「あのおばちゃん太ってるね」 思ったことを話してしまう「自閉症」の息子 母が25年経て悟った「言葉」の本当の使い方
- オトナンサー |

自閉症の子どもの中には積極的に言葉を発する子も(画像はイメージ)
自閉症と知的障害のある息子が言葉を話し始めたのは、5歳の頃でした。
同じ療育(障害がある子の自立を支援する施設)に通っていたお子さんも自閉症でしたが、その子の障害は軽度で言葉がよく出ていました。私は「言葉が出ているなんて、いいなあ。うらやましいなあ」と思っていました。自閉症の子は言葉が遅れる傾向があるからです。
ところが、その子のお母さんは、「言葉を話すようになると、余計なことまで言っちゃうから、すごくヒヤヒヤするのよ」と言っていました。
実際、息子も言葉を獲得してからは、駅にある「痴漢は犯罪です」という文字を見つけると、それをずっと読み続け、電車の中でも繰り返し口にしてしまい、かなり困ったことがあります。
「話せるようになったらなったで、“言っていい場所・悪い場所”が分からないため、別の困りごとが出てくるものだ」と痛感しました。
コミュニケーション次第で言葉は生きてくる
また、言葉というのは、単に発するだけではなく、相手の気持ちを考えながらコミュニケーションするための道具です。そうでなければ意味がないのだと感じる場面も多々ありました。
というのも「この場でこれを言ったらどうなるか」という“他者視点”(心の理論=自分とは違う他者の立場にたって考えること)が、自閉症の人は年齢相応に育っていないため失言が多くなります。
例えば、太っている人を見ると、見知らぬ人に向かって「あのおばちゃん太ってるね」と言うことがありますし、おじさんを見ると「頭ハゲてるね」と言ってしまうことも。小学生になってもこの状態ですと世間は許してはくれません。
周りから見れば「失礼な子だ」と思われてしまうのですが、本人には悪気はありません。心で思った通り声を出してしまうのです。
知り合いの女性は、自閉症の子どもに「太っている人の前で『太っている』って言っちゃダメだよ」と日頃から注意していたのですが、「太っている人の前で、太っているって言っちゃダメなんだよね?」と太っている人を指さして言ってしまいました。
また別の例ですが、私の知り合いの小学校5年生の自閉症の子はよくしゃべるのですが、皮膚科に行った時、待合室にお年寄りがたくさんいたそうです。
すると「何だか、ここは年寄りが多いな。老人臭いな」と言ってしまいました。
定型発達の子なら心の中で思うだけで、口には出しませんが、思ったことがすべて吹き出しのように口に出てしまうのです。
また、言葉というのは相手の気持ちを考えながら使うからこそ、人間関係を深め、生活を営むために意味を持ちます。その使い方ができないと人間関係でトラブルが起こることもあります。
以前、特別支援学校で上野動物園に行った時、言葉がよく出ている子がいましたが、やはり場にそぐわない言葉を言っていました。
「お友達のメガネを取ってはいけません」と普段、学校で担任から怒られている子がパンダの前でずっと「お友達のメガネを取ってはいけません」「お友達のメガネを取ってはいけません」「お友達のメガネを取ってはいけません」と言い続けていました。
他にもたくさんあります。
例えば、スーパーでリンゴを見ると「世界一、ジョナゴールド、シナノスイート…」と銘柄を延々と言い続けるそうです。
でも、「このリンゴおいしそうだね、買って」とは言わないそうです。
これは天と地ほどの差があります。場に合わない言葉を単に呪文のように言い続けるだけでは、コミュニケーションとは言えません。
言葉が出てほしいと願う親御さんは多いと思いますが、出たら出たで困りごともあり、さらにコミュニケーションにつながらない言葉は、実は「話せていない」のと同じなのだと感じることもあります。
息子は25歳になりましたが、上品な雰囲気の女性が犬を連れていたら「あ!野良犬!」と叫ぶことがあり、冷や汗をかくことがあります。息子は、犬は全て野良犬だと思っているのです。
そして、息子は言葉の使い方が独特です。
先日も食事中、「おなかいっぱいだから食べない」ではなく、「おなかいっぱいだから食べるのを諦める」と言いました。
また、家の中で私とぶつかったら「出会い頭」と言ったり、外国の人が日本語を一生懸命使っているような、不思議な言い回しをしたりすることがあります。
突然、「枯れ木も山の賑わい」などことわざを言ったり、「猫に小判」「犬がいる」など学校で覚えた言葉を場に関係なく言ったりもします。
今では、「これを面白いな、独特だな」と思える心の余裕はあります。
子育て本著者・講演家 立石美津子
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