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「レバノン脱出」自衛隊の輸送機に乗せられるのは“日本人だけ?” 変化した「在外邦人退避」 苦い経験を活かせるか

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  • 乗りものニュース
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レバノン情勢の急変を受けて、航空自衛隊の輸送機2機がヨルダンとギリシャに向かいました。情勢が悪化した地域では自衛隊による在外邦人の退避が行われますが、その根拠となる法律は3年前の苦い経験を受けて改正されています。

「レバノン危機」空自輸送機が日本を出発

 2024年10月3日、在レバノン邦人退避に備えるため、航空自衛隊のC-2輸送機2機が鳥取県にある美保基地を離陸しました。2機のC-2は、これからそれぞれヨルダンおよびギリシャに向けて飛行し、そこで在レバノン邦人の退避が行われる場合に備えて待機します。

Large 241003 yusou 01航空自衛隊のC-2輸送機(画像:航空自衛隊)。

 今回の動きは、レバノンを拠点に活動するイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」とイスラエルとの間で、武力衝突が発生したことに端を発しています。このため、レバノンでは民間航空機の運行に制約が生じており、民間人の国外退避が難しくなっているのです。

 こうした状況を受けて、防衛省は9月27日に、航空自衛隊輸送機の国外待機を発表。これを受け、航空支援集団司令官を指揮官とする在レバノン共和国邦人等輸送統合任務部隊が編成され、各種調整が進められてきました。
 
 仮に情勢がさらに悪化し、在レバノン邦人の国外退避が必要となった場合には、C-2輸送機による「在外邦人等の輸送」が実施されることになります。その根拠となるのが、自衛隊法第84条の4の規定です。
 
 海外における災害や大規模な騒乱などにより、日本人の生命や身体の保護が必要となった際に適用されます。原則として、そうした状況ではまず民間航空機などによる自主的な退避などが優先されますが、それが不可能となった場合には自衛隊の出番となる、というわけです。

 自衛隊による在外邦人等輸送は、緊急時に在外邦人輸送を行うことを想定していた政府専用機の運用が、当時の総理府から防衛庁へと移管されたことを受けて、1994(平成6)年の自衛隊法改正によって初めて盛り込まれたもの。当時は自衛隊法第100条の8に規定されていました。ただし、この規定は自衛隊法の章立てでいうと第8章「雑則」というところに置かれる、いわゆる「付随的任務」でした。

アフガニスタンの教訓を経て法改正

 付随的任務とは、本来は自衛隊の任務ではないものの、自衛隊の能力を活用し、その活動に支障が出ない範囲で実施する、いわば「片手間」な活動です。つまり、当時は自衛隊にとって在外邦人等の輸送は本来の任務ではなかったわけです。

しかし、現在では法改正を受けて、在外邦人等の輸送は第6章「自衛隊の行動」に置かれ、自衛隊の本来任務という位置付けになっています。

Large 241003 yusou 022023年5月、邦人の退避のため、スーダンの東に位置するジブチへ向かったC-130輸送機(画像:防衛省統合幕僚監部)。

 実はこの在外邦人等の輸送は、2021年に行われた在アフガニスタン邦人等輸送に際して対応が遅れたり、実際には数人しか輸送できなかったりと、思うような行動がとれなかったことから、2022年に自衛隊法の改正へ至っています。改正により、どのような活動ができるようになったのでしょうか。

 まず、輸送を行う装備については、従来は原則として政府専用機を用い、それが困難な場合には自衛隊の輸送機や艦艇を用いることとされていました。しかし、これまでの活動実績や利便性などから、現在ではこの規定が削除され、輸送機や艦艇、ヘリコプターなどを必要に応じて利用できるようになりました。

 また、輸送対象者に関しても、それまでは邦人(日本人)に限定され、そのほかの外国人などは同乗が許されるだけでした。しかし、現在ではこの「邦人」の定義を大幅に拡大し、以下の人物も輸送が可能となっています。

(1)邦人の配偶者または子供である外国人
(2)名誉総領事、名誉領事、在外公館の現地職員である外国人
(3)現地で活動する独立行政法人の外国人職員
※外務大臣からの依頼などがあれば、これに該当しない外国人も引き続き同乗させることができる

輸送の安全を巡る改正

 さらに、在外邦人等の輸送を実施する際の安全性についても法改正が行われました。従来の規定では、輸送を行うに際して、防衛大臣が予想される危険やこれを避ける方策を外務大臣と協議し、その結果「輸送を安全に実施することができると認めるとき」に実施できるとされていました。

 しかしこれでは、あたかも民間機の運用が可能といった安全な状態でしか輸送任務を実施できないのではないかという誤解を招くおそれがありました。そのため、現在では「(防衛大臣が)当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、『当該方策を講ずることができると認めるときは』(筆者強調)」輸送を実施できるという規定に改められました。
 
 つまり、危険を減じるような方策をとれるのであれば、輸送を実施できるというわけです。ちなみに、具体的には現地の空港の安全確保や自己防護装置(ミサイルを回避するチャフやフレア、さらに機体への防弾板付加)などがこの方策に含まれるとされています。

 こうした法改正を受けて、2023年5月には南スーダンの情勢悪化により実施された在外邦人等輸送では、アフガニスタンの際と比べてスムーズに措置を実施できたという実績もあります。今回のレバノンにおいても、いざという時に自衛隊は迅速に措置を実施することができるでしょう。

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