失敗して落ち込むと「なかなか立ち直れない」…実はうつ病？　心理カウンセラーが説く“心を立て直すヒント”

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オトナンサー
2025年8月7日20時10分

　仕事で失敗したり、悲しい出来事に遭遇したりしたときに落ち込んだ経験がある人は多いと思います。その際、すぐに立ち直る人もいれば、立ち直るまでに時間がかかる人もいるようです。SNS上では「落ち込むとなかなか立ち直れない」「クヨクヨしてしまう」などの声が上がっています。なかなか気持ちを切り替えられずにひきずってしまう人は、どのような心理状態なのでしょうか。病気の可能性も含め、心理カウンセラーのうるかすさんに聞きました。

自己嫌悪の感情に振り回されている可能性

Q.落ち込んだとき、すぐに気持ちを切り替えられずにひきずってしまう人の心理状態について、教えてください。

うるかすさん「すぐに気持ちを切り替えられない人の内面では、自己嫌悪の感情が湧いている可能性が考えられます。例えば何かミスや失敗に対して、自分がダメなのではとイライラしたり、悲しんだりして自罰的な傾向になっていることが考えられます。

さらに、『どうしてこのような傾向に自分が陥るのか』というようなことにさらに悩み、堂々巡りになってしまうこともあるかもしれません。一度こうなると、思考が内面や過去へ向かってしまうことも多く、ポジティブな方向にはなかなか向かいづらいものです。

自罰傾向を緩め、気持ちを切り替えることは、自分を甘えさせると言い換えることもできるかもしれません。しかし、自罰感情が強い人の中には、そもそも甘えるという行為に悪いイメージを持っている人もいます。甘えは自分の弱さや欲求を許容してもらう行動とされ、健全な人間発達には必要な欲求と言えます。過去に甘えることを禁止されていた経験がある場合などは、なかなか自罰傾向が緩まず、ネガティブな気持ちを切り替えられない場合もあるかもしれません」

Q.気持ちをなかなか切り替えられない人が切り替えられるようにすることは可能なのでしょうか。また、そのためにできる取り組みはあるのでしょうか。

うるかすさん「不可能ではないと思います。しかし、性格傾向を変えることは決して簡単なことではありません。自己嫌悪、自罰的な気持ちが一体どこから来ているのかを見つめ直すことも有効であると考えます。

例えば父親や母親が高圧的・支配的な環境で育つと、自分を許す、甘えさせるといった行動が取りづらくなることが考えられます。甘えられなさや自己嫌悪などはカウンセリングなどにおいても中心的なテーマになることがあり、その傾向に気が付くことはできても、行動の改善にまで到るためには年単位の関わりになることも珍しくありません。

普段から自分を許すことを習慣づけるためには、『セルフコンパッション』という自己肯定感を保つ手法や、『感謝の日記』というモチベーション向上の手法なども有効かもしれません」

Q.どうしても気持ちを切り替えられない場合は、どのように対処したらよいのでしょうか。病気の可能性や受診の目安も含めて、教えてください。

うるかすさん「もしどうしても切り替えられない場合は、誰かに話を聞いてもらうことも有効だと思います。ご自身の内面で完結させるのではなく、外部に思いを出してみることが大切です。紙に自分の思いを書き出してみる『ジャーナリング』を行うことで、状況が変わるかもしれません。ジャーナリングのコツは時間を決めて5分なり10分とにかく手を止めないで書き続けることです。

もし病気の可能性を考えるのであれば、ぐるぐると終わらない思考は『反すう思考』とも呼ばれ、うつ病の傾向が考えられます。長期間にわたる気持ちの落ち込みは、発達障害などの視点の切り替えの難しさが招いている可能性も考えられます。また、分かっているけど心配な気持ちが止められない、起こりえないことまで恐ろしく感じる『不安症』の症状の一つとして現れることがあります。さらに、他の病気が複合している可能性もあります。

受診の目安を挙げるのは難しいのですが、本人や周囲の日常生活に支障が出ているかどうかを基準に判断するのが良いと思います」

オトナンサー編集部