私鉄ターミナル駅にて「聴いたことがない発車メロディーだな…」 作曲者の名前を見て「えっ!」まさかの有力者だった件
- 乗りものニュース |

歌手自ら選曲、聞き覚えのあるCMソングも
駅で列車の出発時にプラットホームに流れる発車メロディーは、人気歌手の曲が使われたり、「ご当地メロディー」が採用されたりとバリエーションが広がっています。耳にすると「あっ、あの曲だな」と分かることもあれば、初めて聴くような旋律もあり、調べてみると、その作曲者は筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が「知っている名前」だったということもありました。
伊予鉄道松山市駅の駅ビル。百貨店「いよてつ高島屋」が入居し、屋上には観覧車がある(大塚圭一郎撮影)
西武鉄道池袋線の清瀬駅(東京都清瀬市)では、同市出身の歌手である中森明菜さんの人気曲が発車メロディーとして流れます。上りホームは「DESIRE-情熱-」、下りホームは「セカンド・ラブ」です。これらの曲は清瀬駅が開業100周年を迎えた2024年6月11日から使われています。
西武は楽曲の選定には中森さんも加わったとし、「上りホームは朝に乗る方が多いことから『DESIRE-情熱-』、下りホームは元気が出る夜疲れて帰ってきた方を癒すことをイメージした『セカンド・ラブ』を選曲した」と説明しています。
JR東日本内房線の館山駅(千葉県館山市)は開業100周年の節目となった2019年11月9日、人気グループ「X JAPAN」の曲「Forever Love」を発車メロディーに採用しました。「X JAPAN」のリーダーのYOSHIKIさんらが館山市出身で、YOSHIKIさんが作詞・作曲を手がけた「ご当地メロディー」に白羽の矢が立ちました。橋上駅になった館山駅の改札内コンコースには「Forever Love」を利用者が鳴らすことができる発車ベルスイッチがあり、「ON」の黒いボタンを押すとサビの部分が流れます。
一方、テレビCMで聞き覚えのある曲が流れるのはJR東日本神田駅(東京都千代田区)での山手線の発車時。2023年10月以来、アース製薬の洗口液「モンダミン」のCMソング「お口、クチュ、クチュ。モンダミン」の旋律が流れます。2028年9月30日までの5年間にわたってアース製薬の広告として展開しており、神田駅の駅名標には「アース製薬本社前」の記載が入っています。
作曲者は知った名前!ただし、ミュージシャンではなく…
これらに対して、聞き覚えのない曲だったものの、気になったのが四国最大都市・松山市で伊予鉄道郊外電車の主要駅となっている松山市駅の発車メロディーを耳にしたときでした。
西武池袋線清瀬駅の開業100周年を記念し、かつての黄色と茶色のツートンカラーを再現した復刻ラッピング電車(2024年10月、大塚圭一郎撮影)
松山市駅は1番線から3番線まである地上駅で、直通運転している高浜線と横河原線、郡中港(愛媛県伊予市)と結ぶ郡中線が発着します。鉄道友の会ローレル賞を2026年に受けた新型車両7000系や、京王帝都電鉄(現・京王電鉄)京王線のエース車両だった5000系を譲り受けた700系、京王井の頭線時代と同じ型式名の3000系が入れ代わり立ち代わりやって来て、発車時になるとシンセサイザーで奏でられた音色が流れます。
伊予鉄によると、この発車メロディーは「リズム」という曲で、2015年7月1日から使われるようになりました。松山市駅のほかに郡中港、高浜線の終点高浜、横河原線の終点横河原でも採用されています。
親会社である伊予鉄グループのホームページに記された「リズム」の作曲者名を見て、名前を知っている有力者だったことに目をむきました。ミュージシャンとしてではなく、経済人だと認識していただけに驚きもひとしおでした。
それは伊予鉄グループ社長で、伊予鉄道の社長なども兼任している清水一郎氏でした。
清水氏は松山市出身の59歳。1990年に東京大学法学部を卒業して運輸省(現・国土交通省)に入り、駐英日本大使館参事官、四国運輸局企画観光部長、観光庁観光戦略課長などを歴任しました。2014年6月に伊予鉄道(現・伊予鉄グループ)副社長に転じ、翌15年6月から社長を務めています。日本バス協会会長にも就いています。
ビックリするほど音楽家だった清水社長
伊予鉄公式YouTubeにアップロードされている動画で、清水氏は「趣味は音楽・作曲」「尊敬する作曲家はバッハ」だと明かしています。
JR東日本内房線館山駅の改札内コンコースには、「Forever Love」を利用者が鳴らすことができる発車ベルがある(大塚圭一郎撮影)
「影響を非常に受けた」ミュージシャンの1人として「教授」と呼ばれた故・坂本龍一さんの名前を挙げ、小学生から中学生のときには坂本さんが参加した音楽グループ「イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)」の曲が流行しており「シンセサイザーを買い、そこから作曲にのめり込んだ」と振り返りました。
「リズム」については「リズム良く、歩くようなテンポ」にした曲だと説明。伊予鉄グループは「この音を聞いて、『リズム良く街へ出かけよう』という気持ちになっていただけることを願っている」とコメントしています。
発車メロディーは15秒に収められていますが、「リズム」は全体で3分6秒の長さがあります。
清水氏は他にも、愛媛県イメージアップキャラクター「みきゃん」を起用したアプリ「みきゃんアプリ」のテレビCMに使っている曲「Cream」、松山観光港と呉港・広島港を結ぶ高速船とフェリーを運航する伊予鉄グループ子会社の石崎汽船のテレビCMに用いられている曲「Make it」なども作曲しています。
清水氏はこうした曲が頭に浮かぶのは「朝に起きたときとか、寝ているときとか、飛行機に乗っているとか」で、時間に比較的余裕があるときに「ドーンとハーモニーとメロディーがそのまま浮かぶことの方が多い」と説明しています。
清水氏が作曲した発車メロディーやテレビCMの曲は、伊予鉄グループのホームページの「発車メロディ・テレビCM」で聴くことができます。曲はいずれも清水氏自身が演奏しており、四国の代表的な私鉄の経営トップの「もう一つの顔」をのぞくことができます。
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