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海外の富裕層、なぜ高級店より「大戸屋」を熱望? コンビニ弁当やグミに感動…彼らが驚く“日本の日常”とは

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海外の富裕層に人気がある定食チェーン「大戸屋」
海外の富裕層に人気がある定食チェーン「大戸屋」

海外の富裕層に人気がある定食チェーン「大戸屋」海外の富裕層に人気がある定食チェーン「大戸屋」

「海外の富裕層を日本でもてなすなら、高級寿司? 老舗料亭? 予約困難なレストラン?」

 実は、その“常識”から疑った方がいいのかもしれません。

 世界33カ国で展開する経営者コミュニティー「コーポレートコネクションズ」で日本とシンガポールのナショナルディレクターを務め、日々、世界各国のトップ経営者やビリオネアと深い交流を持つ伊藤太一さんによると、彼らが日本で喜ぶものは、必ずしも「高級なもの」ではないといいます。

 むしろ、日本人なら「こんな普通のものを?」と思うようなものに、驚かれることもあるそうです。なぜ、世界中で一流のサービスに触れている海外の富裕層が、日本の身近なものに心を動かされるのでしょうか。インバウンド時代の日本がもっと生かせる、意外な「強み」を紹介します。

「また大戸屋に行きたい」とリクエストされる

「海外の富裕層を日本で接待するからといって、必ずしも高級店へお連れする必要はありません」

 世界各国を飛び回るトップ経営者や富裕層は、一流ホテルや高級レストランを利用する機会も少なくありません。そんな彼らを日本へ迎えるとき、日本人側はつい「負けないくらい高級な店を用意しなければ」と考えてしまいがちです。

 ところが、伊藤さんが実際に海外のゲストを案内していて、リクエストされることがあるのが定食チェーンの「大戸屋」。白米にみそ汁、焼き魚や肉料理、副菜が並ぶ、日本人にはおなじみの定食です。

「もちろん高級な日本料理を喜ばれる人もいらっしゃいます。でも、大戸屋のような店を面白がってくださる方々もいます。料理がおいしくて、きれいに提供され、店内も清潔で、接客もしっかりしている。それで、この価格です。海外から見ると『なぜ、この価格でここまでできるの?』という驚きがあるのですね」

 彼らが見ているのは、単なる「安さ」ではありません。「この価格で、このクオリティー」という、日本人には当たり前になっている価値なのです。

コンビニ弁当が「日本体験」になる

 同じことは、コンビニでも起こるといいます。日本人にとってコンビニは、あまりにも日常的な存在。「海外からVIPが来るから、コンビニ弁当を見せよう」と考える人は少ないでしょう。

 しかし海外から見ると、その「普通」が普通ではありません。日本のコンビニは商品の種類が豊富で、限られた価格の中でも味や見た目が工夫されています。パッケージも使いやすく、店内は清潔。どの店舗でも一定水準の商品やサービスが提供されています。

 一つ一つは豪華ではありません。けれども「安いのに、ちゃんとしている」という点がポイントです。伊藤さんは、そこに日本人自身が過小評価している”世界の富裕層が着目する価値”があると考えています。

「海外の人が感動している横で、日本人の方が『え、そこですか?』と驚いていることがあります。私たちにとっての日常が、海外の方々には一つの素晴らしい体験になっています」

意外な差し入れの人気者は「日本のグミ」

 食事だけではありません。海外のゲストへの差し入れにも、日本人側と受け取る側の「価値観のズレ」が表れることがあるそうです。

 外国人への日本土産というと、和菓子や抹茶味のお菓子など、“いかにも日本らしいもの”を選びたくなります。ところが、伊藤さんが海外の富裕層らに渡して意外に反応がいいと感じているものの一つが、日本のグミです。

「グミなら海外にもあるじゃないか、と思いますよね(笑)。でも、日本のグミは果汁感や風味が繊細で、その違いを面白がってくださることがあります。差し入れとして出すと、あっという間になくなってしまいます。日本のチョコレートも人気ですね」

「海外にもある」ということは、お土産として弱点に見えます。しかし逆に考えれば、普段から知っている商品だからこそ、日本の商品との品質の違いを感じてもらいやすいともいえます。珍しいものや高価なものだけが、日本土産の価値ではないのです。

「日本らしいから喜ぶ」とは限らない

 逆のケースもあります。たとえば、あんこ。日本人にはなじみ深い味ですが、海外の人の中には、独特の甘さや食感を苦手に感じる人もいます。

 そして、かりんとうも日本人にはなじみ深いお菓子ですが、海外の人からすると、その見た目から食べ物とは別のものを連想してしまうケースもあるのだとか。

 ここで伊藤さんが大切にしているのが、相手に自分の価値観や文化を無理に勧めないことです。

「『日本では人気だから』『せっかく日本に来たのだから、一口だけでも』と勧めたくなります。でも、相手が苦手だと言っているものを無理に食べてもらう必要はありません。おもてなしは、日本文化を押しつけることではないと考えています」

 日本人が「見せたい日本」と、海外の人が「楽しみたい日本」は、必ずしも同じではありません。これは食べ物に限らず、インバウンドビジネス全般を考える上で重要な視点かもしれません。

「安い日本」だけで終わらせてはもったいない

 為替環境によって、訪日外国人にとって日本の商品やサービスに割安感が生まれる局面があります。しかし伊藤さんは、日本の魅力を単純に「安いから人気」と捉えてしまうのは、もったいないと話します。海外の人が驚いているのは、単なる価格の安さだけではないからです。

「この価格なのに、なぜこんなにおいしいのか」

「この価格なのに、なぜこんなに清潔なのか」

「この価格なのに、なぜこんなに丁寧なのか」

 つまり、日本の強みは「価格×品質」のギャップにあるのではと伊藤さんは考察します。これは大戸屋やコンビニだけの話ではありません。飲食店、スーパー、ドラッグストア、ホテル、交通、商店街など、日本人が普段利用しているさまざまな場所に同じ可能性があります。

 ここには、インバウンドビジネスを考える企業や地域にとっても大きなヒントがあります。訪日外国人を呼び込もうとすると、つい「外国人向けの特別なコンテンツをつくらなければ」と考えがちです。

 もちろん、新しい体験を開発することも大切です。ですがその前に、「私たちが普通だと思っているものを、海外の人の目で見直してみる」という価値の再定義があってもいいのではないでしょうか。

 大戸屋もコンビニも、日本人にとっては観光資源ではありません。しかし、そこで提供される料理や商品だけでなく、清潔さ、細やかさ、接客、品質の安定性まで含めて見れば、海外の人にとっては十分に「日本らしい体験」になり得ます。

「外国人向けに何かを足す前に、すでにある価値を発見し直す」という視点から、新しいインバウンドビジネスが生まれる可能性もあります。世界各国の経営者や富裕層と交流している伊藤さんは、こんなことを感じているそうです。

「私たちは海外の方々に日本を紹介しているつもりですが、逆に彼らから『日本の本当の価値』を教えてもらうこともあるのです」

「彼らの目には、日本の日常がどう映っているのか」という視点を持つだけで、私たちが「当たり前」として見過ごしてきたものが、まったく違って見えてきます。

 高級品をそろえること以上に、相手が何に驚き、何を面白いと感じているのかを観察すること。それは外国人への対応だけでなく、すべてのビジネスの通じる本質と言えそうです。

 もしかすると、日本の本当の強みを一番知らないのは、日本人自身なのかもしれません。

オトナンサー編集部

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