標高855m! なぜ東京の通勤電車が山形に? ロープウェイ駅で見た“ありえない光景”実現の経緯
- 乗りものニュース |

東京の通勤電車が、標高855mの山麓駅に
山形県の蔵王温泉にある蔵王ロープウェイの蔵王山麓駅。駐車場から駅舎に向かうと、鮮やかなオレンジ色の電車が目に飛び込んできます。展示されているのは、東京都内の亀戸線や大師線を走っていた東武鉄道8000系8500型の8577編成です。
蔵王山麓駅に展示された東武鉄道の8577編成(志田 裕撮影)。
駅名板に記された標高は855m。電車の周囲に広がるのは、現役時代に走っていた東京の住宅街やビルの風景ではなく、雄大な山々です。背後にはスキー場の斜面があり、近くではロープウェイが行き交っています。都市の暮らしを支えていた通勤電車と山あいの観光地という組み合わせは、写真で見る以上に不思議な光景でした。
車両は駐車場に敷かれた短い展示用線路の上に、2両を連結した状態で展示されています。オレンジ色の車体に黄色い帯という塗装は、昭和30年代に東武の通勤車両で使われていた「標準色」の復刻です。
蔵王に東武の電車がある理由は、蔵王ロープウェイを運営する会社が東武グループの一員だからです。
この8000系は1963(昭和38)年に登場し、約20年間で計712両が製造された東武を代表する通勤電車。8577編成は2025年に大宮の鉄道博物館で特別展示され、同年夏には引退記念イベントが開かれました。そして同年10月、蔵王での展示が始まったのです。
窓の向こうには、現役時代の雰囲気が
東武鉄道は展示を発表した際、冬季の混雑時にはロープウェイを待つ人に車内を見学してもらい、待ち時間を過ごす環境の改善につなげると説明していました。冬季以外には、車両を活用したイベントも予定するとしています。
ただし、筆者が訪問した日は車内に入れませんでした。扉は施錠され、周囲には柵や監視カメラも設置されています。現地の職員によると、内部を公開するのはイベントの際に限られるとのことでした。
そこで窓越しに車内をのぞくと、つり革やシートもそのまま残っているのが見えました。車内の掲示物もあり、東武鉄道の車両として走っていたころが、そのまま残っているように感じられます。外に目を向ければ蔵王の山々が広がり、窓の向こうには東京の通勤電車の空間がある。その対比も、この展示の面白さです。
車内を見学したい場合は公開予定の確認が必要ですが、外から眺めるだけでも、2両を丸ごと残した姿には見応えがあります。東京の下町から標高855mの山麓駅へ。8577編成は、走っていたころとは大きく異なる風景の中で、蔵王を訪れる人々を迎えています。
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