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「右折なのになぜ左へ?」バスの“不可解な動き”に隠されたスゴ技とは「あおりハンドル」とは決定的に違う「オフセット」の正体

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乗用車とは別次元! バスの巨大な「内輪差」

 街中で信号待ちをしている路線バスの後ろについたとき、右折レーンにいるはずのバスが、なぜか左側の白線ギリギリに寄って停まっている光景を見たことはないでしょうか。

Large figure1 gallery6交差点を曲がるバスの運転技術とは?(画像:写真AC)

「これから右に曲がるのに、なぜ左に寄るのか」と不思議に思うかもしれません。あるいは、交差点でハンドルを逆に振ってから曲がる、いわゆる「あおりハンドル」の一種ではないかと疑ってしまう人もいるでしょう。

 しかし、これは「あおりハンドル」とは似て非なる、プロの運転士による高等テクニックです。

 まず、危険な運転とされる「あおりハンドル」は、交差点に進入してから、ハンドルを急に逆方向(左)に振ってから曲がる操作を指します。これは予測不能な動きであり、左後方から来るバイクなどを巻き込む事故の原因となるため、厳しく禁止されています。

 対して、バスが行っているのは「オフセット」と呼ばれる技術です。これは、交差点の手前からあらかじめ車線内の左側に寄せておき、その位置をキープしたまま交差点へ入るものです。

 急なハンドル操作はなく、最初から「大回りするための準備」を整えている点が決定的に異なります。

 なぜ、このような準備が必要なのでしょうか。最大の理由は、バスの車体の長さにあります。

 前輪と後輪の間隔である「ホイールベース」を比べると、一般的な乗用車が約2.5mから3.0mであるのに対し、大型路線バスは約5.0mから6.0mと、じつに約2倍もの長さがあります。

 ホイールベースが長ければ長いほど、前輪と後輪が通る軌道のズレ、すなわち「内輪差」も劇的に大きくなります。

 もし乗用車と同じ感覚でハンドルを切れば、後輪は1m以上も内側を通ることになります。その結果、右折時であれば中央分離帯に乗り上げたり、信号待ちをしている対向車に接触したりしてしまうのです。

 あらかじめ左側に「オフセット」して、大回りのラインを取ることは、この巨大な内輪差をカバーするために不可欠な操作と言えるでしょう。

お尻が1mも振れる!?「リアオーバーハング」の恐怖

 バスが左に寄る理由は、内輪差だけではありません。もうひとつ、バス特有の構造である「リアオーバーハング」の問題があります。

Large figure2 gallery7内輪差のほかに「リアオーバーハング」にも注意が必要(画像:写真AC)

 リアオーバーハングとは、後輪から車体の一番後ろまでの部分を指します。バスはこの部分が非常に長いのが特徴です。

 クルマがハンドルを切って曲がるとき、テコの原理のように、車体のお尻は曲がる方向とは逆側に振られます。右折時であれば、お尻は左側へと振られることになります。

 全長12m級の大型バスの場合、このお尻の振り出し幅は、最大で約1mにも達するとされています。

 もし、バスが車線の中央寄りや右側から、急ハンドルで右折しようとしたらどうなるでしょうか。この1mもの「お尻の振り出し」によって、左側の車線にいるクルマや、路肩のガードレールをなぎ倒してしまうリスクがあるのです。

 そこで「オフセット」の出番です。あらかじめ左に寄せておき、交差点の奥深くまで進んでから緩やかなカーブを描いて右折することで、この急激なお尻の振り出しを抑え、動きをマイルドにする効果があるのです。

 つまり、交差点で見かける「左寄りのバス」は、単に運転手が下手なわけでも、無意味に大回りをしているわけでもありません。

 巨大な内輪差で内側を引っかけないようにしつつ、同時にお尻の振り出しで周囲を巻き込まないように計算された、安全確保のためのプロの「防衛運転」だといえるでしょう。

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