ポストに投函するだけ　簡単がん検査「N-NOSE」とは　早期のがん発見のケースも

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オトナンサー
2025年12月31日8時15分

　一般的にがん検査というと、「人間ドック（総合健診）」、胃カメラやマンモグラフィなどの特定がん種に特化した検査、全身MRIなど多岐にわたり、「痛い」「面倒」「怖い」といったイメージがあると思います。近年、“自宅で完結”できる尿検査や唾液検査などが増えてきました。そこで、自宅で採尿し、郵便ポストに投函（とうかん）するだけでがん検査が受けられる「N-NOSE（エヌ・ノーズ）」を展開するHIROTSUバイオサイエンス（東京都千代田区）の代表取締役・広津崇亮さんに、N-NOSEを始めたきっかけや、どんな人に向いているのかなどについて聞きました。

早期のがんが見つかったケースが複数報告

Q.改めて「N-NOSE」とは、どんながん検査なのか、教えてください。

広津さん「『N-NOSE』は、線虫という微小な生物の『匂いを嗅ぎ分ける力』を応用した、世界で初めての尿によるがんの一次スクリーニング検査です。採尿してポストに投函するだけで受けられる、非常にシンプルで負担の少ない検査です。
私がこの事業を始めるに至った背景には、長年続けていた線虫の基礎研究があります。線虫は小さな生物ですが、嗅覚が非常に鋭く、匂いを正確に識別する力を持っています。その研究を続けていたある時、『がん探知犬が、患者の呼気や尿の匂いでがんを嗅ぎ分ける』というニュースを目にしました。
その瞬間、私は『これは線虫でも応用できるのではないか』と直感したのです。匂いに特化した生物である線虫なら、むしろもっと正確に反応するかもしれない。そこから実験を重ね、実際に線虫が『がんの匂いに強く引き寄せられる』という現象を発見しました。
一方で、日本のがん検診の受診率は長年50％に届かず、『痛い』『時間がない』『面倒だ』という理由で多くの人が検査を後回しにしてしまいます。がんは早期に見つけるほど救える命が増えるのに、社会構造としてそれが実現できていない。
だからこそ私は、『受けられる人だけが受ける検査』ではなく、誰もが『受けたくなる検査』が必要だと考えました。線虫の能力とがん検査犬の発想が重なった瞬間、『これなら、がんの入口検査を新しい常識にできる』と確信し、N-NOSEの開発に踏み出しました」

Q.では、「N-NOSE」がどんな人に向いているのか、教えてください。
広津さん「『N-NOSE』は、23種類のがんに共通する『がん特有』の匂いを線虫が察知するというユニークな仕組みを持っています。臓器ごとに個別の検査を受ける必要がなく、1回で幅広いがんリスクをまとめて評価できる点が大きな特徴で、どなたにも受けていただきたい検査です。
特に向いているのは、
（1）忙しくて病院に行く時間が取れない方
（2）「痛い検査は苦手」という理由で検診を先延ばしにしている方
（3）家族歴などからリスクに敏感な方
（4）毎年、自分の健康状態を手軽にチェックしたい方

です。私は『N-NOSE』が、がんの早期発見につながる入口だと考えています。まずは、自分のリスクが高いのか低いのかを知り、必要な人が次の精密検査に進む。その導線をつくることが、この検査の社会的役割だと思っています」

がんが「怖くない世界の創造」

　広津さんによると、「N-NOSE」では、これまでに85万人以上（2025年時点）の人が利用。利用後に医療機関を受診し、早期のがんが見つかったとする報告も複数寄せられており、「私たちにとって何よりの成果です」と語っていました。

　さらに、企業でも導入が進んでいるといい、広津さんは、「「福利厚生などで導入する企業が2500社にのぼり、現在も増え続けています。2025年8月にポスト投函が始まり、全国の方が手軽に受けられる環境が整ってきました。『自分のがんリスクをまず知る習慣』が地域に生まれ、実際にがん検診の受診行動につながる事例も増えています」といいます。

　続けて、「N-NOSEが普及することで、がん検診への導線が広がり、受診のきっかけをつくり、結果として、救える命が増える」と語気を強めながら、「私は、この連鎖を社会に大きく広げていくことが、当社の使命だと考えています。『N-NOSE』を『年に一度の新しい健康習慣』として根付かせ、がんで苦しむ人を一人でも減らし、『がんの怖くない世界の創造』していきたいと思っています」と話していました。

オトナンサー編集部