仕事のトラブルで「焦る人」と「平気な人」の決定的な違いとは 心理カウンセラーが説く、脱・パニックの“脳の使い方”
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トラブルがあっても落ち着いていられる人の特徴とは?(画像はイメージ)
仕事で何らかのトラブルが起きたとき、「あの人は落ち着いているのに、自分はつい焦ってしまう」と感じた経験はありませんか。心理カウンセラーのうるかすさんによると「焦り」は性格によるものではなく、脳のメカニズムや心理的な働きなど複数の要因が絡みあって起こるといいます。そこで、人が焦る原因や対処法、トラブル時に焦る人、落ち着いていられる人の違いなどについて、うるかすさんに聞きました。
理想と現実の差が大きいほど焦りが強くなる
Q.まず、トラブルが発生したときに人が焦る心理的なメカニズムについて、詳しく教えてください。
うるかすさん「そもそも、トラブル時に人が焦ってしまうのは、脳が危険を察知して、戦うか逃げるかを瞬時に判断する『生存本能』を働かせるからだといわれています。
具体的には、交感神経が優位になり、ノルアドレナリンやアドレナリンが放出されて心拍数の上昇、動悸(どうき)、呼吸の乱れが生じ、体が『戦闘態勢』になります。この時、脳の中では、論理的な思考をつかさどる『前頭前野』の働きが一時的に抑えられ、冷静な判断が困難になります。この脳のパニック状態が『焦り』の正体というわけです。
心理的な原因ですが、焦りを増幅させる2つの要因があります。まず、急なトラブルは、自分がコントロールできていた『自分軸の時間』を、対応が必要な『他人軸の時間』に変えてしまいます。『こうあるべき』という理想と、想定外の現実との間に生じたギャップがストレスとなり、その差が大きいほど焦りは強くなります。
次に、トラブルによって『将来が読めない』という不確実な状況に置かれると、過去の経験や失敗に対する不安が呼び起され、『予測不可能な事態に対する恐怖』が焦りを大きくします」
トラブル発生時に焦る人と落ち着いていられる人の違いとは?
Q.では、トラブルが発生したときに落ち着いていられる人、焦ってしまう人にはどのような違いがあるのでしょうか。
うるかすさん「『焦り』は、脳のメカニズムや心理的な要因が絡み合って起こりますが、『生存本能のスイッチ』の入りやすさは、普段の物の見方や、考え方により異なります。
まず、焦ってしまう人の特徴として挙げられるのが『完璧主義』です。『失敗できない』という過度なプレッシャーや、『早く解決しなければならない』という強い責任感は、時に状況に対する許容範囲を狭めてしまいます。これでは、理想と現実のギャップは広がるばかり。責任感の強さが皮肉にも生存本能を刺激して、焦りを感じやすくしてしまいます。
一方で、トラブル時にも落ち着いていられる人は、物事を多角的に考えられる柔軟性を持っています。計画通りにいかなくても『起きてしまったことは仕方ない』と事実を受け止め、気持ちを切り替えられるのです。精神的な余裕があるからこそ、脳はパニックにならず、他の方法を見つけだすことを可能にしています。次に、個人差が生まれる具体的な心理的要因を整理します」
■焦りやすい人
・承認欲求が強い
「人から認められたい」思いが強まると、行動の基準が他人軸になります。「うまくやらないといけない」と自分を追い詰めてしまい、精神的な余裕がなくなります
・自己評価の低さ
自分に対する期待だけが高く、わずかなミスも「取り返せない」と捉えてしまい、強い焦りが生じます
・「心の安全基地」の欠如
幼少期に養育者との間で育まれる「自分は守られている」という感覚が弱いと、自分を取り巻く環境を必要以上に「リスクのあるもの」と捉えてしまいます。実体のない「攻撃する存在」に対する恐怖心が、パニックを生じさせます。
・本当に向き合うべき課題の解決を先延ばしにする
不安が強いほど、人は問題の核心に触れることを避けようとします。そのため、優先度の低い作業や目に見える小さな対応に意識を向け、忙しく動くことで安心感を得ようとします。しかし本質的な課題は残ったままであるため、状況の不確実さが保たれ続け、結果として焦りが慢性的に生じやすくなります。
■落ち着いていられる(焦らない)人
・長期的な視点で状況を把握する
目先の成果に一喜一憂せず、「長い目で見れば解決できる」と考えることができます。トラブルが発生しても反射的に行動することなく、一歩引いて状況を俯瞰(ふかん)する習慣を身に付けています。
・問題を小分けにする
課題を実行可能な「スモールステップ」に分解して、やるべきことに集中できるようにします。脳へのプレッシャーが軽くなり、焦りも生じにくくなります
・感情をコントロールする
怒りや悲しみなどの感情に振り回されず、自分をなだめる方法を知っています。心が大きく揺れ動くことはなく、トラブル時にも建設的な行動を優先できます。
Q.もしささいなトラブルでもすぐに焦ってしまう場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。
うるかすさん「先ほどの『生存本能』のデメリットでもあるのですが、 現代社会では、職場の人間関係やメールの返信といった『精神的ストレス』に対しても過剰に働いてしまいます。脳の進化が社会の変化に追いつけず、時に『物理的な死』に直結しないトラブルに対しても、『生存本能』のスイッチが入ってしまうのです。
そこで、具体的な対処法ですが、焦りを感じた時ほど意識的に『深呼吸』をして、『一呼吸置く』ことが、脳の落ち着きを取り戻すカギになります。焦りを感じている時は、自律神経の交感神経が優位になり、緊張状態から呼吸が浅くなりがちです。深呼吸をして副交感神経を活発にさせることで、感情の高ぶりを抑えることができます。『4秒間かけて吸って、4秒間止めて、6秒かけて吐く』呼吸の仕方がお勧めです。
一旦、その場を離れるという方法もあります。物理的にも心理的にも距離を置いて、冷静な思考を取り戻しましょう。
心理の専門家に支援を求めるのもよいですね。カウンセリングやセラピーでは、自分では気づきにくい『思考の癖』を見つけ出し、より建設的で肯定的な視点に書き換える手法を扱っています。焦りを根本的に解決するために、有効な対処法の一つです。
ただ、原因が分からない焦りが続く場合や、焦りやすさから慢性的に不安を感じる場合、その不安から食事や睡眠など日常生活にも支障が生じている場合には、医療機関の受診も検討してみてください」
* * *
「焦り」は、脳に備わった「生存本能」によるものであり、簡単にスイッチが入ってしまうこともあるようです。どんなときでも動じない人はいません。「焦りやすさ」をすぐに改善できなくても、適切な対処法を取ることで、自分を持ち直しましょう。
オトナンサー編集部
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