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20歳ひきこもり長女、発達障害で「美容師と話せずカット断念」 「障害年金」請求には高い壁…家族救った社労士の“一手”

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精神疾患で自宅にひきこもっている人が障害年金を請求する際、どのような手続きが必要?(画像はイメージ)
精神疾患で自宅にひきこもっている人が障害年金を請求する際、どのような手続きが必要?(画像はイメージ)

精神疾患で自宅にひきこもっている人が障害年金を請求する際、どのような手続きが必要?(画像はイメージ)精神疾患で自宅にひきこもっている人が障害年金を請求する際、どのような手続きが必要?(画像はイメージ)

 筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気などで就労が困難なひきこもりの人を対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。

 浜田さんによると、ひきこもりの人の中には発達障害やうつ病などの精神疾患を抱え、障害年金の請求を検討する人もいるといいます。ただし障害年金では、障害等級表で定められた障害状態に該当していないと受給が認められません。

 精神疾患の場合、どのような判断基準があり、どのような方法で障害状態を証明するのでしょうか。20歳のひきこもりの子どもがいるある家族のケースについて、浜田さんが紹介します。

日常生活の困難さを主張することが大事

 20歳の大橋美緒さん(仮名)は高校2年生の時に不登校となり、その後はひきこもりのような生活を続けてきました。美緒さんは不登校になった17歳ごろに精神科を受診。検査の結果、発達障害があることが分かりました。現在も受診を続けていますが、ひきこもり状態は改善せず、就労も困難な状態にあります。

 そのようなこともあり、20歳を迎えた美緒さんは、障害基礎年金を請求しようとしました。

 しかし、そこで思いもよらぬ事態が発生してしまったのです。困った美緒さんの母親は私のもとへ相談に訪れました。

 一体何があったのか、私は母親から事情をお聞きしました。すると、次のようなことが分かりました。

 美緒さんは母親に付き添われて精神科を受診。その際、診察室で母親が主治医に診断書作成の依頼をしたところ、文書を渡されました。主治医からは「問診にあまり時間が取れないので、まずはご本人から文書を提出してもらい、それを参考に診断書を作成します」との説明があったといいます。その文書は日常生活の困難さを自由記載する形式になっていました。

 その後、自宅でその文書に目を通した母親は、内容が複雑で困惑したそうです。

「何をどのように書けばよいのか…」

 文書を前に母親は頭を悩ませました。

 母親からそこまで話を聞き取ったところで、私は「そもそもなぜ医師に日常生活の困難さを伝えなければならないのか」という理由を説明しました。

「障害年金の請求で提出する精神疾患用の診断書には『日常生活能力の判定』という欄があります。そこで『本人の日常生活がどの程度困難なのか』を証明することになっています。ここでいう日常生活能力とは次の7項目になります」

(1)適切な食事
(2)身辺の清潔保持
(3)金銭管理と買い物
(4)通院と服薬
(5)他人との意思伝達および対人関係
(6)身辺の安全保持および危機対応
(7)社会性

 私は説明を続けました。

「障害年金では、本人の障害状態が重くなければそもそも受給は認められません。『本人の障害状態はどのくらい重いのか』ということは、診断書にある『日常生活能力の判定』で証明します。よって診断書は障害年金の受給を左右する重要な書類といっても過言ではありません。そのようなこともあり、医師は診断書を作成するにあたって日常生活の困難さを口頭または文書で確認する必要があるのです」

「主治医に日常生活の困難さを伝える重要性は理解できました。とはいえ、それぞれの項目で何をどのように書けばよいのかまでは分かりません。結局どうすればよいのでしょうか」

 母親は不安そうな声で言いました。

まずは「本人の生きづらさ」を洗い出すところから開始

 専門家ではない家族が日常生活の困難さをまとめるのは確かに難しいかもしれません。そこで私は次のように言いました。

「まずは『お嬢さまが発達障害でどのような生きづらさを抱えているのか』を洗い出してみましょう。例えば『コミュニケーションが苦手』『いつもと違う状況になるとパニックになってしまう』『整理整頓が苦手』『不注意が多い』など、発達障害の特性と感じられる出来事はありませんか」

「そうですね…」

 母親はしばらく考え込んだあと、次のような話をしました。

 美緒さんはコミュニケーションを取ることが最も苦手だそうです。それが原因で高校も不登校になってしまったほどです。急に頭が真っ白になり、会話を続けることができなくなってしまうといいます。

 例えば、自宅にひきこもる前に美容室に行った際、美容師とコミュニケーションが取れず髪を切らずにそのまま帰ってきてしまったことがありました。

 また、ほぼ同時期に近所のスーパーで買い物をした際、買った商品をマイバッグに入れてほしいと店員に伝えられず、商品を両手で抱えて持ち帰ってきたこともあったということです。

 母親に促され、美緒さんはアルバイトの面接を受けたこともあります。しかし緊張のあまり体が固まってしまい言葉が出ず、質問に答えることができませんでした。その結果不採用となり、美緒さんは大きなショックを受けてしまいました。

 そのようなことで他人と関わることを諦めてしまった美緒さん。SNSをすることもなく、友人、知人に連絡をすることもありません。

 唯一話ができるのは美緒さんの母親だけ。しかし会話がかみ合わず、美緒さんも嫌気が差すのか「分かったよ。もういい!」と途中で会話をやめてしまうことも多いそうです。

 これらの話は、日常生活能力の「(5)他人との意思伝達および対人関係」に該当します。母親から簡単に聞き取っただけでも、美緒さんはコミュニケーションにかなりの困難さを抱えていることがうかがえました。

 面談の最後に私は言いました。

「今のようなエピソードをたくさんお話しいただければ、私の方で分類して文書にまとめることもできます。お嬢さまのエピソードを引き出すために、まず私が質問をしてそれに回答するといった方法を繰り返せば、文書を完成させることができるでしょう。ただし、それをするためにはお嬢さまの同意を得る必要があります」

「そうしていただけると大変助かります。私だけで文書の作成はできそうもありませんので、とても心強いです。さっそく長女に事情を説明してみます」

 面談後、美緒さんから同意を得た私は、さっそく母親と一緒に日常生活の困難さをまとめる作業に入りました。母親とのやりとりはメールで行い、無事に文書を完成させることができました。

 医師に提出する文書が完成した後、私はさらに別の書類を作成しました。

 障害年金では「病歴・就労状況等申立書」という書類の提出も必要になるからです。病歴・就労状況等申立書には、診断書では書き切れない本人の状態を記入することになります。

 発達障害がある場合は、病歴・就労状況等申立書は幼少期から現在までの状況を記載するルールになっています。

 これだけ聞くと大変そうですが、私が日常生活の困難さをまとめる際は「(1)私が母親を通じて美緒さんに質問する」「(2)美緒さんに回答してもらう」「(3)その回答をもとに私が文書を作成する」という手順で行います。従来のやり方とあまり変わらないため、病歴・就労状況等申立書の作成は、美緒さん家族にとってもそれほどハードルが高いものではありませんでした。

 そうこうするうちに診断書が完成。私はその他の必要書類をそろえ、障害基礎年金の請求をしました。その結果、美緒さんは無事に障害基礎年金の2級が認められました。

 障害年金では「その障害により本人の日常生活がどのくらい困難なのか」を主治医に伝えることがとても重要になります。

 本人や家族だけで伝えることが難しそうな場合、専門家である社会保険労務士の力を借りることも検討してみるとよいでしょう。

社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也

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