「スッカスカなバイクが流行ってるってねぇ…ヨシ公式で出したれ!」 まるで地を這う走りのホンダ「ズーマー」
- 乗りものニュース |

まるでカスタム車のようなスカスカぶり!
1990年代以降のバイクシーンは、ネイキッドモデルに人気が集まった時代です。さらにそうしたネイキッドモデルのエアクリーナーボックスやバッテリーなどを排し、機構をシンプルにし”スカスカ”にする、いわゆる「スカチューン」がカスタムとして流行しました。
シート下がスカっているのが特徴だったホンダ・ZOOMER(画像:ホンダ)。
こういった傾向を受け、ホンダは「スクーターもネイキッドスタイルに」と、プラスチックカバーなどをあえて持たない斬新なスクーターを打ち出しました。2001(平成13)年発売の「ZOOMER(ズーマー)」です。
1980年代までのホンダは、独自開発のモデル群によって日本のバイクシーンを牽引していましたが、1990年代以降はメーカーよりもユーザーが既存バイクのカスタムなどにより「バイクの流行」を作り上げていくという風潮がありました。こうした時代の変化を受け、ホンダでは2000年代に入り社内の若手メンバーたちに開発を任せる「Nプロジェクト」を発足。従来の開発フローではなく、若手メンバーたちに「同世代が好むバイク」作りの手綱をあえて渡した格好でした。
この「Nプロジェクト」によって誕生した5モデルのバイクのうちの一つがズーマーでした。1990年代に流行したダートトラッカーを意識してか前後に極太のタイヤを履かせ、フロントライトはデュアル。ボディはあえてクラシカルなソリッドカラーとし、シート下をスカスカにしてプラスチックカバーなどを廃したことで、まるでカスタムバイクのような趣きの前例なきスクーターになりました。
初代ズーマーの年間販売計画台数は1万台。当時としては大きな賭けのようにも見えますが、以降16年間も生産が続いたことを思えば、初代から目標はクリアしたと言えるかもしれません。また、2007(平成19)年のマイナーチェンジでは自動車排出ガス規制に適合させるため、燃料噴射装置などを搭載。実売に乏しいバイクでは新規制に適合させず生産終了となることが多いですが、ここでマイナーチェンジに取り組んだことからもズーマーが一定の支持を集め続けていたことが伝わってきます。
ある男性は「重心が低くて、地を這うような走りが楽しいバイクでした。リアに重いピザトランクを積んでも安定してグイグイ走りました」と話します。かつてピザ配達のアルバイトで導入されており、標準的なジャイロ キャノピーよりも好んで乗っていたのだそうです。
結果的に、ズーマーが生産された16年間での機構面でのマイナーチェンジはこの1回のみ。元々の完成度の高さゆえ、根本的なブラッシュアップが不要だったものと推測されます。
カスタム車のようなズーマーをさらにカスタムするユーザーたち
前述の通り、ズーマーは1990年代のカスタムブームの影響を受けて誕生したネイキッドスクーターでしたが、このシンプルなズーマーの構造がまた、カスタム愛好者たちの格好のベースモデルにもなりました。
2013年発売のZOOMER-X。110ccモデルで、従来のZOOMERのコンセプトや面影は乏しくとも個性的な1台だったことは確かだ(画像:ホンダ)。
ズーマーのカスタムでも、とくに多かったのがロー&ロング。つまり、車高を低くさせ、ホイールベースをロングにさせたもので、一時日本国内でもズーマーのカスタム専門誌が出版されたこともありました。また、ホンダ・PCX125/150エンジンをスワップし、パワーアップを図るカスタムも登場。ズーマーもまた、ユーザーのカスタムによって魅力が広められた側面がありました。
2016年に施行された平成28年排出ガス規制をクリアできず、ズーマーは翌2017(平成29)年に生産終了に至りますが、2000年代以降のホンダのミニバイクではロングセラーの筆頭モデルとなりました。
また、時は前後しますが、ズーマーを110ccにブラッシュアップさせたズーマー-Xというモデルが2013(平成25)年に登場。従来のZOOMERのコンセプトや面影は乏しいものの、次世代バイクとして注目を浴びました。ただし、相応のヒットには至らず2016年に姿を消した惜しい1台でもありました。
ここまでの通り、ズーマーが残した功績は大きかったわけですが、その変遷と実績から、2023年には電動バイクとしてCub e:、Dax e:と並んでZOOMER e:が中国市場で発売されました。カブ、ダックスと言えば、言わずもがなのホンダのミニバイクの代表モデルですが、そこにズーマーが並んでいることが実に興味深いです。
ちなみにZOOMER e:は、かつての面影はデュアルヘッドライトと太めの足回り程度ですが、Cub e:、Dax e:と比べれば、どことなくアクティブで無骨な印象。電動バイクのカテゴリーでも、さらなるバイクの楽しさを牽引してくれることを期待するばかりです。
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