「ティーガーだ!」←見間違いでした “最恐戦車”そんなに多くないから 実は現代戦でも起こる危険性が
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戦場においてある兵器を恐れるあまり、人間の心理が生む誤認。現代戦ではドローンという新兵器が、かつてのティーガーIとは違った心理状態に追い詰めているようです。
「ティーガー・ファントム現象」とは
「ティーガーが出た!」
1944年春、北フランスのカンプレーで訓練を行う第2装甲師団のシュルツェン付きのIV号戦車。受領されたばかりの新車だ(月刊PANZER編集部蔵)
第2次世界大戦において、ドイツ軍の「ティーガーI戦車」は連合軍将兵にとって恐怖の象徴でした。目撃情報があるだけで部隊が浮足立つというエピソードには事欠きません。しかし、実際に戦場で遭遇した戦車が本当にティーガーIだったのかというと、必ずしもそうではないようです。
1944(昭和19)年6月、ノルマンディーに上陸したイギリス軍戦車部隊はティーガーIの待ち伏せを受けたと報告しますが、戦闘後の遺棄戦車にティーガーIはなく、後にドイツ軍の記録と照合してみても、該当地域には配置されていませんでした。同じような例は東部戦線のソ連軍でも見られます。
このような事例は、「ティーガー・ファントム(ティーガーの幽霊)現象」と呼ばれることがあります。ティーガーの恐怖が広まるにつれ、対峙した兵士は実際よりも多くのティーガーIが戦場に存在すると思い込む傾向にあったのです。戦闘中の迅速な判断が求められる状況では、「大きな戦車=ティーガーI」と単純化されるケースもありました。また、「ティーガーIと交戦した」と報告することで、自らの功績を誇張しようとした可能性すらあります。
この「ファントム」(幽霊)の正体の多くが「シュルツェン」付きのIV号戦車でした。シュルツェンとは、砲塔や車体側面に取り付けられた追加装甲板であり、スカート装甲ともいわれます。この装甲板によってIV号戦車のシルエットは大きく角ばったものとなり、遠目ではティーガーIのように見えることがありました。戦場の混乱の中で、この特徴が誤認を生んだようです。
何のためにシュルツェンを付けたのか
とはいえ、もちろんシュルツェンは、IV号戦車がティーガーIに擬態するための物ではありません。主な目的は、対戦車ライフルやバズーカ砲の成形炸薬弾に対する防御を強化することでした。特にソ連軍のPTRD-41やPTRS-41対戦車ライフルは、1942(昭和17)年ごろまでならIV号戦車の側面装甲を貫通可能だったため、これに対抗するための応急対策として採用されたものです。強そうに見せるというより、むしろ必死の防御策だったといえるでしょう。
DKWのNZ350バイクを括り付け歴戦らしい出で立ちの東部戦線のIV号戦車H型。車体側面シュルツェンはもう再生不能だろう(月刊PANZER編集部蔵)
戦場では、戦車乗員が防御力を少しでも向上させようとするのは本能的な行動です。装備品の勝手な改造はご法度でしたが、それでも予備履帯や装具、砂袋などを車体外周に括り付けたりして、少しでも防御力を上げようと躍起になっていました。
シュルツェンを取り付けることで、徹甲弾や成形炸薬弾の威力が減衰するのではないかと期待されていました。ただ、運用上の欠点も多くありました。大きな装甲板は扱い辛く、重量増加や機動性の低下に加え、引っ掛かりやすく破損しやすいという問題もありました。車体側面のシュルツェンは戦闘や移動中に脱落しやすく、だからか欠損した状態の戦車が多く見られました。
全てのシュルツェンがキッチリついている姿は、実戦経験のない新車のように見え、逆にシュルツェンが欠損しグニャグニャになったステーだけが残っている戦車は、歴戦の個体っぽく見えます。破損したら取り換える前提だったのでしょうが、補給修理が思い通りにいかないのが戦場の常です。
なお、IV号戦車以降に登場したV号戦車(パンター)やVI号戦車(ティーガー)は装甲が厚くなり、シュルツェンは取り付けられなくなります。
ウクライナの戦場で再び見られるシュルツェンのようなもの
21世紀に入って、再びシュルツェンのような追加防御が戦車に取り付けられるようになりました。ロシア・ウクライナ戦争では、対戦車ミサイルや携帯対戦車ロケット、さらに新たな敵として自爆型FPVドローンが猛威を振るっています。対策として、追加防御の一種であり、敵の徹甲弾や成形炸薬弾が命中すると内部の爆薬が爆発し、衝撃波によって弾頭の貫通力を低下させる爆発反応装甲(ERA)や、網小屋のようなケージ装甲を追加することが標準的となりつつあります。
ウクライナ戦線に登場したT-72B3Mの「ツアーリ・マンガル」(突撃小屋の意味)。究極のドローン除けだ(画像:ロシア国防省)
これらの異形は、見方によっては“現代戦の幽霊”に見えるでしょうか。ウクライナ軍は初期には対戦車戦闘に火炎瓶さえ使おうとしていました。そして今や自爆型FPVドローンという、3年前には想像もしなかった攻撃手段が登場しています。そうした脅威の目まぐるしい変化のたびに、戦車は設計変更するわけにはいきません。現場で急造した網小屋のようなケージ装甲から、より高度な迎撃弾を発射するアクティブ防御システムまで、攻防はまるでシーソーゲームです。
戦場では常に敵の脅威が変化し、防御策も即応することが要求されます。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」というように、「ティーガー・ファントム現象」は敵味方の行動と戦場心理が絡み合い副次的に生み出された戦場伝説でした。
現代戦では戦場の可視化が進みましたが、それでも人間の心理はほとんど変わっていません。それこそ、ウクライナ戦争などはドローンが戦場を支配しているようにいわれていますが、何年か後に検証した時、ネット上に氾濫する宣伝動画に煽られた「ドローン・ファントム現象」でしかなかったということになっている可能性は捨てきれないでしょう。
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