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電車の間隔はもっと詰められる? 日本の限界を突破する「驚異の90秒間隔」を支える海外の文化と仕組み

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大都市圏における過密ダイヤの限界

 大都市圏の電車は、地方都市では想像できないほど高頻度で運転されています。朝ラッシュ時間帯1時間の運行本数は、例えば東京圏は東京メトロ丸ノ内線と千代田線の29本が最多。JR東日本なら中央線快速の28本、大阪圏では大阪メトロ御堂筋線の27本が最多です。

Large figure1 gallery3JR東京駅に到着する中央線特別快速(画像:Zvesta / PIXTA)

 複々線の路線ではさらに多く、小田急小田原線は37本、東武スカイツリーラインは36本、名古屋鉄道本線が34本、京阪本線が33本です。

 複線では2022年3月まで丸ノ内線B線(池袋方面)が31本、最短1分50秒間隔で運行していたのが最多ですが、多くの路線では28~30本が限度となっています。それ以上、無理に詰め込んでもダイヤ通り走れなくなり、かえって輸送力が減ってしまうからです。

 では電車の車間距離はどのように決まるのでしょうか。鉄道は高速域では非常ブレーキをかけても停止に数百メートルを要します。先行列車を目視してからブレーキをかけても止まりきれず衝突してしまうので、鉄道は基本的に前後の列車と一定の間隔を保つことで安全を確保しています。

 安全を守る要が信号保安装置です。鉄道信号の多くは線路を電気的に区切り、列車の在線を検知する軌道回路を用いています。先行列車の直後の区間は赤信号となり、そこから車間距離が離れるごとに速度制限が緩和されていき、十分間隔があれば青信号が示される仕組みです。これに自動ブレーキを組み合わせたのがATS(自動列車停止装置)・ATC(自動列車制御装置)です。

 列車の間隔が最短になるのは駅です。駅進入時に減速し、駅に30~60秒停車、加速して駅を抜けていくまで、後続列車はどんどん近付いてきます。そのため、朝ラッシュ時に駆け込み乗車などがあって発車が遅れると、後続列車がホームに入って来られず、駅手前の赤信号で停止することがしばしばあります。

 ホームを2線化して交互発着を行ったり、駅前後の軌道回路を増設したりすれば間隔を詰められますが、どこか一つの駅でも引っ掛かれば遅れが後続列車に波及し、ダイヤが乱れます。そのため長い10両編成以上の路線では1時間あたり27~28本を超えると、かえって輸送力が低下するリスクが高まります。

 逆に言えば、列車長が短く、信号の制約がなければ先行列車の真後ろまで接近できます。路面電車がクルマのように続行運転できるのは、単行で速度が遅く、目視で安全確認を行っているからです。

 では鉄道がもっと間隔を詰めることはできないのでしょうか。実は日本以上の高頻度運転を行っている鉄道事業者が世界にはあります。それが、ピーク時に90秒間隔で運行しているロシアのモスクワ地下鉄です。

驚異の「90秒間隔」はこうして実現

 モスクワ地下鉄を実地調査したレポート(「モスクワ地下鉄の高頻度運行管理―我が国首都圏鉄道における列車遅延対策への示唆―」)が、『運輸政策研究』2011年夏号に掲載されています。

 モスクワ地下鉄の90秒間隔ダイヤは、標準駅停車時間を日本より短い20秒(ターミナル駅では25~30秒)に設定しているといいます。利用者が少ないわけではありません。モスクワ地下鉄2号線・6号線・7号線・9号線は1日の輸送人員が100万人を超えており、日本以上に混雑する駅も少なくありません。

 ところがレポートによれば、発車ベルの鳴動や「尻押し」要員の配置など停車時間を管理する特別な対策は行っていないというのです。執筆者である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)の仮屋崎圭司氏と政策研究大学院の日比野直彦教授は現地視察の感想を、出発時刻になると運転士が機械的にドアを閉め、乗客も無理に乗るのではなく、次の列車を待つ習慣があると述べています。

 しかし、それだけでは90秒間隔ダイヤは不可能です。モスクワ地下鉄は多くが8両編成(全長160m)、最高速度80km/h、ATCであり、最小閉塞区間は日本の地下鉄と同等の75m、条件に大きな違いはありません。ただ加速度、減速度は日本を上回っており、減速、停車、加速のサイクルが早いことが分かります。

 もう一つの違いは、ダイヤの時間余裕量です。運転基準時分が70秒の場合、日本であれば5秒程度の余裕を持たせますが、モスクワでは10~15秒の余裕を設定しています。また、平均駅間距離が1.8kmと長いこともあり、運行間隔がより短いにもかかわらず、回復運転の余地が大きいのです。

 そして、最大の違いはモスクワ地下鉄には利用者向けの時刻表が存在しない、という点です。運転士は遅延時、発車時刻より運転間隔を優先することになっており、そのために駅ホーム先端には現在時刻と先行列車が出発してからの経過時間を表示するデジタル時計が設置されています。

 さらにモスクワ地下鉄は地下30~40m、最大84mと深い駅が多く、そのような駅では改札とホームの移動はエスカレーターしかありません。その結果、ホームに送り込まれる旅客数が一定なので、円滑な乗降が可能という興味深い考察も記されています。

 以上のように運転間隔をさらに短縮することは物理的に可能ですが、運行形態は設備や国民性といった条件を背景に成立するものであり、短ければ偉いというわけではありません。ただ、異なる可能性があることを知ることは、日本の鉄道をさらに発展させるための足掛かりになるはずです。

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