人がいると、ガクガクブルブル… 中型バス初の「レベル4」自動運転 人手不足の救世主という理想と“現実”
- 乗りものニュース |

茨城県で中型バスとして国内初となる「レベル4」の自動運転の営業運行が実施されています。運転手不足の解決策になると期待されている技術ですが、乗車すると人の運転とは「明らかな違い」がありました。
運転手不足の“魔法のつえ”に
みちのりホールディングス(HD)子会社の茨城交通が2025年2月から、茨城県日立市で中型バスとして国内初となる「レベル4」の営業運転を行っています。レベル4とは最上位のレベル5(完全自動運転のシステムが常に運転する)に次ぐ水準で、場所や天候、速度などの特定条件下で自動運転システムが全ての運転を手がけます。
JR常磐線大甕駅前に停車中の「レベル4」が可能な自動運転バス(大塚圭一郎撮影)
全国でバスの運転手不足が深刻化している中で、自動運転が広がれば“魔法の杖”になると期待感が高まっています。筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は自動運転技術の実情と課題を探ろうと現地へ向かったところ、「理想」と「現実」には依然として隔たりが大きいことを思い知りました。
茨城交通はバス高速輸送システム(BRT)の「ひたちBRT」にある6.1kmの専用道で自動運転を実施しています。この区間では運転席に乗務員がいるものの、基本的にシステム任せ。一方、専用道以外の区間では乗務員がハンドルを握ります。
その専用道はJR常磐線の常陸多賀駅に近い河原子を起点に、常磐線のひと駅南の大甕(おおみか)を経由し、日立市立南部図書館まで続いています。専用道が敷かれているのは、業績不振が響いて2005年に廃止された私鉄、日立電鉄の線路跡地です。
赤字鉄道の跡地を引き継いで2013年3月に開業した「ひたちBRT」ですが、みちのりHDの松本 順会長は「ひたちBRTはちゃんと利益が出ています。鉄道とバスとではかかるコストが全然違います」と強調しました。
他のクルマや歩行者らが通らない専用道ならば安全性を確保しやすいため、運転手が乗り込むもののシステムが自動で制御する「レベル2」の実証実験を2018年度に開始。その後、高度なレーザーセンサー技術「ライダー」やカメラを備えたバスを導入して「レベル4」の実証実験に乗り出し、24年11月26日、国土交通省関東運輸局から営業運転の認可を受けました。
「人を恐れるような運転」
自動運転バスは平日限定で1日4往復し、日中時間帯に限られます。いすゞ自動車の中型バス「エルガミオ」を改造した自動運転バスの窓には、「座席定員制27名 立席でのご乗車はできません」と明記されていました。
バスの窓に貼られた「座席定員制27名 立席でのご乗車はできません」の文字(大塚圭一郎撮影)
みちのりHDの浅井康太グループマネージャーは「急停止した場合の利用者の転倒を避けるために現在は全員が着席した状態で走らせており、そのために混雑しない時間帯に走らせている」と理由を説明しました。
最高速度は40km/hで、手動運転とほぼ変わりません。しかし、時刻表を見ると自動運転区間の所要時間は10分長く設定されています。
運転席の後ろにあるモニター画面では、走行速度や、車体に取り付けたカメラなどが検知した人やクルマなどを表示しています。これらを確認しながら走り方を観察していると、人の運転と比べて時間を要する理由が見えてきました。
車道と歩道との仕切りが縁石だけの区間では、歩行者が専用道に立ち入るリスクを想定し、車道の端から2m以内に人がいると減速します。また、11か所ある一般道との交差や、15か所ある横断歩道では「他のクルマや人を恐れるようにノロノロしたスピードで走る」(乗務員)という傾向が見られました。
40km/h弱に設定している最高速度へ加速する際も、安全性を十分に確認している乗務員はアクセルをぐっと踏んでキビキビと走るのに対し、自動運転はまるで初心者のように自信なさげにソロソロと動いており、ネット用語でいう「ガクブル(ガクガクブルブル)」を思わせる様相でした。
乗務員は「(自車の前方で)道沿いの歩道をジョギングしている人がいる場合、自動運転だと15km/h程度で後ろをノロノロとついて行くことがある」と教えてくれました。また、信号の停止線を検知しにくい交差点では「手動で停止線まで動かしている」と言います。
こうした緩慢な走り方によって時間のロスに生じ、豊富な経験に裏打ちされた運転手のハンドルさばきと比べ、わずか6.1kmで10分もの時間差につながるのです。
軌道に乗せるための「3つの課題」
浅井さんは「ひたちBRT」の自動運転について「富士山で言えば3合目に到達したぐらいだ」と話し、2025年度には次の段階として「乗務員が車内にいない無人運転で走らせるのと、利用者が立って乗れるようにするのが大きな目標になる」と打ち明けました。
しかし、自動運転バスを軌道に乗せるのには3つの課題があります。
無人運転の開始後は日立南営業所に設置予定の制御室でバスなどの状況をモニターなどで監視するとともに、「警備員を沿道に配置し、トラブルが起きた場合にすぐに駆けつけて対応できるようにする」と言います。
ここに1つ目の課題があります。運転手不足の解決策として期待されるはずの自動運転技術なのに、昔の車掌も乗っていたバスのようにツーマン態勢に“逆戻り”することになるのです。
そう質問すると浅井さんは苦笑しながらも「確かに最初はツーマン態勢になりますが、自動運転バスを増やしていけば制御室の監視や、沿道の警備も1人で何台も対応できるようになって生産性が上がります」と説明しました。
2つ目は路線全体を自動運転で走らせることができるように、専用道ではない一般道にも対応させることです。ただし、他のクルマや歩行者などが頻繁に行き交う常陸多賀駅前などで安全性を万全にしつつ、効率的に運行する技術を確立するのは決して容易ではありません。
そして残る1つの課題が、高額な車両コストです。バス業界の関係者は「中型バスの新車は1台当たり2500万円程度だが、自動運転バスは7~10倍かかる」と打ち明けました。最高で1台2億5000万円もかかる計算です。現在は実証実験のために国が車両費を全額負担していますが、政府が2027年までに100か所以上での「レベル4」の自動運転実施を目指している中で“丸抱え”がいつまで続くのかは見通せません。
「富士山の山頂」までの道のりは依然長いものの、こうした課題を乗り越えて自動運転バスが普及すれば、地方での路線網維持にも活路が開けます。実用化の緒に就いた自動運転バスですが、いずれはベテランの運転手に引けを取らないハンドルさばきも可能になるのか行方に注目していきましょう。
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