DAZN「月980円」提示→実は「年2万6340円」に「二度と契約しない」 “紛らわしい料金表示”は法的にセーフ?
- オトナンサー |

動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」の公式サイトより
サッカーワールドカップ(W杯)北中米大会の日本対チュニジア戦が6月21日午後1時から生中継されます。
そんな中、動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」のサッカー特化プラン「DAZN SOCCER」が、SNS上で物議を醸しました。画面上で「980円」という低価格が強調されている一方、実際には4カ月目から月額2600円になる年間契約であり、総額2万6340円を支払わなければならないプランだったからです。月額980円と勘違いをして申し込んでしまった人が続出し、SNS上では「ひどい」「だまされた」「二度と契約しない」「売り方が悪質すぎる」など、批判が殺到しました。
これを受け、DAZN側は6月13日、一部の説明に月額プランと受け取れる表記があったとして謝罪し、まずは一部の契約者を対象に解約やプラン変更の受付を開始。さらに同月18日には、同プランの新規受付を停止し、対象をすべての契約者に広げ、希望者には解約や返金に応じるという方針を発表しました。
今回のケースのように、安価なプランに見えるものの、実際は高額な年間契約が必須といった紛らわしい広告・画面設計により、消費者を誤認させてしまった場合、企業にはどのような法的責任が発生する可能性があるのでしょうか。サービスの契約時に必要な対策も含め、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
「不備を認めた期間」と「認めていない期間」で分かれる法的評価
Q.DAZNのような「月額が強調されているが、実際は年間の縛りがある」という画面設計は、景品表示法(誤認惹起)や消費者契約法などの観点から見て、法的にどのような問題がありますか。DAZNを例に教えてください。
佐藤さん「今回、DAZNは6月13日、『2026年5月30日から6月11日午後8時まで』の期間について、『DAZN Soccer』の契約画面に、一部月額プランと受け取れる記載がなされていたことを認め、謝罪しました。
一方、DAZN側が表示の不備を認めていない期間については、『月額980円』が強調され、途中解約不可の年間プランであることが、視覚的に目立たない表示になっていたものの、表示自体はなされています。前者と後者では、法的な評価が変わる可能性が高いです。
景品表示法は、商品やサービスの価格について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害する恐れがあると認められる表示を禁じています(有利誤認表示の禁止-景品表示法5条2号)。
DAZN側が表示の不備を認め、謝罪した期間については、契約画面に『月額プラン』などの表示がなされていたケースもあるようで、実際には、途中解約不可の年間契約を締結させるものであった以上、有利誤認表示に当たり、景品表示法違反になる可能性があります。
景品表示法に違反して不当な表示がなされていた場合、消費者庁は調査を実施し、調査の結果、違反行為が認められれば、誤認表示を排除したり、再発防止策を実施したりするよう、『措置命令』を行います。措置命令に違反したときは『2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金』に処される可能性があります(景品表示法46条)。
なお、サービスの価格について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者を誤認させるような表示をすれば、『100万円以下の罰金』に処される可能性があります(景品表示法48条)。
また、特定商取引法は、顧客が行う特定申込み手続きが表示される映像面に、サービスの価格を表示しなければならず、価格につき人を誤認させるような表示をすることを禁じています(特定商取引法12条の6)。DAZN側が表示の不備を認めた期間については、サービス価格につき誤認させるような表示がなされていたとして、特定商取引法違反にもなる可能性があります。
価格について不実の表示をした場合、『3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科』(特定商取引法70条)、価格について人を誤認させるような表示をした場合、『100万円以下の罰金』に処される可能性があります(特定商取引法72条)。
以上より、DAZN側が表示の不備を認めている期間については、景品表示法や特定商取引法など、法律上問題がある可能性があります。一方、DAZN側が表示の不備を認めていない期間については、消費者が年間契約であることを見落とす可能性が高い表示方法ではあったものの、それだけでは、景品表示法違反や特定商取引法違反に当たらない可能性が高いでしょう」
画面上に情報が書かれていた場合は一概に返金請求できず
Q.その後、DAZN側が6月18日、「DAZN Soccer」のすべての契約者を対象に、希望者には解約や返金の対応に応じると発表しました。もし何らかのサービスでDAZNと同様の広告表示により勘違いして契約してしまった場合、契約の取り消しや返金の請求は可能なのでしょうか。
佐藤さん「特定商取引法は、業者が、サービスの価格について不実の表示をしたことにより、その表示が事実であると誤認し、利用者が申込の意思表示をした場合、取り消すことができるとしています(同法15条の4)。もし他社の何らかのサービスで広告表示が『不実の表示』に当たる場合、特定商取引法に基づき、契約を取り消して返金を求めることができます。
なお、DAZNの場合、年間契約であることがサイトの目立たない場所に表示されていた期間については、『不実の表示』があったとは評価できません。そのため、仮にDAZN側が解約や返金の対応を行うと発表せずにそのままサービスの受付を続けていたとします。その場合、勘違いをして契約したとしても特定商取引法に基づいて契約を取り消すことは困難だったと考えられます。
『勘違い』を理由に契約を取り消す方法としては、他にも、民法の錯誤に基づく取り消しがあります。しかし、事業者からすれば、利用者が『月額プランだと思って』契約したのか、年間契約と理解した上で契約したのか分からないような事案では、錯誤に基づく取り消しも困難と思われます。
現行法では、分かりにくい表示であったとしても、契約画面に一定の表示がなされている場合、契約を取り消したり、返金を求めたりすることが困難なことが多いように思います」
Q.もし今回のDAZNのようなケースで、契約後に運営会社から解約・返金を拒否された場合、消費者は次にどのような行動を取るべきなのでしょうか。
佐藤さん「自治体の消費生活相談窓口に相談してみましょう。また、法的に解約や返金が可能かどうかは、事案によって異なるため、弁護士に相談するのも一つの方法です。
先述のように、現行法上、分かりにくい表示に気付かずに契約してしまったような場合、返金がなされないことも少なくありません。アプリやサイトの操作画面で、ユーザーをだましたり勘違いさせたりするデザインは、『ダークパターン』と呼ばれており、被害を予防するためには、まずダークパターンというものが存在することを知り、契約の際は即断せず、表示をよく読み、条件を確認することが重要になります」
Q.広告表示に関しては、あまり厳しい罰則がない印象がありますが、どのような理由が考えられますか。
佐藤さん「日本では、まだ、ダークパターンそのものを直接規制する法律がありません。先述の景品表示法や特定商取引法、その他、消費者契約法、消費者安全法、個人情報保護法など、関連する法律によって個別に規制されているのが現状です。
一方、世界ではダークパターンに対する包括的な法規制が進められており、日本も現在、消費者庁のデジタル取引・特定商取引法等検討会にて、ダークパターンに関する規制の具体化について議論がなされているところです。
ダークパターンは大きく7つに分類されていますが、多岐にわたる手法が取られており、法規制が追い付いていない面があります。今後の議論の行方に注目しましょう」
オトナンサー編集部
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