「脂肪肝=酒飲みの病気」は誤り “飲酒以外の原因”で発症するケース急増 放置するリスクとは 専門医解説
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健康診断の際に「脂肪肝」と指摘され、困ったことはありませんか。ネット上では「飲酒をすると脂肪肝になりやすい」という内容の情報がありますが、本当なのでしょうか。脂肪肝の原因や脂肪肝を放置した場合のリスク、改善法などについて、天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック(大阪市天王寺区)院長で総合内科専門医、消化器病専門医、内視鏡専門医の安江千尋さんに聞きました。
減量や食事内容の見直しで改善可能
Q.そもそも、脂肪肝とはどのような病気なのでしょうか。また、ネット上では「飲酒をすると脂肪肝になりやすい」という内容の情報がありますが、飲酒をしない人は脂肪肝を発症しにくいのでしょうか。
安江さん「脂肪肝とは、主に中性脂肪が肝臓に過剰にたまった状態のことをいいます。通常、肝細胞の5%以上に脂肪が蓄積していると脂肪肝と診断されます。自覚症状はほとんどなく、健康診断の腹部超音波検査や血液検査で偶然見つかることが多いのが特徴です。
脂肪肝には、大きく分けて『アルコール性脂肪肝(AFLD)』と『非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)』の2つがあります。
アルコール性脂肪肝は大量の飲酒によって引き起こされる一方、非アルコール性脂肪性肝疾患は飲酒が原因ではなく、主に生活習慣の乱れが原因で発症します。そのため、脂肪肝は飲酒をしている人だけが発症する病気ではありません。特に非アルコール性脂肪性肝疾患は現代の日本人に急増しており、肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病と密接に関係しています。
さらに非アルコール性脂肪性肝疾患は、脂肪がたまっているだけの状態である『単純性脂肪肝』と、肝臓に炎症や線維化が見られる『非アルコール性脂肪肝炎(NASH)』に分類されます。
脂肪肝の原因として多いのは、カロリーや糖質、脂肪の過剰摂取、運動不足です。エネルギーが余ることで肝臓に中性脂肪が蓄積されます。最近では、痩せていても内臓脂肪が多い『痩せ型脂肪肝』も問題となっています。
脂肪肝は軽く考えられがちですが、放置すると深刻な病気に進行する恐れがあります。生活習慣の改善によって予防、改善が可能なため、日頃からの意識と健康管理が重要です」
Q.脂肪肝の一種に「アルコール性脂肪肝」があるとのことですが、日頃から飲酒している人は、やはり脂肪肝になりやすいということでしょうか。
安江さん「はい、飲酒は脂肪肝の主な原因の一つです。日常的に多量のアルコールを摂取している人は肝臓に中性脂肪がたまりやすくなり、アルコール性脂肪肝を発症しやすくなります。アルコールが肝臓で代謝される過程で、脂肪の合成が促進されるほか、毒性のあるアセトアルデヒドなどの代謝産物が肝細胞にダメージを与えるため、脂肪肝が進行しやすくなります。
日本肝臓学会のガイドラインによると、男性で1日30グラム以上、女性で1日20グラム以上のアルコールを摂取すると、脂肪肝のリスクが高まるとのことです。これはビール中瓶約1.5本、日本酒1合強、ワインならグラス2杯程度に相当します。
非アルコール性脂肪性肝疾患の人でも、少量の飲酒が重なることで症状が悪化する場合があります。そのため、肝臓に負担をかけないためには、すべての人にとって飲酒量の管理が必要です」
Q.脂肪肝を放置すると、どのようなリスクが生じる可能性がありますか。
安江さん「脂肪肝は初期症状がないため見逃されがちですが、脂肪肝をそのまま放置すると、肝臓に慢性的な炎症が起こり、やがて肝臓が硬くなる状態である『肝線維症』が生じます。特にアルコール性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎に移行すると、肝臓の細胞が壊され、最終的には『肝硬変』や『肝細胞がん』などの重篤な病気に至るリスクが高まります。
さらに、脂肪肝は肝臓だけの問題ではありません。最近の研究で非アルコール性脂肪性肝疾患や非アルコール性脂肪肝炎を発症している場合、動脈硬化や心筋梗塞(こうそく)、脳卒中といった心血管系の病気のリスクが高いことが分かっています。つまり、脂肪肝は全身の健康に関わる病気であり、単なる『肝臓の異常』と片付けるべきではないのです。
脂肪肝がある人は、インスリンの働きが悪くなる『インスリン抵抗性』が強くなる傾向にあり、それによって脂肪が肝臓にたまりやすくなるため、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病を併発しやすくなります。これらの疾患が重なることで、心臓病や脳血管障害など他の疾患のリスクもさらに高まるのです。
脂肪肝は自覚症状がないため、つい軽視されがちですが、将来的な健康リスクを考えると、早めの対応が重要です。定期的な検査で早期に脂肪肝を見つけ、食生活の改善や運動習慣の見直しなど、できることから予防、改善に取り組むことが大切です。
脂肪肝は、正しい知識と生活習慣の見直しによって改善可能な病気です。飲酒習慣が気になる場合は、定期的な検査と医師への相談をお勧めします」
脂肪肝を改善するには?
Q.脂肪肝を改善するにはどうしたらよいのでしょうか。具体的な対処法について教えてください。
安江さん「脂肪肝の改善において最も基本となるのは生活習慣の見直しです。特に体重の5~10%を減らすことが、脂肪肝の改善に有効であることが医学的に示されています。急激なダイエットではなく、無理のない範囲で継続できる取り組みが重要です。
まず、食事の内容を見直すことが第一歩です。糖質や脂質、とくにフルクトース(果糖)や飽和脂肪酸の摂取量を控えましょう。その上で、大豆製品や魚などのような、低脂肪で高タンパクの食べ物、食物繊維を多く含む野菜やキノコ類を摂取し、バランスのよい食事を心掛けてください。加えて、甘い飲料やスナック菓子など、過剰なカロリー摂取の原因となる食品を控えるのが望ましいです。
次に、定期的な運動の習慣も大切です。ウオーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を週に2時間半程度行うことが推奨されており、筋トレを組み合わせることでより効果的に脂肪を減らすことができます。
飲酒習慣の見直しも重要です。アルコール性脂肪肝の場合は、完全な禁酒が求められます。また、非アルコール性脂肪性肝疾患の人も、肝臓への負担を避けるために節酒が推奨されます。
睡眠の質を高めることやストレスをうまく管理することも、肝機能の改善に有効です。自律神経の乱れは代謝異常やホルモンバランスの変化を引き起こし、脂肪肝に悪影響を及ぼす可能性があります。
脂肪肝そのものに対する特効薬は現在のところ存在しておらず、薬物療法は糖尿病や脂質異常症などの合併症がある場合にそれらの管理目的で使用されます。従って、脂肪肝を改善するには日常生活の中でできる予防、改善行動が最も効果的です。
繰り返しにはなりますが、脂肪肝は早期に対策を取ることで、元の正常な肝臓の状態に戻すことも可能です。無理のない範囲で食事や運動、生活習慣を見直し、継続的な取り組みを行っていきましょう」
Q.脂肪肝を防ぐには、日頃からどのような対策が求められるのでしょうか。
安江さん「脂肪肝は『沈黙の臓器』である肝臓に少しずつダメージが蓄積していく病気です。症状が出にくいため、発見が遅れがちで、気付かないうちに進行してしまうことがあります。そのため、日頃からの予防が何よりも大切です。先述の内容と重なる部分もありますが、予防のために意識すべきポイントは次の通りです」
・栄養バランスの良い食生活を心掛け、腹八分目を意識する
・野菜や魚、大豆製品などを積極的に取り入れる
・過度なアルコール摂取を避ける。できれば休肝日を設ける
・1日20〜30分程度のウオーキングなど、定期的な運動を習慣化する
・体重を適切に管理する。体格指数である「BMI(ボディ・マス・インデックス)」が25以上の人は特に注意が必要
・健康診断での肝機能(ALT、ASTなど)のチェックを怠らない
また、脂肪肝の家族歴がある人や、過去に脂肪肝と診断されたことがある人は、再発リスクが高いため、特に注意が必要です。
食事や運動、飲酒、ストレス管理など、肝臓にやさしい生活を意識しながら、自分の体としっかり向き合うことが、将来の深刻な肝疾患を防ぐ第一歩となります。
オトナンサー編集部
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