「次世代感あふれるのに…」新型戦闘機の採用で敗れたノースロップ・グラマン 実は1990年代にも!? “美しき敗北機”の正体とは
- 乗りものニュース |

スペックは高かったものの……
ノースロップが開発したアメリカ空軍の試作ステルス戦闘機「YF-23」(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館 )
アメリカ国防総省は2026年9月30日、F/A-XXプログラムをボーイングと締結しました。F/A-XXは、2030年代に耐用年数を迎えるF/A-18E/F「スーパーホーネット」やE/A-18「グラウラー」の後継機としてアメリカ海軍が計画している戦闘機です。前述のボーイングとノースロップ・グラマンが最終候補に残っていました。
なお、ノースロップ・グラマンは候補が最終決定する以前の2026年4月20日に、F/A-XXのイメージデザインと思われるCGを公開。エアインテーク(空気取り入れ口)と思われるものが、機体上部の「肩」にあたる位置に設置されている姿など、珍しい構造が話題になりました。実は同社、正確には前身のノースロップになりますが、1990年代に同じように、当時としては見慣れない“未来的”なデザインの機体をアメリカ空軍の新型戦闘機の選定に際して提案し、敗れたことがあります。YF-23「ブラック・ウィドウII」です。
同機は、1990年8月27日に初飛行しました。本格的なステルス戦闘機としてノースロップ(現:ノースロップ・グラマン)が開発した機体で、エドワーズ空軍基地を飛び立つと、1時間弱飛行したのち帰還しました。この機体は、1980年代初頭にアメリカ空軍によって提案された、次世代戦術戦闘機の開発計画である「ATF計画」により開発されました。いわば、試作ステルス戦闘機です。
そもそも、敵のレーダーに察知されずに攻撃目標へ接近する「ステルス機」の研究は、第二次世界大戦のころから進められていました。その後、コンピューターの登場により実現の目途が立ったことで、ロッキード社(現:ロッキード・マーチン)が実用化します。こうして生まれたのが、世界初のステルス軍用機であるアメリカ空軍のF-117「ナイトホーク」です。
ただし、同機は対地攻撃機であったため、次期戦闘機にはこのステルス性能を付与すべく開発が始まります。これが、現在では「第5世代ジェット戦闘機」と呼ばれる機体群につながっていきます。そして、このときYF-23の競合相手となったのが、まさにその第5世代ジェット戦闘機の運用の始まりを告げた、F-22「ラプター」と呼ばれるロッキードのYF-22でした。
性能はかなり優れていた! しかし採用に至らなかった背景とは?
YF-23の一見してわかる大きな特徴は「尾翼がV字型」という点です。通常の戦闘機の場合、垂直尾翼と水平尾翼が別個にあることが多いですが、YF-23では両者が統合され、一対の尾翼が斜めに取り付けられていました。また、機体のアウトラインは極力、平行線を意識した形状とされたため、競合機のYF-22と比べると平べったいデザインとなっており、溝状のジェットノズルも相まって、魚の「エイ」を思わせる形状でした。
後ろからみたYF-23の姿(画像:アメリカ空軍)
この形状を活かし、スピードとステルス性能は、ロッキードのYF-22を上回っていたといいます。レーダーに映りにくい形状のほかにも、特に熱源から探知されることに注意を払っており、排気口周りには、高温の排気が直接、赤外線捜索追尾装置に観測されないよう「冷却デッキ」が設置されています。ただ、この構造により、次世代戦闘機に搭載予定だったプラット&ホイットニー F119-PW-100の二次元推力偏向装置は使用できないようになっていました。エアショーなどでF-22がアクロバット機のような機動ができる理由のひとつとして、二次元推力偏向装置の存在がありますが、それでも“実戦での”機動性に関しては、YF-23のほうが評価が高かったといわれています。
ただ、前述のように、最終的に同機はYF-22に敗れることになります。採用に至らなかった理由の詳細は公表されていませんが、両機とも要求性能は満たしていたとされており、アメリカ空軍は生産性や運用コストなどの観点から、オーソドックスな形状をしたYF-22のほうを採用したといわれています。また、この採用の判断にはロッキードの経営危機もあったという噂もあります。そのため、ノースロップでは「機体では勝っていたが、ロッキードを救うために敗北した」とみなしていた人もいたといわれています。ステルス機能を有する新技術を取り込んだ軍用機に関しても、ノースロップは同機以前にB-2「スピリット」の開発・生産を受け持っており、比較的安定した立場にありました。
ちなみに、今回のF/A-XXプログラムに関してもノースロップ・グラマンはボーイングに敗れましたが、ステルス爆撃機であるB-21「レイダー」を100機以上生産する契約を結んでおり、ステルス軍用機の生産においては安定した立場を確保しています。
YF-23は試作のみで終わりました。しかし、その特徴あるシルエットゆえにファンが多いことから、戦闘機を題材としたゲームでは幾度となく登場しており、2026年10月2日発売の『ACE COMBAT 8: WINGS OF THIEVES(エースコンバット8 ウイングス・オブ・シーヴ)』でも登場が公表されています。
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