「本州最北の駅」に行ってみた 寂れた終着駅と思ったら全然違う! 隣には謎の「てっぺんの終着駅」も
- 乗りものニュース |
青森県の下北半島を縦断するJR大湊線の終着駅である大湊駅には「てっぺん」の終着駅という看板が掲げられています。しかし、本州最北の駅は別の駅だとか。どう違うのでしょうか。
本州の北端にある2つの駅
本州で最も北に位置する青森県の下北半島には、野辺地町からむつ市を結ぶJR東日本の大湊線が運行されており、その路線の途中、むつ市内にある「下北駅」は本州最北の駅として有名です。
しかし、大湊線の終着駅はここではなく、その次の「大湊駅」であることから、地理的な「本州最北」駅と、路線としての「本州最北の終着駅」が別々に存在しているのです。
JR大湊線の終点である大湊駅(画像:写真AC)。
大湊線は下北半島の西側、陸奥湾に沿って約58kmを走る路線で、起点の野辺地駅を含めて11の駅が存在しています。前出の下北駅と大湊駅は直線距離で約2.3kmと比較的近距離にあり、列車で移動しても数分で到着してしまいます。ただ、運行本数が少なく地理的にもほかのJR線から切り離された孤立路線であり、しかも終点がほかの路線に接続していない「盲腸線」のため、なかなか行く人は少ないでしょう。
しかし、実際にそれぞれの駅に足を運んでみると、それら2つの駅ともに独自の色と、交通機関としての違いをハッキリと感じることができました。
大湊駅は「てっぺんの終着駅」
最初に訪れたのは、大湊線の終着駅である大湊駅。この駅は、隣の下北駅があるために本州最北を名乗れません。その代わりなのか、大湊駅のアピールで使われているフレーズは「てっぺんの終着駅」というものです。ここでいうてっぺんとは、最北であることを高さにたとえたものであり、最北だった下北駅が「てっぺんの駅」と呼ばれていたことにも関係しています。駅舎の入り口には「てっぺんの終着駅 大湊駅」と書かれた立派な看板が掲げられていました。
現在の駅舎は2010年に建て替えられたもので、中には休憩スペースとみどりの窓口のほかに、下北半島の観光地や物産品を紹介するコーナーもありました。ホームは路線の終着駅ではよく見られる頭端式で、線路の終点部分を「コ」の字形に囲む形でホームが設けられています。そのため、後ろに回り込んだ線路の眺めは「ザ・終点」といった感じで、鉄道マニアにはたまらないものがあります。
下北駅のバスロータリー。乗り場は広く、ベンチや屋根も整備されていた(布留川 司撮影)。
筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)が面白いと感じたのは、ホームの屋根の柱に上りと下り方向でそれぞれ異なるメッセージが書かれていることです。大湊駅にやってきた下り列車の乗客には「笑顔とまごころでお出迎えします」と「いらっしゃいませ季節きらめく下北半島へ」というメッセージ、大湊駅を離れる上り列車の乗客には「本州の終着駅からいってらっしゃい」と「四季豊かな下北にまたのお越しをお待ちしております」という文言が目に入るように貼られていました。
駅の随所にある控えめなアピールは、本州最北の駅の雰囲気にぴったりだと感じました。
下北駅は観光と交通の拠点
大湊駅の1つ手前にある下北駅は、観光地というよりも、地域の交通・観光の拠点といえる場所です。
駅舎と駅周辺は2007年から整備事業が開始され、駅舎が新しくなっただけでなく、駅周辺にも観光案内所、駐車場、バス・タクシープールなどが整備されました。
特にバスは複数の路線が乗り入れており、東京・新宿発の国際興業バスの夜行高速バス「しもきた号」や、観光地である恐山行きの路線バス(季節運行)もこの駅が乗り場となっています。公共交通機関を利用する観光客にとって、下北駅は交通の拠点的な場所だといえるでしょう。
なお、駅はむつ市の中心部にあたるため、周辺にはチェーン系の飲食店や販売店、それにホテルなどがあり、利便性も非常に高いといえます。
下北駅内の駐車場。地元民の利用者が多いのか、早朝にもかかわらず満車に近い状態であった(布留川 司撮影)。
また、下北駅は観光客だけではなく、地元の人々も遠方に行く場合に利用しているようです。これは大湊駅も同様なのですが、むつ市では駅駐車場を日をまたいで利用することを認めていることから(駐車7日以降は警告あり)、車で駅までやってきて、そこから大湊線経由で八戸駅や新青森駅まで出て、新幹線に乗り継ぐ人が多いようです。実際、筆者が訪れた日も、キャリー付きの旅行カバンを持った人々が、新幹線の乗車券を求めて構内の窓口に列を作っていました。
このように、大湊駅と下北駅は隣接してはいるものの、それぞれに特徴がある駅だということがわかります。むつ市とその周辺には見どころが複数あり、これら駅を起点に観光スポットに向かうことが可能です。
もし観光で訪れるのであれば、目的地だけでなく近傍の駅も訪れてみると面白いでしょう。写真では見つけることのできない、小さな発見があるかもしれません。
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