発達障害の19歳ひきこもり長女の母 障害年金の「不支給」急増知り憤り 社労士が示した“将来への道筋”
- オトナンサー |

筆者のファイナンシャルプランナー・浜田裕也さんは、社会保険労務士の資格を持ち、病気などで就労が困難なひきこもりの人を対象に、障害年金の請求を支援する活動も行っています。
厚生労働省が6月11日、「令和6年度(2024年度)の障害年金の認定状況についての調査報告書」を公表しました。この調査は、障害年金が不支給となるケースが2024年度に増えているという一部メディアの報道を踏まえ、厚労省が日本年金機構と連携して行ったものです。調査では、2024年度の精神障害による新規裁定の非該当、つまり障害年金の不支給決定の割合が12.1%と、前年度の6.4%を大幅に上回ったことが明らかとなりました。
ひきこもりの人の中にはうつや不安障害などの精神疾患にかかっており、就労が困難なケースも珍しくありません。精神疾患にかかっているひきこもりの人の家族が今後、障害年金を請求する場合、どのような点に気を付けた方がよいのでしょうか。浜田さんが10代のひきこもりの女性とその家族をモデルに紹介します。
16歳の頃に「適応障害」「発達障害」と診断された長女
ある日、「ひきこもり状態にある19歳の長女の件で相談がしたい」と、母親が社会保険労務士である私の元を訪れました。
相談の冒頭で、母親は障害年金の非該当に関するメディアの報道を見て怒りがこみ上げてきたことを明かし、「なぜ困っている人を切り捨てるようなことをするのか」と興奮気味に話しました。それと当時に「果たして、うちの娘は障害年金が受給できるのだろうか」という不安も湧き起こったといいます。
母親によると、現在、ひきこもりの状態にあるのは田代恵里花さん(仮名)です。恵里花さんは小さい頃からコミュニケーションに難があり、人と係わることが苦手だったそうです。高校1年生のときにいじめを受け、それが原因で不登校となりました。次第に心の不調が目立つようになり、16歳のときに心療内科を受診。そこで適応障害と発達障害の診断を受けました。
その後、恵里花さんは高校に通うことができず、そのまま退学。19歳になる現在まで、ひきこもり状態にあるとのことでした。
恵里花さんの初診は公的年金に加入する20歳前だったので、障害基礎年金を請求することになります。恵里花さんの場合、20歳に達した日(20歳の誕生日の前日)から障害基礎年金の請求をすることができます。
母親は不安そうな表情で言いました。
「ニュースで障害年金の非該当の割合が増えたということが報道されていますよね。それに対して何か特別な対策を取った方がよいのでしょうか」
「確かに一連の報道では精神障害の非該当割合が大幅に増加したと伝えられていますが、請求者がやるべきことは今も昔も変わりません。請求に必要な書類を不備なくそろえるだけです」
とはいえ、と前置きをした上で私は続けました。
「ただ単に書類をそろえるだけでは不十分な面もあります。特に重要なのは医師が作成する診断書と本人または代理人が作成する『病歴・就労状況等申立書』です。それらの記載内容が障害年金の受給を左右するといっても過言ではありません。『どのようなことを医師と日本年金機構に主張するのか』ということを理解せずに請求してしまうと、せっかく受給できたかもしれない障害年金が認められなかったということにもなりかねません」
「そうなのですね。具体的にはどのようなことを主張すればよいのでしょうか」
「その答えはここにあります」
私は障害年金の請求で使用する診断書(精神の障害用)を机の上に広げました。
日常生活を送る上でどれくらいの困難を抱えているのか
私は診断書を裏返し、そこに記載されている項目を指でさしました。
「診断書の裏面には『日常生活能力の判定』と『日常生活能力の程度』という項目があります。これらの項目を参考に『お嬢さまがどのくらいの困難さを抱えているのか』を主張するのです。ちなみに日常生活能力の判定は7項目あり、それぞれ次のようになっています」
(1)適切な食事
配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく取ることがほぼできるなど。
(2)身辺の清潔保持
洗面、洗髪、入浴などの身体の衛生保持や着替えなどができる。また、自室の掃除や片付けができるなど。
(3)金銭管理と買い物
金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、1人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど。
(4)通院と服薬
規則的に通院や服薬を行い、病状などを主治医に伝えることができるなど。
(5)他人との意思伝達および対人関係
他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるなど。
(6)身辺の安全保持および危機対応
事故などの危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となったときに他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど。
(7)社会性
銀行での金銭の出し入れや公共施設などの利用が1人で可能。また、社会生活に必要な手続きが行えるなど。
「これら7項目はそれぞれ4段階評価になっています。状態が軽い方から順番に次のようになっています」
私は次のように説明を続けました。
・「できる」
・「自発的にできるが時には助言や指導を必要とする」または「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」
・「自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる」または「助言や指導があればできる」
・「助言や指導をしてもできないもしくは行わない」
「これら7項目についてお嬢さまがどのくらいの困難さを抱えているのか。医師が判断した上で、それぞれにチェックをつけていきます。次に日常生活能力の程度です。こちらは5段階評価になっています。知的障害を除く精神障害で障害基礎年金の2級に該当するような障害状態とは、少なくとも診断書の『(精神障害)』の項目の(3)または(4)に該当する場合です。それぞれ次のように規定されています」
(3)精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
例えば、習慣化した外出はできるが、家事をこなすために助言や指導を必要とする。社会的な対人交流は乏しく、自発的な行動に困難がある。金銭管理が困難な場合など。
(4)精神障害を認め、日常生活における身の回りのことも、多くの援助が必要である。
例えば、著しく適正を欠く行動が見受けられる。自発的な発言が少ない、あっても発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。金銭管理ができない場合など。
さらに私は説明を続けました。
「診断書も重要ですが、それと同じくらい病歴・就労状況等申立書も重要です。病歴・就労状況等申立書には、診断書だけでは伝えきれない日常生活の困難さの状況を数多く盛り込む必要があります。それを理解していないと、障害年金の審査に全く関係がない文章をただ書き連ねているだけになってしまうこともあります。それでは病歴・就労状況等申立書の本来の目的が果たせているとは言えません。なお発達障害がある人は、障害年金のルール上、病歴・就労状況等申立書は幼少期から現在までの様子を記載することになっています」
一通りの説明を聞いた母親は、険しい表情になりました。
「何だか難しそうですね…。一体何からどう始めればよいのでしょうか」
「お嬢さまの同意が得られれば、私が主導して準備から請求までご協力することができます。お嬢さまの日常生活の困難さについては、まず私が質問をするので、それについてご家族が回答するだけで構いません。ご安心ください」
「質問に答えるくらいならできそうです。ぜひお願いしたいと思います」
母親との面談後。恵里花さんの同意が得られた私は、恵里花さんが20歳になったときに速やかに障害基礎年金が請求できるよう、ご家族と一緒に準備をしていくことになりました。
社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 浜田裕也
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