信号機から「帽子のつば」が消えている? なぜ新型はツルッと薄くなったのか
- 乗りものニュース |

信号の「帽子のつば」って?
街なかで、スマートフォンのように薄い信号機を見かける機会が増えましたが、一方で従来型の車両用信号灯器は、灯火の上に大きな“ひさし”を備えた姿が一般的です。
LED信号機の仕組みとは?(画像:写真AC)
この帽子のつばのような部品は「フード」または「庇(ひさし)」と呼ばれ、電球式を中心とする多くの従来型灯器に取り付けられてきました。
一般的なフードの主な役割は、太陽光が灯火面へ直接当たるのを抑え、表示を見やすくすることです。一方、鋭角に交わる交差点などで別方向から灯火を誤認するおそれがある場合は、通常より長いフードやルーバーで、灯火が見える方向を限定する対策もとられます。
では、なぜ日差しを抑える必要があったのでしょうか。カギを握るのが「疑似点灯」と呼ばれる現象です。
従来の電球式信号灯器は、電球の光を前方へ送る反射鏡と、色を表示するレンズを組み合わせた構造です。西日などの強い太陽光が灯火面に差し込むと、内部で反射した光によって、消灯中の灯火まで点灯しているように見えることがあります。警察庁が「疑似点灯現象」と呼ぶものです。
どの色が点いているのか分かりにくくなれば、ドライバーは判断に迷います。そこで、灯火面に直射日光が当たるのを抑えるため、深いフードが用いられてきました。
この課題を解消する切り札となったのが、LED式の信号灯器です。警察庁によると、車両用のLED式信号灯器は1994(平成6)年に愛知県と徳島県で初めて整備されました。
LED式の信号灯器には大きなひさしがありません。理由は、発光の仕組みが電球式と異なるからです。LED式は多数のLEDで灯火の色と形を表示するため、電球式のように一つの電球と大きな反射鏡で光を前方へ送る必要がありません。
警察庁は、電球式で西日などが当たった際に点灯しているように見える疑似点灯現象が、LED式では防止されると説明しています。このため、従来のように深いフードで直射日光を遮る必要性が小さくなりました。
LEDの小型・軽量という特徴を生かし、灯器本体を薄く、軽くする設計も可能になりました。その代表例が、コイト電工の「フラット型車両用交通信号灯器」です。同社ウェブサイトによると、灯器の厚さは6cmで、従来品に比べて厚みを約60%、重量を約40%減らしています。
この灯器は、傾斜させて設置するとともに、表示面に反射を抑える「グレアレス加工」を施しています。これにより、日中や西日が当たる状況でも従来と同等以上の見え方を確保しながら、フードレス化を実現したといいます。
雪や風への対応も “消えた帽子”が語るもの
フードには、上面に雪が積もったり、雪質によって表示面へ着雪したりする課題もありました。また、コイト電工によると、突出したフードは強風時に風を受ける面積を増やし、信号灯器本体やフードの破損につながる場合がありました。
同社の公式サイトによると、フラット型灯器は、外観の凹凸をなくし、フードレス・薄型・軽量とすることで、強風や積雪、着雪などの影響を軽減しています。薄型・軽量化により、輸送や保管時の取り扱いが容易になり、施工もしやすくなったといいます。
さらに、灯器の上部に雪が積もりにくい形状としたほか、レンズ外面に微細な凹凸を形成し、雪が付着しにくく、落ちやすくする工夫も施されています。
ただし、LED式は電球式より発熱が少ないため、気象条件によっては灯火面に付いた雪が解けにくいという別の課題もあります。フラット型はレンズ表面の微細な凹凸や傾斜設置によって着雪を軽減していますが、あらゆる気象条件で着雪を完全に防げるわけではありません。
LED化も着実に進んでいます。警察庁によると、2025年3月末現在、全国の信号灯器に占めるLED式の割合は約77.9%です。
ただし、LED式だから必ずフードがないわけではなく、設置条件に応じてフードや遮光部材を備えるLED灯器もあります。フードレス化は、疑似点灯対策だけでなく、薄型・軽量化、積雪や風への対策など、複数の理由が重なって進んだものです。
かつて疑似点灯や直射日光の影響を抑えるために重要だった“帽子”は、光源や本体設計の進歩によって、必要な場所にだけ残る部品へと役割を変えつつあるのです。
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