自衛隊も使う最強戦闘機「F-35」の隠れたアキレス腱とは? “解決のための重要拠点”じつは日本にありました
- 乗りものニュース |

最強ステルス機は「半分しか飛べない」ハイテクゆえの悩み
航空自衛隊も導入を進める最新鋭戦闘機「F-35ライトニングII」。敵に見つからずに攻撃できる高いステルス性能はもちろん、アフターバーナーを使用せずとも超音速飛行が可能なスーパークルーズ能力や、高度な「センサー・フュージョン」(情報統合能力)、強力なネットワークと電子戦能力が標準で搭載されており、従来の戦闘機と比べて段違いの高性能を誇ります。
航空自衛隊のF-35A戦闘機(画像:写真AC)
しかし、そのような華々しいカタログスペックとは裏腹に、現場では意外な悩みを抱えています。
それは「稼働率の低さ」です。
アメリカ会計検査院などの報告によると、アメリカ空軍におけるF-35Aのミッション可動率は、2023年度の実績で約51.9%に留まっています。
これは、国防総省が目標とする80%~90%という数値には遠く及ばず、単純計算で「2機に1機は万全な状態で飛べない」という深刻な状況です。
さらに悩みの種となっているのが、維持費が過去5年で44%も増大しているにもかかわらず、信頼性不足から飛行時間を削減せざるを得ないという「負の連鎖」に陥っている点です。
なぜ、最新鋭の機体がこれほど飛べないのでしょうか。その原因のひとつは、皮肉にも機体を管理するために開発された最新の整備システムにありました。
F-35には「アリス(ALIS)」と呼ばれる自動兵站(へいたん)情報システムが搭載されています。これは機体のあらゆるデータを収集し、故障を予知して必要な部品を自動で発注する、いわば「AIドクター」です。
しかし、このシステムは初期に高い誤検知率が問題視されました。
現在は、より軽量で高速なクラウドベースの新システム「オーディン(ODIN)」への移行が進められていますが、この移行作業自体が遅れており、データの不整合や使い勝手の悪さが現場の整備員の負担となっています。
システムだけでなく、物理的な「モノ」の問題も深刻です。
「部品が届かない」を解決する日本の拠点
加えて、稼働率低下を招いているもうひとつの大きな原因が、世界規模での「部品不足」と「修理の遅れ」です。
アメリカ空軍のF-35A「ライトニングII」(画像:写真AC)
F-35は、開発・製造に参加した国々で部品を融通し合う仕組みを採用しています。しかし実際には、部品の修理に時間がかかりすぎており、在庫が枯渇する事態が頻発しています。
部品の修理にかかる時間は目標の60日に対し、2023年時点で平均141日に達しているようです。
目標の2倍以上の時間がかかっているため、修理待ちの部品が山積みになり、結果として機体が飛べない時間が長引いている模様です。
このように、大きな問題を抱えているF-35戦闘機ですが、アジア太平洋地域において同機を運用するために重要な役割を担っているのが、日本にある「修理工場」の存在です。
2020年7月から、愛知県豊山町にある三菱重工業の小牧南工場が、アジア太平洋地域の「地域整備拠点(MRO&U=整備・修理・オーバーホールなどの総称)」として稼働を開始しました。
ここは、航空自衛隊の機体だけでなく、在日米軍などが運用するF-35の重整備(車検のような大規模整備)も請け負うことができる拠点です。
部品不足や修理遅延という世界的な課題がある中で、自国内に高度な整備能力を持つ拠点が稼働していることは、日本の防衛力維持にとって極めて大きなアドバンテージとなります。
ただし、この拠点の運用には難しい側面もあります。
計画上はアジア太平洋地域全体をカバーすることになっていますが、例えば韓国軍の機体を日本で整備することに関しては、日韓の政治的な背景もあり、実際の運用は制限されているとみられます。
そのため、オーストラリアやアメリカ本土の拠点も活用した複雑な運用が行われているのが実情です。
ハイテクの塊であるF-35は、空を飛ぶだけでなく、地上での維持や整備もまた「新次元」の戦いです。システム刷新と国内拠点の活用により、最強の翼をいかに維持していくか。地道な戦いはこれからも続きます。
※一部修正しました(12月15日午後6時40分)。
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