高齢者の死因に「肺炎」多いのはなぜ? 熱やせき出ないことも…注意すべき就寝中の“むせない誤嚥”とは
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肺炎が高齢者にとって危険な病気なのはなぜ?(画像はイメージ)
高齢者の死因に多い病気としてよく知られているのが「肺炎」や「誤嚥(ごえん)性肺炎」です。なぜこれらの病気が高齢者にとって危険なのでしょうか。草ヶ谷医院(静岡市清水区)・院長で、呼吸器専門医・指導医の草ヶ谷英樹さんに聞きました。
肺炎は風邪や気管支炎と何が違う?
Q.そもそも肺炎とはどのような病気なのでしょうか。原因や主な症状について教えてください。
草ヶ谷さん「肺炎とは、細菌やウイルスなどの病原体が肺の奥、酸素を取り込む『肺胞』にまで入り込んで炎症を起こす病気です。喉や気管支の炎症である『風邪』や『気管支炎』よりも一段深い場所で起きている、と考えていただくと分かりやすいと思います。
一般の生活をしている人に起こる市中肺炎では、肺炎球菌が代表的な原因菌です。そのほか、インフルエンザや新型コロナなどのウイルス、マイコプラズマなど、さまざまな病原体によって肺炎が起こります。また、インフルエンザなどのウイルス感染の後に、二次的な細菌性肺炎を起こすこともあります。
主な症状は、発熱やせき、たん、息苦しさ、胸の痛みです。『風邪が1週間以上長引く』『熱が一度下がってからまた上がる』『たんの色が濃くなる』『呼吸が苦しい』といった経過は、肺炎を疑うサインです。
ただし、後で説明しますが、高齢の人の場合、こうした典型的な症状がそろわないことがあり、そこが肺炎の怖いところです」
Q.高齢者の死因で肺炎が多いのはなぜなのでしょうか。
草ヶ谷さん「理由は大きく3つあります。1つ目は、気付きにくいことです。高齢になると、発熱やせきといった典型症状が出にくくなります。『何となく元気がない』『食欲がない』『ぼんやりしている』だけで、実は肺炎が進行していた、ということが珍しくありません。受診が遅れ、見つかった時にはかなり進んでいるということが、高齢者の肺炎ではしばしば起こります。
2つ目は、体の防御力が落ちていることです。免疫の働きが低下しているのに加え、せきで異物を外に出す力、つまり『せきの力』そのものが弱くなっています。若い人なら追い出せる病原体を、追い出しきれないのです。
さらにいえば、余力も乏しいことが挙げられます。高齢者では、心疾患、慢性呼吸器疾患、腎疾患、糖尿病など複数の基礎疾患を抱えていることも少なくありません。こうした状態で肺炎になると重症化しやすく、肺炎をきっかけに持病が悪化することもあります。
基礎疾患に加えて肺炎が起こることで、肺炎が重症化しやすかったり、肺炎をきっかけに基礎疾患が急に悪化してしまったりすることも、高齢者の肺炎が重篤化しやすい要因といえるでしょう。
3つ目は、飲み込む力の低下、いわゆる『誤嚥』です。年齢とともに、食べ物や唾液が誤って気管に入りやすくなります。誤嚥した唾液や食べ物などに含まれる細菌が肺に入り、感染を起こして肺炎になることがあります。これが誤嚥性肺炎です。
特に注意していただきたいのは、これが食事中のむせだけで起こるのではなく、睡眠中に唾液が少しずつ流れ込むことでも起こるという点です。むせない誤嚥もあるのです。
そして誤嚥性肺炎は、いったん肺炎が治ったとしても、誤嚥を起こしやすいという状態自体は変わらないため、繰り返すことで、体力や栄養状態、日常生活動作が低下する悪循環につながることがあります」
若い人でも命に関わるケースはある?
Q.肺炎は高齢者だけでなく、若い人がかかった場合も命を脅かすケースがあるのでしょうか。
草ヶ谷さん「あります。頻度は高齢者よりずっと低いものの、決してゼロではありません。代表的なのは、レジオネラ菌による肺炎や、インフルエンザの後に重い細菌性肺炎を併発するケースです。健康な若い人でも、数日で急激に呼吸状態が悪化し、集中治療が必要になることがあります。
また、ぜんそくやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性呼吸器疾患、糖尿病などの基礎疾患がある人、喫煙者などでは、若くても重症化に注意が必要です。また、インフルエンザなど病原体によっては、妊娠中の方も重症化リスクが高くなります。
若い人に知っておいていただきたい目安は、『息苦しさ』は年齢を問わず危険なサインだということです。風邪だと思っていても『呼吸が苦しい』『動くと息切れがする』『胸が痛い』など、こうした症状があれば、様子を見ずに医療機関を受診してください」
Q.肺炎を予防する方法について教えてください。
草ヶ谷さん「予防の柱は4つあります。
第一に、ワクチンです。日本では65歳の方と、60~64歳で一定の条件を満たす方を対象に、肺炎球菌ワクチンの定期接種が行われています。2026年度からは20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)が定期接種に使用されています。対象外の方でも、年齢や基礎疾患によっては任意接種を検討する場合があります。
また、インフルエンザや新型コロナのワクチンも、それぞれの感染症による肺炎や重症化を防ぐ上で重要です。インフルエンザなどの後に起こる二次性の細菌性肺炎を減らすことにもつながります。入り口をふさぐことが、肺炎の予防につながります。
第二に、口の中を清潔に保つことです。意外に思われるかもしれませんが、これは誤嚥性肺炎の予防にとても重要です。誤嚥性肺炎では、口腔内の細菌を含んだ唾液などが肺に入り込むことが発症に関与するため、毎日の歯みがきや入れ歯の手入れ、必要に応じた歯科受診などで口腔環境を整えることが大切です。
第三に、飲み込む力と体力を保つことです。飲み込む力が低下している場合には、食事中の姿勢や食べ物の硬さ・形、一口の量などを本人の嚥下機能に合わせて調整することが重要です。むせが増えた、食事に時間がかかる、食後に声がガラガラするといった変化があれば、医療機関や歯科などで嚥下機能について相談してください。
第四に、禁煙です。たばこは気道の防御機能を直接壊します。肺炎に限らず、呼吸器を守る上で禁煙は非常に大切です。
そして最後にお伝えしたいことがあります。特にご高齢のご家族がいらっしゃる人は『熱がないから大丈夫』と思わないでください。『食欲がない』『元気がない』『何となく様子がおかしい』など、こういった症状が高齢者の肺炎の始まりかもしれません。
肺炎は軽症であれば外来で治療できることもありますが、高齢者では典型的な症状が乏しいまま悪化することがあります。「いつもと違う」と感じた段階で早めに医療機関へ相談することが大切です」
オトナンサー編集部
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