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驚異の加速「蒸気カタパルト」30tの飛行機が2秒で空へ! ただ米空母の象徴“白煙モクモク”消えるかも

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  • 乗りものニュース
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空母から艦載機を飛ばす際に使用される「カタパルト」。現在主流なのは蒸気式ですが、すでに最新の電磁式が登場しています。そうなると、映画『トップガン』などで見られた名物シーンも過去のものになるかもしれません。

蒸気の力は偉大 30tの重さの鉄塊もひとっ飛び

 2024年現在、空母を保有するのは世界に10か国弱あります。しかし、空母の発着艦システムのひとつである「カタパルト」を運用しているのはアメリカとフランスのみで、さらに開発製造まで行っているのはアメリカ1国のみです。

 空母が搭載する艦載機には、固定翼機(飛行機)と回転翼機(ヘリコプター)がありますが、後者は垂直発着が可能なためカタパルトは必要ありません。また「ハリアーII」やF-35B「ライトニングII」などといったエンジンノズルの角度を変えられる固定翼機も、ヘリコプター同様に垂直発着が可能なため使うことはありません。
 
 カタパルトは、一定距離を滑走しないと飛び上がるための揚力が生まれない固定翼機をごく短距離で進空させるために用いるもので、現在主流のものは蒸気圧を利用して駆動する「蒸気カタパルト」になります。

Large 241108 catapult 012003年1月、空母「コンステレーション」のカタパルトにセットされたF-14D戦闘機(画像:アメリカ海軍)。

 蒸気カタパルトは、重さ30t以上の艦載機をわずか2秒で約300km/hまで加速させることができますが、このノウハウがないロシアや中国、インドなどの正規空母は、「スキージャンプ台」と呼ばれる上向きの傾斜甲板を用いて艦載機を発艦させています。もちろん、より大重量の機体を発艦させることができるのはカタパルト射出の方です。

 アメリカ海軍の原子力空母が搭載する蒸気カタパルトは全長約94mで、空母1隻につき4基装備しています。

 カタパルトを構成するおもなものは、甲板下に埋め込まれた2本の金属製シリンダーと、その中を行き来するピストンで、このふたつのピストンをつなぐアーム部分が、艦載機前脚の一部を引っかけるフックになります。艦載機の射出時は、このピストンが30気圧から70気圧という蒸気の力で押され、一気に加速するという仕組みです。

 なお、カタパルトの射出力は飛行機の重量によってその都度調整されており、これは甲板下にあるカタパルト制御室で行われています。

蒸気式に行きつくまでの試行錯誤とは

 カタパルトに蒸気圧を用いるようになったのは第2次世界大戦後で、それまでには様々なタイプが開発されました。

 艦艇から飛行機を発艦させるカタパルトは1930(昭和5)年前後に、世界各国において相次いで開発されました。初期のものはバネの反発力を利用した「スプリング式」などがありましたが、いずれも実用性が低かったといいます。その後、爆発力を利用した「火薬式」や、圧縮空気で射出する「空気圧式」などが登場し、これらが主流になっていきます。

 なお、当時のカタパルトは飛行甲板のない戦艦や巡洋艦向けであり、水上機用でした。すでに空母は実用化されていましたが、この頃の艦載機は軽く、短い滑走距離でも空母から発艦でき、カタパルトなどの加速装置は不要でした。

Large 241108 catapult 02F/A-18C「ホーネット」戦闘攻撃機をカタパルトにセットする甲板作業員(画像:アメリカ海軍)。

 艦載機用として、空母で初めてカタパルトを装備したのは、1938(昭和13)年に就役したイギリスの「アークロイヤル」です。この時、実用化されたのは油圧式で、第2次世界大戦が始まると艦載機の大型化、大重量化にともない搭載する艦が増えていきます。そしてアメリカにも技術供与され、米英空母のほとんどに装備されるようになりました。

 一方、日本は最後まで空母の艦載機用カタパルトは実用化できず、用いられたのは水上機用として、戦艦や巡洋艦に装備した火薬式や、潜水艦に用いた空気圧式だけでした。

 第2次世界大戦後、艦載機が大型化すると、油圧カタパルトでは射出力が不足するようになりました。また再射出までの圧力充填に時間がかかることから、イギリスは新たなカタパルトの開発に着手します。

 こうして生まれたのが蒸気式です。この方式は油圧式よりも射出力が優れており、イギリスからアメリカに技術が提供され、大型空母の必需品となりました。特に原子力空母の場合、搭載する原子炉で無尽蔵に蒸気を作り出すことができることから、これを利用した強力なものが次々に開発され、大型化し続ける艦載機に対応していきました。

電磁カタパルトは優秀なんだけど……

 ただし蒸気式は、製造や整備に技術やノウハウが必要で、世界でもイギリスとアメリカしか開発できませんでした。ソ連(当時)は最後まで実用化できず、フランスは自国空母用の蒸気カタパルトをイギリスやアメリカから輸入しています。

 また発明元のイギリスも、空母でのカタパルト運用を止め、艦載機をVTOL(垂直離着陸)機のみにしたため、いまでは蒸気カタパルトを独自に開発し、運用までしているのはアメリカ1国のみです。

 なお、アメリカは現在、次世代のカタパルトとして電磁式を開発し、最新の原子力空母「ジェラルド・R・フォード」に採用しています。このタイプは蒸気式よりもさらに細かく射出力の調整ができるほか、圧力充填が必要なく、整備性も良好で、なおかつ装置全体の小型軽量化も図れるなど、様々な点で蒸気式よりも優れています。

 一方、中国やロシアも電磁カタパルトの研究開発を行っており、前者については最新空母「福建」に搭載したと言われています。

Large 241108 catapult 03在日アメリカ海軍横須賀基地で整備中の空母「キティホーク」のカタパルト(当時)。シリンダーが2本並列で並んでいるのがわかる(画像:アメリカ海軍)。

 ちなみに、アメリカ空母から戦闘機などがカタパルト発進する際、甲板上に白い煙が漂っていることがありますが、これは蒸気カタパルトから漏れた水蒸気です。温度が下がり白い湯気になったもののため、電磁カタパルトでは発生しません。

 この白い煙は、アメリカ空母での艦載機運用を象徴するもので、映画『トップガン』をはじめとして、アメリカ空母が登場する作品では様々な形で描かれています。しかし、前述したように電磁カタパルトでは白煙が漂うことはまずないため、近い将来、昔をしのぶ懐かしいものになっているかもしれないでしょう。

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