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京急の「歌う電車」は23年で消滅……海外では50年健在!? 「あの音を消すな」新型車にも受け継がれる

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京急「歌う電車」なぜ消えた?

 発車時にドレミファの音階を奏でることから「歌う電車」として親しまれた京浜急行電鉄の通称「ドレミファインバーター」が2021年7月に完全消滅し、ほぼ5年となります。一方、カナダ東部ケベック州の大都市モントリオールには、発車する時に独特の音を発する「歌う地下鉄」があります。

Large figure1 gallery9京浜急行電鉄の2100形。VVVFインバーターが換装され、今は「歌う電車」ではなくなっている(大塚圭一郎撮影)

 筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が2026年6月にモントリオールを訪れたところ、「歌う地下鉄」の大部分は新型車両に置き換えられていたものの一部が健在でした。また、新型車両には同じ音を楽しめる“特別機能”がありました。

 京急創立100周年の1998年に登場した電車2100形は当初、床下にドイツ・シーメンス製の制御装置「VVVFインバーター」を搭載。インバーターは直流電流を三相交流に変換するとともに、周波数と電圧を変化させて主電動機(モーター)の回転を制御します。

 発車時にドレミの音階を奏でることから「ドレミファインバーター」と名付けられたインバーターは、この音を聞くために沿線以外からも鉄道愛好家が集まる大ヒットに。同じタイプのインバーターは、一部の新1000形にも採用されました。

 しかし、2008年以降の車両更新の際にドレミファインバーターは、東洋電機製造といった日本メーカーの通常のインバーターに置き換えられました。筆者が京急関係者に理由を尋ねたところ「シーメンスに日本国内で点検や修理をしてもらえないなど、アフターサービスに難があったことが要因だ」と説明しました。

 JR東日本が1995年に常磐線へ導入を始めた交直流通勤形電車E501系もシーメンス製のVVVFインバーターを採用していましたが、2021年7月で全て消滅しています。

カナダに健在「歌う地下鉄」の正体

 一方、モントリオール交通局(STM)の地下鉄は1966年に最初の区間が開業してから路線網を広げ、現在はオレンジ、ブルー、グリーン、イエローの4路線が総延長69.2kmにわたって延びています。軌道脇の第三軌条から電気を採り入れ、ゴムタイヤで走るのが特色です。

「歌う地下鉄」として親しまれてきたのは、1976年に営業運転が始まった2代目車両「MR-73」。先頭部は大きな一枚窓を設けた洗練されたデザインで、空色の車体に白いラインが入っています。1両に4か所の両開き扉を備えた3両編成で、運行時は連結して6両編成または9両編成にしています。

 MR-73は発車する際、地元の人たちが「ドゥ・ドゥ・ドゥ」と呼ぶ特徴的な電子音を奏でます。STMは「よく知られている“ドゥ・ドゥ・ドゥ”という音は有名な作曲家の作品ではなく、車両の制御装置が発しています」と説明します。

 MR-73の床下に搭載している制御装置は、VVVFインバーターの前世代の機器に当たるチョッパ制御装置です。チョッパ制御とは取り込んだ電力を高速でスイッチングして切り刻み、主電動機にかける電圧を調整して速度を制御する仕組みです。

新型車両への粋な“バトンタッチ”

 一時はモントリオールを走る地下鉄の主力車両に躍り出たMR-73ですが、2016年に営業運転を始めた新型車両MPM-10にかなり置き換えられました。筆者が2026年6月に利用した際にやって来たのはほとんどがMPM-10で、MR-73は平日の朝と夕方のラッシュ時間帯に少し現れた程度でした。それでも、登場50年後も“現役選手”で、持ち味の音色を奏でながら力走している姿を見られるのは感動的です。

Large figure2 gallery10モントリオール交通局(STM)の地下鉄車両MR-73。チョッパ制御の「歌う電車」だ(大塚圭一郎撮影)

 今やモントリオールの地下を駆ける主役となったMPM-10の愛称は「アズール(空色)」。ところが、一枚窓を引き継いだ先頭部は銀色に彩られています。車体が空色なのは側面だけのため、「MR-73の方が空色の面積が広いのに」という印象を抱かされます。

 MPM-10の制御装置はVVVFインバーターですが、採用されたのはシーメンスのライバルである鉄道車両大手アルストム(フランス)の製品。音階を奏でる機能は備えていません。

 一方、MR-73の車両数が減っていくのに伴い、利用者からは「モントリオールの地下鉄らしい“ドゥ・ドゥ・ドゥ”の音が消えていくのは残念だ」と惜しむ声も出たそうです。そこでタイミングこそ少し異なるものの、MPM-10にも「ドゥ・ドゥ・ドゥ」の音を発する“特別機能”が設けられました。

 それは、客室の両開き扉が閉まる際の警告音です。MPM-10の扉の脇には発光ダイオード(LED)照明を備えており、運行中は駅に到着する前に開く側のLED照明が緑色に光り始めます。扉が閉まる時にはLED照明が赤色に切り替わるとともに、「ドゥ・ドゥ・ドゥ」の音が響いて警鐘を鳴らすのです。

 つまり、MR-73が発車後に響かせていた音色を、MPM-10では扉を閉めるタイミングに“先取り”したというわけです。MR-73に親しんだ長年の利用者にとっては「電車が行ってしまった時に聞こえてくる音」のため、駅に停車中のMPM-10からこの音を聞こえてくると条件反射的に「次の電車を待とう」と判断するかもしれません。

 そのように機能すれば、駆け込み乗車を防ぐ効果も期待できます。モントリオールの地下に響く名物の音色を、テンポよくバトンタッチできたと言えそうです。

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