リニアはどれくらい「速く」「安く」乗れるのか? 開業による“副産物”とは?
- 乗りものニュース |

約4兆円の工事費増 どう影響する?
2025年11月6日~7日にかけて、JR東海は山梨県の「山梨リニア実験線」にて、「リニア中央新幹線(以下、リニア)」の一般向け体験試乗会を開催しました。リニアは新幹線より“速く、安い”鉄道となることが期待されていますが、実際にはどうなるのでしょうか。
走行試験を行うリニア中央新幹線(山梨県立リニア見学センター公式Xより)
リニアについては先ごろの2025年10月29日、品川~名古屋間の総工事費が、従来予測から約4兆円増の11兆円になる見通しが公表されたばかりです。多くの人が注目しているのは「結局いつ乗れるのか」「運賃はどのくらいになるのか」という点でしょう。
純粋な速さでみるなら当然、500km/h超での運行を見込んでいるリニアの圧勝です。品川〜名古屋間の移動時間は、現在の新幹線「のぞみ」が約87分なのに対し、リニアは最短40分と半分以下まで短縮されます。
ただし注意すべきは、リニアは駅が地下深くに設置されるという点です。あくまで乗車時間“のみ”を比較した場合はリニアに分がありますが、ほかの新幹線や在来線に乗り換える場合は、その所要時間や移動の労力も考慮に入れる必要があります。
次に安さについて。JR東海は当初、リニアの運賃を品川〜名古屋間で「のぞみ指定席+700円」、品川〜新大阪で「+1000円程度」と想定していました。もし、本当にこの程度の差額なら充分に「安い」といえる水準ですが、前述の工費増額の見通しが実際の運賃に転嫁される可能性もあり、まだまだ断言はできません。
運賃についてJR東海は現在、「今後、リニア中央新幹線の運行形態、東海道新幹線との連携、乗り継ぎ、さらには開業時期の経済情勢や他の競合する交通機関の状況などさまざまな事柄について検討したうえで、開業が近づいた時点で決定します」と説明しています。
むしろリニア開業で「新幹線」が便利になる?
では、リニアが開業すると、私たちの鉄道利用のスタイルはどう変わるのでしょうか。
リニア開業はむしろ、新幹線の利便性を高める?(画像:写真AC)
現在、東海道新幹線は輸送能力の限界に近い過密ダイヤで運行されています。特に東京~新大阪間を結ぶ「のぞみ」が最優先され、途中駅に停車する「ひかり」「こだま」の利便性には、制約があるのが現状です。
しかしリニアが開業すれば、新幹線への需要の一部がそちらへと転換するため、新幹線の線路やダイヤに余裕が生まれます。
国土交通省の試算によると、東京~名古屋・大阪間での新幹線へのニーズは、リニア開業後に約3割減少する見込み。実現すれば、これまで満足な本数を走らせられなかった「ひかり」「こだま」の増発が可能になり、特に静岡県内の駅をはじめ、リニアが停車しない地域での利便性の向上が期待できます。リニア開業の恩恵は、より速い列車が誕生することだけではないのです。
リニアと新幹線については、単純に「どちらが安くて便利なのか」と比較するより、「リニア開業によってどんな恩恵があるのか」という観点で見ていく必要があると考えます。高速鉄道の未来は「リニア一択」ではなく、目的や価値観に応じ、両者をかしこく使い分ける時代がやってくるでしょう。
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