短時間で働ける「スキマバイト」 けがで“労災”認められる? ありがちな“3つ”のトラブル 社労士が解説
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近年、長期雇用契約を結ばずに、空いた隙間時間にすぐに働くことができる「スキマバイト」が注目を集めています。基本的に履歴書や面接などが不要で、専用のアプリで気軽に仕事に応募できるため、自分が好きなタイミングで働きたい人には便利です。
ところで、スキマバイトの勤務中にけがをした場合、労災は認められるのでしょうか。スキマバイトの就業時にありがちなトラブルや注意点などについて、社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。
仕事内容が事前の情報と違うケースも
Q.そもそも、どのようなときに労災保険が適用されるのでしょうか。
木村さん「労災保険(労災)とは、業務上の事由もしくは通勤により労働者が傷病を負った場合、労働者や遺族などに保障を行う制度をいい、企業などは労働者を1人でも雇用した場合、この制度に加入する義務があります。
労災給付は所轄の労働基準監督署に請求しますが、業務上の事由の場合、労災適用には次の2つの要件を満たす必要があります」
【労災適用の2つの要件】
(1)仕事中に起きた災害であること(業務遂行性)
(2)仕事が原因で災害が起きたこと(業務起因性)
けがの具体的な例としては、「仕事中に職場内に置かれている物などにつまづいたり、ぬれた床で足を滑らせて転倒したりした」「機械類の操作時に誤ってけがをした」「重い物を持ち上げたり、運んだりした際に腰を痛めた」などが該当します。
「仕事中なのにサボって悪ふざけをしているときにけがをした」「故意にけがをした」「休憩時間中に行っていた運動などでけがをした」といった場合は、業務遂行性と業務起因性がないと判断され、労災が認められない可能性が高くなります。
通勤時の労災が認定されるには、「原則、会社に届け出た経路および移動手段で通勤していること」が必要です。ただし、コンビニやスーパー、病院など、日常生活上必要な理由で通勤途中に寄り道をした場合(逸脱または中断の間を除く)や公共交通機関の運休など、合理的な事情により、会社に届け出た経路と違うルートや異なる移動手段で通勤した場合は労災扱いになることがあります。
なお、会社帰りに友人と遊びに行くなどの理由で移動経路を逸脱、または移動を中断した場合、労災の対象にはならないので注意しましょう。
Q.では、スキマバイトのような、長期雇用契約を結ばない仕事に就いたときにけがをしたり、事故に遭ったりしたとします。この場合、労災保険は適用されるのでしょうか。理由も含めて、教えてください。
木村さん「労働基準法でいう労働者とは、『職業の種類を問わず、事業または事務所に使用され、賃金を支払われる者』をいいます。
スキマバイトは、短時間、単発で働く働き方ですが、就業先の正社員やパート、アルバイトと同じく、会社から直接指導や指示を受けて業務を行い、賃金は就業先から支払われます。そのため、企業などが1日でもスキマバイトに就く人を受け入れた場合、労働者として雇用契約を結ぶことになります。この場合、雇用契約書などの書面がなくても口頭もしくは業務実態があれば契約は成立します。
先述のように、労働者が仕事中や通勤中の事故でけがをした場合は労災が適用されます。スキマバイトの多くは仲介会社を通じて就労しますが、仲介会社はバイト先の情報を提供するだけで、労働者との雇用関係はありません。
就業先の企業や働き手の中には、就業時の身分について、仲介会社の従業員やフリーランサーだと勘違いをしているケースがあるため、就業前に契約形態を確認するようにしましょう」
Q.スキマバイトで何らかのトラブルに遭遇した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
木村さん「労災に関していえば、スキマバイトの就業時や通勤時にけがをした場合、すぐに就業先の担当者にその旨を報告し、指示を受けましょう。病院でけがの治療などをする際は、必ずけがの原因を受付に申し出てください。治療費には健康保険が使えないため、病院によっては、治療費を全額請求される場合があります。ただ、請求書の提出により労災認定が下れば、治療費は労災から全額支給されます。
就業先によっては、労災隠しや手続きが面倒などの理由で手続きそのものを拒否されたり、請求書の事業主証明欄への記入を拒否されたりすることがあります、その場合は、労働者が自分で請求書を作成し、所轄の労働基準監督署に提出します。請求書は労働局のホームページなどでダウンロードできます。
労災請求を行うにあたり、会社の同意や承認は絶対条件ではないため、就業先が請求書の事業主証明欄への記入を拒否した場合でも、その旨を説明すれば受理されます」
スキマバイトの注意点は?
Q.スキマバイトのような長期雇用契約を結ばない仕事に就く際の注意点について、教えてください。
木村さん「先述の内容と重なりますが、企業とスキマバイトに就く人が雇用契約を結んだ場合、労働者は労災だけではなく、労働基準法や最低賃金法など、労働者を守るための諸法律の適用を受けます。
具体的には、企業側は労働条件通知書の交付や法定労働時間(1日8時間・週40時間)の順守のほか、労働時間によっては仕事の途中で休憩時間を与えなければならず、法定労働時間以上の残業や深夜労働などを行った場合は、割増賃金を支払わなければなりません。このほか、業務指導や指示をきちんと行うこと、安全に働けることへの配慮なども必要です。
しかし、スキマバイトの処遇に対する認識が不十分な就業先が多く、『労働条件通知書(雇用契約書と兼ねている企業が多い)の交付がない』『仕事内容や労働時間、給与などが事前の情報と違う』『業務指導や教育、現場での指示が不十分もしくは仕事を教えてもらえない』などの原因でトラブルになることがあります。
就業先が労働条件通知書を交付しない場合は交付を求めることができるほか、仕事内容などに違いがあった場合や業務指導が不適切だった場合は、交渉や改善を求めることができます。ただ、単発や短期間で働く場合、労働者側が我慢してしまうケースが多いと思われます。
収入面から見ると、長期雇用ではないため、毎回求人に応募しなければならず、必ずしも希望の日時にバイトに就けるとは限りません。スキマバイトは、安定した収入を得たい人にとっては不安定な働き方といえるでしょう」
オトナンサー編集部
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