たった1機の旅客機で1000人超を運べ! 世界記録出した壮大な救出劇「なんで飛行中に乗客増えてるの!?」
- 乗りものニュース |

定員の2倍以上を詰め込んだ決死のフライト
世界最大級の旅客機と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、かつて「ジャンボジェット」の愛称で世界の空を席巻したボーイング747か、あるいは総2階建て構造を特徴とするエアバスA380でしょう。いずれも巨大な胴体を備え、一度に500人を超える乗客を運ぶ能力を有する、人類の航空技術が生み出した乗りものの金字塔だと言えます。
エルアル航空のボーイング747-200(画像:パブリックドメイン)
では、これまでに旅客機に実際に搭乗させた乗客数の世界記録は何人なのでしょうか。答えは驚くべき数字です。記録保持者はイスラエルのエルアル航空が運航したボーイング747-200で、その搭乗者数は実に1088人に達しました。この前代未聞の数字が生まれた背景には、ひとつの壮大な作戦がありました。
1991年5月、東アフリカのエチオピアは内戦によって国家機能が崩壊寸前にありました。首都アディスアベバにも反政府勢力が迫り、古くから同国に居住していたユダヤ人共同体は、戦火に巻き込まれる危険に直面していました。イスラエル政府は彼らを救出するため、軍とエルアル航空の連携による大規模な空輸作戦を発動します。「ソロモン作戦」と呼ばれる歴史的な救出作戦です。
この作戦では、C-130輸送機やボーイング707、747など多数の航空機が投入され、わずか三十数時間の間に首都アディスアベバのボレ国際空港から、約1万4000人ものエチオピア系ユダヤ人を祖国へと空輸しました。なかでも注目すべきが圧倒的な搭載能力を持つボーイング747-200であり、貨物輸送型をベースに座席を全て撤去して可能な限り人を乗せられるように改造した特殊な機体が用いられました。
離陸時より着陸時のほうが「乗客が多い」奇跡
1991年5月24日、この機体はアディスアベバを1086人の乗客とともに離陸しました。通常、747-200の標準的な座席数は400人強であることを考えれば、実に定員の2倍以上を搭乗させていたことになります。もちろん、これは通常運航ではあり得ず、乗客の多くは床にそのまま座り込み、わずかな手荷物だけを携え、ただ安全な地へ避難することだけを願って機内に身を寄せていたのです。
座席を外し避難民を収容したボーイング747機(画像:イスラエル国防軍)
しかし、この飛行にはさらに驚くべき結末が待っていました。同機がテルアビブ国際空港へ向かう4時間の飛行中に2人の女性が出産したのです。つまり、アディスアベバを飛び立った時点では1086人だった搭乗者数は、テルアビブへ着陸した瞬間には1088人へと増加していたのです。離陸時より着陸時のほうが2名も乗客数が多いという稀な出来事がこの歴史的フライトで発生しました。
数字だけを見れば、1088人という記録は珍事に映るかもしれません。しかし当のユダヤ人たちにとって、その本質はむしろ数字の背後にある人間の物語にあります。内戦の混乱から逃れ、ユダヤ人の祖国へ向かう人々で埋め尽くされたジャンボジェット。その機内で2人の新しい命が誕生したという事実は、まるで約束の地への旅路そのものが、一つの象徴であったかのような印象を与えました。
ボーイング747は大量輸送時代を切り開いた航空機として記憶されています。エルアル航空のこの一件で達成された1088人という空前絶後の乗客数は、その特殊性がゆえに通常の航空便では塗り替えることがほぼ不可能であり、今後も長く世界記録として君臨し続けることとなるでしょう。
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