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北朝鮮、初の“原潜”を公開! 排水量8000トン超の「戦略ミサイル潜水艦」の実力とは? 金正恩が誇示した“水中核”の正体

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  • 乗りものニュース
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8700トン級の巨体、その実力は「未知数」

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)メディアは2025年12月25日、金正恩総書記が「核動力戦略誘導弾潜水艦」の建造事業を現地指導したと報じました。「核動力戦略誘導弾潜水艦」とは「戦略ミサイル搭載原子力潜水艦」、いわゆる「戦略原潜」のことです。

Large figure1 gallery8金正恩総書記が視察した8700トン級原子力戦略誘導弾潜水艦(画像:朝鮮中央通信)

 北朝鮮は数年前から原子力潜水艦の開発と建造を進めており、今年3月にも建造中の艦体の一部を披露しましたが、全体を公開したのは今回が初めです。

 戦略原潜は北朝鮮が2021年1月に発表した「国防科学発展及び武器体系開発5か年計画(国防5か年計画)」の重要課題のひとつで、技術とコストの両面で最もハードルが高かったものでもあります。

 北朝鮮メディアによると、建造中の原子力潜水艦の排水量は8700トンとのこと。米中ロなど、他国の戦略ミサイル原潜と比べるとやや小さい方ですが、2023年9月に進水した通常動力型の戦術核攻撃潜水艦「金君玉英雄」よりはるかに大きいサイズです。

 兵装についての詳細は不明ですが、中央部に垂直発射システムが確認され、潜水艦発射型の弾道ミサイルと巡航ミサイルの両方を搭載・発射できるようになっていると推測できます。また、金正恩は原子力潜水艦の視察と同時に、「水中秘密兵器」の研究事業についても説明を受けたそうで、これは近年開発を進めている核魚雷の発射も可能であることを示唆しています。

 しかし、今回公開されたのは、艦体の外側のみで、最も重要な内部の構造や搭載機器、舵、プロペラ、原子炉、推進システムについては不明です。また、外板にもソナー音波を減衰させる吸音パネルが貼られていません。このため、潜水艦において重要である機動性、安定性、静粛性や、ミサイルと魚雷の発射能力について未知数な点が多いです。

運用課題と将来の展望

 今回、建造途中の戦略ミサイル原潜を公にしたのは、国防5か年計画の中で唯一進捗が不明であった原子力潜水艦の開発が計画通りに進んでいることをアピールするためだと推察されます。今回の画像公開で、北朝鮮の戦略ミサイル原潜プロジェクトが進んでいることは確認できましたが、未完成な部分が多いため、進水と実用化まではまだ時間がかかると考えられます。

Large figure2 gallery9 2023年に進水した戦術核攻撃潜水艦「金君玉英雄」(画像:朝鮮中央通信)

 それでも、北朝鮮は国防5か年計画を「国防工業を飛躍的に強化して発展させるための中核的な構想と重大な戦略的諸課題」を解決するものだとしているので、たとえ未完成であっても、技術開発を進め始めただけで及第点とするでしょう。

 国防計画の観点からすると、問題はこれからです。北朝鮮として、戦略ミサイル原潜を本格的に戦力化させるには、性能上の課題を克服するだけでなく、少なくとも複数隻建造して実運用まで持っていく必要があります。

 加えて北朝鮮海軍は、燃料や整備能力、補給、インフラの不足に加え、教育・訓練のノウハウ不足など、運用面における多くの課題が残ったままです。原子力潜水艦だと、燃料不足の問題こそ解決できるでしょうが、安全性や燃料棒の交換、さらには核処理の課題があるので、全ての問題が解決されるわけではありません。

「深海の核」がもたらす軍事バランスの変容

 軍事力の強化に集中的にヒト・モノ・カネを注ぎ込む北朝鮮ですが、それでも他国に比べると、キャパシティーが限られているのも事実です。国防計画の観点からすると、戦略ミサイル原潜の建造と運用は、とてつもなく大きな負担になるので、もしかしたら原潜の実用化によって北朝鮮軍内部における運用バランスが崩れ、戦力強化や効率化などに影響が出ないとは言い切れません。

Large figure3 gallery108700トン級原子力戦略誘導弾潜水艦を視察する金正恩総書記(画像:朝鮮中央通信)

 また、潜水艦自体の性能や、運用面での課題、さらに日米韓の対潜戦能力を考えると、北朝鮮としては作戦化において色々と工夫する必要があり、北朝鮮は現在進行形で戦略・作戦・戦術を構築していると見られます。

 北朝鮮は非対称戦を重視してきたことから、戦略ミサイル原潜は合理的で、海軍の「エース」と位置付けるかもしれませんが、他国と違い、遠洋で活動するのではなく、朝鮮半島や友好国である中国やロシア東部の周辺で長く潜航し、日米韓に対する核攻撃の実行を作戦概念としていることも考えられます。

 今後ですが、北朝鮮は来年(2026年)1月以降に労働党第9回大会を発表する予定です。そこで新たな装備計画を発表し、戦略ミサイル原潜の完成と実戦配備を含む、戦力のさらなる強化や、諸課題の克服などに関する指示が出される可能性があります。

 北朝鮮の戦略ミサイル原潜に関するプロジェクトが今後、どのように進むのかについては不透明な部分が多いですが、少なくとも北朝鮮海軍が着実に成長しているのは確かです。ということは、我が国とインド太平洋地域の平和と安定への脅威は高まり続けることは明白であり、日米韓の3か国による防衛力の向上と連携強化が不可欠なのは間違いないでしょう。

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