「日本最南端の特急」だけど「日本最南端のJR駅」まで行かない!なぜ? 異色のノンストップ特急 白黒ハッキリせざるを得ない理由
- 乗りものニュース |

来年に登場から15年を迎えるJR九州の観光列車「指宿のたまて箱」は、運行区間が50km未満、かつ途中ノンストップという異色の特急です。先にある“名所”まで延長しない理由をJR九州幹部に尋ねました。
あっ!という間に強烈な印象を残す特急
JR九州の観光列車「指宿のたまて箱」(通称・いぶたま)は、指宿枕崎線の鹿児島中央―指宿(鹿児島県指宿市)を途中ノンストップで運行する特急です。九州新幹線が全線開業した2011年3月にデビューし、新幹線と乗り継いで有名温泉地の指宿市を訪れる旅行者らを運んできました。
JR九州の特急「指宿のたまて箱」。車体が屋根から白と黒で塗り分けられている(大塚圭一郎撮影)
JR九州が「D&S列車」(「デザイン&ストーリー列車」の略)と呼ぶ観光列車で途中駅に止まらないのは他に、久大本線経由で博多(福岡市)―由布院(大分県由布市)間を結ぶ「或る列車」があります。しかし、「或る列車」は車内で料理を楽しむレストラン列車なのを考えると、通常の観光列車ながらノンストップ運行をしている「指宿のたまて箱」は異色の存在です。
しかも運行距離は45.7kmと短く、乗り入れていない指宿枕崎線の指宿―枕崎(枕崎市)間(42.1km)には「JR最南端の駅」の西大山(指宿市)や、「JR最南端の始発駅」の枕崎をはじめとする名所があります。
筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が「指宿のたまて箱」を指宿の先へ乗り入れさせない理由をJR九州幹部に尋ねたところ、明確な理由がありました。
あっ!という間に強烈な印象を残す特急
「指宿のたまて箱」は童話「浦島太郎」に登場する竜宮伝説を題材としており、指宿が伝説発祥の地といわれていることに着想を得ました。指宿駅前には「竜宮伝説発祥の地 指宿温泉」と記した看板が立てられています。
車両のデザインはJR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」などで知られる水戸岡鋭治さんが手がけました。国鉄時代の1979―80年に製造されたディーゼル車両キハ47形2両と、キハ40形を機関換装したキハ140形1両の3両があります。通常は2両編成で走っていますが、夏休みなどの繁忙期には増結した3両編成となります。
ユニークなのは、錦江湾(鹿児島湾)側の車体半分を白色、山側の半分を黒色に塗り分けていること。これは「黒髪だった浦島太郎が玉手箱を開けたら白髪になってしまった」という展開を表現しています。
「ノンストップ化」で賞味期限が過ぎたジョーク
元JR九州首脳は、かつてこんなジョークを披露していました。
JR指宿枕崎線の指宿駅舎(大塚圭一郎撮影)
「高校生2人が『指宿のたまて箱』に乗ることになり、1人が指宿で、もう1人が途中の喜入で乗車することになりました。指宿の1番線から乗った生徒が喜入に着く際、もう1人の生徒に携帯電話で『白い列車だよ』と伝えました。ところが、喜入駅の2番線にいた生徒は『白い列車なんて来ていないよ』と言い、こう続けました。『黒い列車しか来ていないよ』」
しかし、このジョークは賞味期限が来ました。2024年3月16日のダイヤ改正で、喜入の停車を取りやめたためです。筆者がJR九州に理由を尋ねると「喜入駅よりご乗車のお客さまが少なかったため」との回答でした。以来、鹿児島中央-指宿間をノンストップで走っています。
筆者は指宿から鹿児島中央まで「指宿のたまて箱」に乗りました。このときはキハ140形とキハ47形の2両編成で、予約したのはキハ47形の錦江側の窓に向かってカウンター沿い並んだ座席です。
南九州産のスギを使った内装に囲まれた座席に腰掛け、出発すると指宿市役所の脇で市職員が手旗を振って見送ってくれていました。車内にはイカやタツノオトシゴなどのイラストが点在しており、本棚には童話集などの書籍が並んでいました。
客室乗務員が車内放送で「錦江湾にはミナミバンドウイルカ、ハセイルカ、バンドウイルカの3種類のイルカが生息しています」と教えてくれました。「イルカが泳ぐ様子が見えることもあります」ということです。この日はあいにくの曇りで、錦江湾の奥にある桜島の山容もかすんでいました。
終点の鹿児島中央には発車から50分余りで到着。車窓を眺めたり、車内を見学したりしていると、あっという間に終点だったという印象です。
「もう着いたの!?」と驚く乗客が扉をくぐり抜けた時に浴びるのが、「シュー」という音とともに降り注がれる霧状のミストです。浦島太郎がたまて箱を開けたときに出てきた白い煙をイメージしており、浦島太郎ほどの歳月ではないにせよ乗客に車中で過ごした時間が結構長かったことを知らせるかのようです。
「日本最南端」なぜ乗り入れないの?
さて、「指宿のたまて箱」が乗り入れない指宿―枕崎間は、「薩摩富士」と呼ばれる開聞岳の周辺に菜の花が咲き誇る時期もあるなど沿線の景色も定評があります。
JR指宿枕崎線の指宿駅に掲示された時刻表。特に山川―枕崎間を走る列車の本数が少ない(大塚圭一郎撮影)
しかしながら、JR九州幹部は「指宿のたまて箱」の運行区間を鹿児島中央―指宿間から変える予定はないと明言します。その理由として「需要が多い鹿児島中央―指宿間を現行の1日3往復するには、車両運用上、指宿以西(指宿―枕崎)に乗り入れさせるのは難しいため」とし、「利用もそれほど見込めないためです」と補足しました。
確かに指宿―枕崎間の2024年度の平均通過人員は1日当たり216人と、JR九州が24年度実績を公表した鉄道線区では最低です。一方、通学通勤利用が多い鹿児島中央―喜入間は24年度の平均通過人員が1日当たり7958人に上り、喜入―指宿間も2090人でJR九州幹部は「合格点」だと指摘します。
もっとも、人気列車の「指宿のたまて箱」だけに、3両全てを稼働できる日に鹿児島中央―指宿間をキハ47形の2両編成で運行し、残るキハ140形1両を指宿―枕崎間で走らせれば利用者数の「東西格差」の是正に一役買うかもしれません。ただ、指宿―枕崎間で走らせるのに十分な利用が見込める繁忙期であれば、鹿児島中央―指宿間を3両編成で運転しないと供給不足に陥りかねないジレンマを抱えます。
運行区間を延長すれば指宿枕崎線活性化のポテンシャルを秘めた「指宿のたまて箱」ですが、開けて悔しき玉手箱に終わらせないためにはなかなか白黒つかないジレンマの解決が前提となりそうです。
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