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「日本一難しい空港、でも飛行機安全に降ろす」どうやって?→その裏側がスゴすぎる 「ここまでやるか!」な八丈島空港…でもなぜ?

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データ上も「難しい」とされる

「ANA(全日空)では空港ごとに難易度のランク分けを行っていますが、世界中の就航空港の中で唯一、最も難しい『カテゴリーデルタ』に分類されている」――そう語るのが「八丈島空港」です。“日本一発着が難しい”とされるこの空港では、どのように旅客機の安全を確保しているのでしょうか。実際に同空港で働くスタッフに話を聞きました。

Large figure1 gallery6八丈島空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 同空港で航空機の運航支援業務などを担う八丈島空港ターミナルビルの担当者は、難しさの理由を次のように説明します。

「(八丈島空港の着陸が難しい)一番の理由は気流の悪さです。両側を山に挟まれた地形で、飛行機は基本的に向かい風で着陸しますが、八丈島は360度どの方向から吹く風でも着陸に制限値が定められています。つまり、どの方角の風でも気流が乱れやすいのです。長年のデータにより『どの方向・どの風速で危険になるか』という知見はありますが、パイロットには高度な操縦技術が求められます」

 その一方で、ANAの塩入康夫・八丈島空港所長をはじめ、スタッフが掲げているコンセプトが「1便入魂」です。

 八丈島空港のANA便は1日2往復のみで、本土とのアクセスは片道約10時間20分かかる海路のほかありません。厳しい環境下で引き返しや欠航となれば、島民や往来する人々の“生活の足”が絶たれかねません。

 こうした状況でも「可能な限り八丈島便を発着させる」ため、同空港のスタッフはさまざまな独自の取り組みを行っています。

「八丈島は『島曇り(しまぐもり)』といって、霧や低い雲が空港を覆ってしまう(編注:結果、視程が低く発着が難しい。さらに八丈島空港は大空港のような視界が悪いときに旅客機を誘導するシステムもない)現象がよく起こります。ただ、これはちょっとした風の変化で雲が上がったり下がったりするんです。私たちは、これをむしろ”チャンス”と捉えています」

「日本一難しい空港」で講じられる独自対策とは

 担当者は「チャンス」という言葉の意味について、次のように話します。

Large figure2 gallery7インタビューに応えた八丈島空港のスタッフ。一番左がANAの塩入康夫・八丈島空港所長(乗りものニュース編集部撮影)。

「一度、視界不良で着陸できずにゴーアラウンド(着陸やり直し)した場合、他の空港ならそのまま出発地へ引き返すことが多いです。しかし私たちはパイロットに『少しお待ちください』と伝え、着陸のチャンスを探ります。運航支援の担当者が実際に車で滑走路の端まで走り、自分の目で雲の動きや風の変化を10分ほど確認するのです。その情報をもとに、『あと15分後にアプローチ(着陸進入)してください』といった具体的な提案をします。これをやっているのは、全国でも私たちだけではないでしょうか」

 ただ、実はこの対応は「マニュアルにあるわけではありません」とも。そこまでする理由を担当者は次のように説明します。

「この飛行機を欠航させてしまうと、病院の予約に間に合わないお客様がいるかもしれない。安全は絶対ですが、20分待てば降りられるチャンスがあるなら、そのワンチャンスにかけたい。その一心で、毎日オペレーションにあたっています。八丈島はANAが就航する島の中では人口が少なく、規模が小さい分お客様の顔がよく見えます。行きつけのレストランのオーナーさんだったり、本当にご近所付き合いのような感覚です。だからこそ、安全運航に対しても『自分の身内が乗っている』」という感覚がより強く、一歩踏み込んでいる実感がありますね」

 2025年はANAの羽田~八丈島空港が就航して70周年。塩入所長は「『日本一難しい空港』と言われる中で、お客様が亡くなるような事故は70年間一度もありません」と話します。

「これは、先人たちが安全確保に対して非常に慎重だったからに他なりません。そして培われてきた知恵や安全への魂が、後世にちゃんと伝わっていると感じます。私もその良き習慣を変えるべきではないと思っていますし、目には見えない部分で皆が心に持っている安全への強い思いが、この70年間の無事故につながっているのだと確信しています」(塩入所長)

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