「こたつ」で寝ると風邪をひくって本当? 医師に聞いてみて分かった“恐ろしい事実”
- オトナンサー |

朝晩を中心に冷え込みが厳しくなり、こたつを使っている人は多いと思います。体が温まるため、ついこたつに入ったまま寝落ちしてしまうことがありますが、林外科・内科クリニック(福岡県宗像市)理事長で医師の林裕章さんは、こたつに入って寝るのは「百害あって一利なし」だと話します。
そもそも、こたつで寝ると風邪をひくといわれていますが、本当なのでしょうか。こたつに入って寝た場合のリスクについて、林さんに聞きました。
自律神経の混乱を招く原因に
Q.医学的立場からみて、こたつで寝ると風邪をひくのは事実でしょうか。
林さん「はい、事実です。非常に風邪をひきやすい状態になります。単に『体が冷えるから』だけではなく、体温調節と免疫機能という、生理学的なメカニズムが大きく破綻することが主な理由です。詳しい理由は次の通りです」
■体温調節の失敗と免疫低下
人間は深い眠りに入るとき、手足から熱を逃がして、脳や内臓の温度である「深部体温」を下げる必要があります。しかし、こたつの中では熱が逃げ場を失い、体温が下がらないため、脳が「まだ活動中だ」と勘違いして深い睡眠(ノンレム睡眠)に入れません。また、不自然な姿勢や途中覚醒、浅い睡眠になりやすく、短期的に免疫の働きが乱れやすいです。睡眠不足の状態は、直接的に免疫力を低下させます。
■脱水による粘膜の乾燥
こたつの中は思いのほか高温で、寝ている間に大量の汗をかきます。その量はコップ数杯分といわれています。これにより「脱水症状」が起き、喉や鼻の粘膜がカラカラに乾きます。粘膜はウイルスを防御するとりでですが、乾燥するとその機能が失われ、ウイルスの侵入を許しやすくなります。
■「寝汗」のち「急冷」
大量にかいた寝汗は、こたつのスイッチが切れた後や、寝返りで布団がはだけた瞬間に一気に冷やされます(気化熱)。この急激な温度変化に自律神経がついていけず、体調を崩す原因となります。
Q.「頭寒足熱は健康によい」といわれますが、実際のところはどうなのでしょうか。
林さん「言葉自体は正しいですが、こたつ寝は『頭寒足熱』の限度を超えています。一般的に言われる頭寒足熱は、足を温めることで全身の血巡りを良くし、リラックスして入眠しやすくする効果があります。しかし、こたつ寝には次のような落とし穴があります」
■「足熱」ではなく下半身が過熱された状態に
こたつは「温める」を通り越して、下半身を過度に加熱している状態です。一方で上半身は室温にさらされて冷たいままです。
■自律神経の混乱
こたつ寝により、上半身は寒く、交感神経が優位になり血管が収縮する一方、下半身は暑いため、副交感神経が働こうとして血管が拡張するという、チグハグな情報が脳に送られます。これにより自律神経のバランスが崩れ、起床時の激しい疲労感やだるさにつながります。
Q.こたつで寝ることと布団で寝ることには、どのような違いがありますか。
林さん「人体への影響という観点から、リスクにおいて違いがあります」
■布団(寝具)で寝るメリット
・全身が比較的均一な温熱環境になりやすい。
・寝返りしやすく、筋肉がほぐれ、睡眠の深さが確保されやすい。
・乾燥、脱水、局所の過度な加熱が起こりにくい。
■こたつで寝ると起こりやすいこと
・下半身の過熱、上半身の冷え(温度ムラ)。
・口呼吸や喉の乾燥、汗による脱水が起こり、血栓などのリスクになる。
・姿勢が悪くなり、首、肩、腰などの関節や筋肉が固まる。
・低温やけどやかゆみ、乾燥など、皮膚トラブルの原因になりやすい。
・体質や状況次第では、のぼせや動悸(どうき)、気分不良になりやすい。特に飲酒後は危険。
・途中覚醒が増え、疲労が蓄積する。
特に高齢者や高血圧の人にとって、脱水による血栓は脳梗塞や心筋梗塞の引き金となり、命に関わるため、こたつ寝は絶対に避けるべきです。
Q.うっかりこたつで寝てしまった場合、起床後に行った方がよいことはありますか。
林さん「こたつで寝てしまったときは、次の3ステップを実践し、体の調子を整えてください」
(1)まずは常温の水やスポーツドリンク、経口補水液を飲む
体は脱水状態(軽い熱中症のような状態)です。冷たい水は胃腸に負担をかけるので、常温の水やスポーツドリンク、経口補水液で、失った水分とミネラルを補給してください。
(2)熱めのシャワーかお風呂に入る
かいた汗を流す目的もありますが、重要なのは「自律神経のリセット」です。一度体を温め直し、血管の収縮、拡張を正常なリズムに戻します。
(3)ストレッチで体を伸ばす
不自然な姿勢で固まっていた筋肉をほぐします。特に腰や背中、股関節周りを重点的に伸ばすと、血流が戻りやすくなります。
こたつはあくまで「起きている間に暖を取る場所」と割り切り、眠気を感じたら勇気を持って布団へ移動することが、冬の健康を守る最大の秘訣です。こたつで寝落ちしがちな人は、「背もたれが固い座椅子を選ぶ」「床に寝具を置かない」などを行うとよいでしょう。
オトナンサー編集部
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