「ドイツさん戦車ください!」 北欧へ渡った戦車たちの波乱万丈すぎる半生…21世紀になって“カネに化けた!?”
- 乗りものニュース |

第二次大戦中にソ連と戦っていたフィンランドは、ドイツからIV号戦車をなんとか購入します。しかし直後、ソ連との休戦が成立し、代わりにドイツが敵国に。ドイツ製IV号戦車15両には、その後も波乱万丈の運命が待ち受けていました。
40両発注し、15両だけが届く
「ドイツから期待の戦車がやって来る」――ロシアの侵攻を受けて西側諸国から主力戦車の供与を受けたウクライナを思い浮かべる人も多いでしょう。けれどこの場面は、実は80年前の北欧にあったのです。
1944年秋、フィンランドとドイツの間で起きたいわゆるラップランド戦争中、フィンランド北部のオウルで橋を渡る1号車(画像:SA-Kuva)
それがフィンランドです。1939年の冬戦争以降もソ連の圧力を受け続け、望みを託したのがドイツ製のIV号戦車でした。フィンランドはドイツと防共協定を結んでソ連と「継続戦争」を戦っていましたが1944年6月9日にソ連は連合軍のノルマンディー上陸作戦と呼応するように攻勢へ転じ、隣国フィンランドへも侵攻を開始しました。
当時、フィンランド軍の戦車戦力は旧式化が進んでいました。ソ連製のT-26軽戦車、T-28中戦車、BT-42突撃砲がほとんどで、使い物になりそうなのは鹵獲(ろかく)したT-34/76が4両とKV-1が2両、あとは戦車ではありませんがIII号突撃砲(Stu 40G)59両が頼りでした。
ソ連軍のT-34/85や重戦車KV、ISシリーズと対抗するには、新鋭の装備が必要でした。選択肢として思い浮かぶのは「ティーガーI」や「パンター」でしょう。しかしフィンランドは、IV号戦車J型を40両発注します。
ティーガーやパンターは確かに強力でしたが、整備も補給も複雑でフィンランドの補給体制や練度で運用するには荷が重すぎました。対照的にIV号戦車は設計が成熟し、扱いやすく、実績も十分で既存のIII号突撃砲と共用できる部分もありました。J型はIV号戦車の最終型ですが、当時生産の最盛期で比較的入手しやすく、自国で使いこなせることが最優先だったのです。この姿勢は、現代のウクライナが西側戦車をどう扱うかという課題とも重なります。
しかし、1944年夏のドイツは東部戦線で崩壊寸前。余力は乏しく、納入は不透明でした。8月26日から9月1日までにフィンランドへ届いたIV号戦車は、15両だけでした。
「戦車代」は未精算のまま?
さらに運命は皮肉でした。納品直後、フィンランドはソ連との停戦交渉を開始し、9月4日には休戦、19日にはモスクワ休戦協定が締結されます。
この協定によりドイツとの外交関係が断絶され、全てのドイツ軍をフィンランドから追放または武装解除、抑留することが規定されます。結果、ドイツとの間にラップランド戦争が生起します。昨日の友は今日の敵、大国に挟まれた小国の悲哀を感じさせます。
受領したIV号戦車は取扱い訓練などドイツからの運用支援が当然受けられず、戦力化が遅れてラップランド戦争には投入されませんでした。結局、15両すべてが母国に砲口を向けることなく終戦まで生き延びました。
ちなみにIV号戦車は現代のウクライナのように供与ではなく、ドイツからの購入契約で、代金は1両25万ライヒスマルクだったとされます。当時の日本円に換算すると約50万円。日本の九七式中戦車が約14万円であり、かなり高価であることが分かります。精算は現金決済ではなく当時一般的だったニッケル、木材など戦略物資とのバーター取引でした。しかし敵対関係となったため支払いが残り、戦後も未精算のままとなっているようです。
フィンランドに届いたIV号戦車は、Ps. 221-1からPs. 221-15までの番号が付与されます。戦車旅団第2大隊に配備され、IV号にちなんで「ネロネン」(4の意味)と呼ばれていました。1個大隊の定数にも満たなかったため、III号突撃砲が穴埋めしました。
主砲の75mm KwK40戦車砲はT-34に対抗できると評価されました。一方でサスペンションの揺れが大きいため乗り心地が悪く、主砲の照準にも支障があるとされました。
この振動問題はドイツ軍や連合軍にも記録がなく出処が不明ですが、「ラヴィスティン(揺れるやつ)」とあだ名されていたことからフィンランド戦車兵の間では評判だったようです。III号突撃砲と比べた体感差とか、改造を重ね過ぎたJ型の車体バランスが悪い問題ではないかともいわれています。
また、IV号戦車H型やJ型の特徴であるシュルツェン(対戦車ライフルからの防護を目的とした増加装甲)は、森林地帯で引っ掛かって破損や脱落するなど、邪魔モノ扱いされて早々に取り外されてしまいました。
波乱万丈だった15両の「その後」
15両の運命は波乱万丈でした。Ps. 221-4は到着早々1944年9月20日にエンジン火災で全損。Ps. 221-7・8・9・14は1947年2月に軍事技術補給廠の倉庫火災で焼失します。残りは1962年9月に全車退役となり射撃場で標的となります。
その後、Ps. 221-2・6はパローラ戦車博物館に、Ps. 221-12はミッケリの歩兵博物館にそれぞれ所蔵されました。保存されているのは、この3両です。
2014年10月、フィンランド公共放送のYLEが「演習場の標的として使われていた錆びた残骸が“お宝”になった」と報じました。フィンランド軍が射撃場に残っていたIV号戦車を「現状渡し」でオークションサイトに出品したのです。
開始価格は50ユーロ(約8600円)でしたが、あっという間に800件以上の入札があり落札価格は21万3150ユーロ(約3700万円)となりました。このIV号戦車はPs. 221-11とされ、フランス・ストラスブール近郊の軍事博物館Musee Militaire Park Franceへと渡りました。現況は確認できません。
フィンランドが期待したIV号戦車は、「最強」ではなく「使える」ことでした。その判断は軍事的合理性を示すものですが、半世紀を経た21世紀のフィンランドに「期待以上の利益」をもたらしたようです。YLEは「この戦車が標的として撃ちまくられていなければ、一体いくらになっただろう」とコメントしています。
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