神戸市地下鉄海岸線が開業20周年 街をどう変えた?「幻の通勤路線」代替も経営厳しいワケ
- 乗りものニュース |

神戸市営地下鉄海岸線が2021年7月7日で開業20周年を迎えました。鉄道空白地帯を結ぶ新路線としてスタートし、震災を乗り越えて開業しましたが、現状はどうなっているのでしょうか。
神戸市バスの「ドル箱路線」引き継ぐ
神戸市営地下鉄の2本目の路線、海岸線が2001(平成13)年7月7日に開業して、20年を迎えました。先に開業していた西神・山手線に比べ、官庁街を通らない路線ですが、この20年で神戸の交通事情をどう変えたのでしょうか。
神戸市営地下鉄海岸線の5000形電車(画像:神戸市交通局)。
海岸線は神戸市長田区の新長田駅を起点に、同中央区の三宮・花時計前駅までを結ぶ延長7.9kmの路線です。途中、和田岬などの臨海工業地帯、ハーバーランドや中華街などの観光地を経由するなど、様々な顔を見せる路線となっています。
1989(平成元)年に運輸政策審議会の答申で「目標年次(西暦2005年)までに整備することが適当である区間」として「新長田~和田岬~三宮~新神戸」間が挙げられ、事前調査等を経て1993(平成5)年4月に運輸省(現在の国土交通省)が鉄道事業免許を交付。翌1994(平成6)年4月に着工し、途中、阪神淡路大震災の影響による2年4ヶ月の工期延長を経て、2001年7月7月に開業しました。震災の影響もあり、事業費は当初計画より約 647億円増額した2350億円となっています。
海岸線は三宮・花時計前~ハーバーランド間で、JRの三ノ宮~神戸間、阪急・阪神の神戸三宮~高速神戸間とそれぞれ並行しています。ハーバーランド~新長田間は臨海部の鉄道空白地帯を結び、住民と工場従業員の両方の足となっています。
海岸線の開業以前は、朝夕のラッシュ輸送はJR和田岬線、それ以外の終日の沿線利用者の移動手段はもっぱら市バスでした。
JR和田岬線は和田岬駅と兵庫駅を結ぶ1駅だけの「山陽本線の支線」ですが、列車が運行されるのは朝夕のみ。日祝日に至っては朝夕それぞれ1往復しか運行されない「幻の鉄道路線」の様相で、今でも日常生活とはほぼ無縁のダイヤになっています。その代わりにかつては市バスが終日頻発運転を行っており、3・10・81系統などが中心街とを結ぶドル箱路線となっていました。海岸線が開業した現在も、長田区の山手や新開地駅を経由して和田岬へ向かう3系統が、朝の7・8時台に計23本も運行されています。
利用客には駅ごとに大きく偏り
駅別に乗車人員(2019年度)を見ると、最多が和田岬駅(11,090人)、次いで起終点の新長田駅(9,538人)、三宮・花時計前駅(8,434人)、そのあとにハーバーランド駅(7,951人)となっています。最も少ないのは駒ヶ林駅で、1日わずか1,480人。次いで刈藻駅(1,857人)、みなと元町駅(1,862人)、旧居留地・大丸前駅(2,000人)となっています。
地下鉄海岸線と近接する他の鉄道路線(国土地理院の地図を加工。阪急や神戸電鉄等は割愛。阪神は元町~西代間は「神戸高速線」となっている)。
三宮・花時計前駅はJRの三ノ宮駅、阪急・阪神の神戸三宮駅から南に300mほど離れており、JRに乗り換える場合は、同じく新快速の停車する神戸駅に近接するハーバーランド駅から乗り換えるほうが便利となっています。
以上を鑑みると、海岸線は結局、鉄道空白地帯である兵庫区の臨海地帯の利用者のための路線で、あわせて繁華街まで乗り換え無しで移動できるよう、ハーバーランドから三宮まで伸ばした、といった見方をすることができます。
厳しい経営状況の打開なるか
海岸線は神戸市の中心市街地を貫く路線であるにもかかわらず、利用客数は当初から目標値を下回り、2019年度も約34億円の赤字となっています(ただし、西神・山手線が約49億円の黒字を計上しているため、地下鉄事業全体では約15億円の黒字)。
開業5周年に際して2007(平成19)年に市が発表した報告書では、利用者が伸び悩んだ要因として、自動車利用者が想定より多く地下鉄利用への転換人口が少なかったこと、沿線人口や沿線事業所の就業人口が減少傾向にあること、短距離の利用者が地下鉄ではなく徒歩やバス、自動車を選択している現状を挙げています。
これは先述の利用者数からも、「和田岬周辺の工場通勤者を中心に、新長田・ハーバーランド・三宮・花時計前の各駅で他線から乗り換える」といった利用が多く、日常の移動手段として駅間を利用する需要は少ないことが伺えます。
市では「海岸線ランニング収支の黒字化に向けたより一層の改善」を財政目標に挙げていますが、前述のように、海岸線が旅客を独占するエリアが兵庫区の臨海地帯のみと小さいこと、他路線との乗り換えが不便なことなどの地理的要因も大きく、具体的な経営対策としては集客増のキャンペーン実施や駅広告収入の強化などにとどまっており、抜本的な打開策を打ち出せていないのが現状です。
とはいえ、バス中心の交通を鉄道へ転換したこと自体は、渋滞の緩和や、温室効果ガスの排出量削減など、社会全体に対する一定のプラス要素として見ることもできます。
ICカード利用拡大に伴い、改札機や券売機など駅施設の簡略化が各地で進むなど、ランニングコスト削減に寄与する新技術も普及しつつあります。また、現在進められている三宮駅周辺の再開発事業では、三宮・花時計前駅も事業範囲に含まれ、周囲の「三宮駅」全体の一体化を図るとされています。あわせて、「地下鉄に乗るくらいなら最初からバスやJR・阪神を使おう」と考える利用者をどう引き込んでいくかが、引き続き鍵になっていきそうです。
※一部修正しました(7月8日10時52分)。
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