前兆なく腹痛、下痢の症状続く…うつ招くことも? 専門医が教える「過敏性腸症候群」4つの改善法
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緊張したときに急な腹痛や下痢などに襲われたことはありませんか。こうした状態が続く場合、「過敏性腸症候群」と呼ばれる病気の可能性があります。そもそも、過敏性腸症候群とはどのような病気なのでしょうか。改善方法や予防方法などについて、筑波胃腸病院(茨城県つくば市)理事長で消化器外科専門医の鈴木隆二さんに聞きました。
慢性的な下痢と便秘が同時に起きることも
Q.そもそも、過敏性腸症候群とはどのような病気なのでしょうか。
鈴木さん「過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome)は、腸に構造的な異常がないにもかかわらず、腹痛のほか、膨満感やガスの増加といったおなかの不快感、便通異常(下痢型、便秘型、またはその混合型)などが慢性的に起きる病気です。おなかの痛みは排便後に改善することが多いです。
簡単に言うと、『腸そのものには問題がないのに、機能が過剰に反応してしまう状態』です。例えば、腸が普通に動いているだけで痛みを感じたり、緊張すると腸が急に動き過ぎてしまったりすることがあります。主に次のようなことが原因で発症します」
【主な原因】
(1)ストレスや心理的要因
脳と腸は「脳腸相関」という密接なつながりがあり、ストレスが腸の働きを乱すことがあります。
(2)腸の過敏性
腸が通常よりも敏感になっており、ガスや腸内の刺激に過剰に反応することがあります。
(3)腸内細菌のバランス異常
腸内フローラの乱れが過敏性腸症候群の発症に関与している可能性があります。
(4)食事の影響
脂っこいものや刺激物など、特定の食品が症状を悪化させることがあります。
Q.過敏性腸症候群と通常の下痢や腹痛は何が違うのでしょうか。過敏性腸症候群かどうかを判断する目安、受診の目安も含めて教えてください。
鈴木さん「通常の下痢や腹痛は、一時的な感染や食事の影響で起きることが多く、原因が明確で症状も数日で改善します。一方、過敏性腸症候群は原因不明で『慢性的に繰り返す』のが特徴です。
病態での違いですが、通常の下痢や腹痛が『暴飲暴食や食中毒で起こる一時的なトラブル』とすれば、過敏性腸症候群は『腸の“警報システム”がいつも鳴り続ける状態』といえます。
先述の内容と重なる部分もありますが、次の症状が3カ月以上続いている場合は、過敏性腸症候群の疑いがあります」
■過敏性腸症候群の疑いがある主な症状
(1)腹痛が排便によって改善されることがある。
(2)腹痛が便通の頻度や便の形状の変化と関連している。
(3)腸に器質的な異常が認められない。
こうした症状が原因で生活に支障をきたしている場合はすぐに受診しましょう。また、体重減少や発熱、血便の症状がある場合は、過敏性腸症候群ではない可能性が高いですが、医療機関を受診してください。
Q.過敏性腸症候群になった場合、どのような治療が必要なのでしょうか。完治は可能なのでしょうか。
鈴木さん「過敏性腸症候群は、ほとんど完治しない病気といわれています。そのため、『完治』というよりも『症状のコントロール』を目指す病気です。適切な治療と生活改善で症状を軽減できます」
■治療方法
(1)生活習慣の改善
・規則正しい食事と十分な睡眠を取る。
・瞑想(めいそう)や運動などを通じてストレスを管理する。
(2)食事療法
・オリゴ糖や二糖類、単糖類、糖アルコールといった、小腸で吸収されにくい発酵性糖質が多く含まれる「FODMAP」と呼ばれる食べ物の摂取を避ける。FODMAPは、小麦や豆類、牛乳、ヨーグルト、タマネギなどを指す。
・豆類や乳製品など、体内でガスが発生しやすい食品を避ける。
・刺激物や脂っこい食事を控える。
(3)薬物療法
・下痢型
ロペラミドや腸の動きを抑える薬
・便秘型
腸を動かす薬や繊維補助剤
・腹痛やガス
抗けいれん薬やプロバイオティクス
(4)心理的アプローチ
認知行動療法(CBT)やマインドフルネス
Q.過敏性腸症候群であるにもかかわらず放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。
鈴木さん「過敏性腸症候群自体が命に関わる病気ではありませんが、症状によるストレスで仕事や日常生活が制限され、生活の質が低下するほか、不安やうつ状態を引き起こす可能性があります。また、炎症性腸疾患や大腸がんなど、他の重大な疾患が隠れている場合があり、それを見逃す可能性があります」
Q.過敏性腸症候群の発症を防ぐ方法について、教えてください。
鈴木さん「次の5つの対策が有効です」
(1)ストレスを管理する
・毎日、リラックスする時間をつくる。
・適度な運動や趣味を取り入れる。
(2)腸に優しい食生活
・バランスの取れた食事を心掛ける。
・発酵食品(みそ)で腸内環境を整える。
(3)規則正しい生活を送る
・食事の時間を一定にする。
・睡眠を十分に取る。
(4)刺激物の摂取を避ける
・カフェインやアルコール、脂っこい食べ物の摂取を控える。
(5)早めに医師に相談する
軽い症状でも早めに医療機関に相談する。
過敏性腸症候群は「ストレスを腸が代わりに引き受けてくれる」状態ともいえます。大切なのは、腸を「腸仲間」として大事にしてあげることです。
オトナンサー編集部
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