくわかります。
なお、アリソンV-1710の名誉のために付け加えておくと、アメリカ生まれの同エンジンにも、のちに2段2速過給機が装備され、性能が格段に向上しています。
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