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終戦80年 原爆投下した「B-29」展示に垣間見た“根強い米世論”とは? 近々変更の計画も

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  • 乗りものニュース
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アメリカ軍の爆撃機「エノラ・ゲイ」が広島市に原子爆弾を投下してから、間もなく80年を迎えます。同機は2025年現在、ワシントンDC近郊の博物館で保存・展示されていますが、そこに至るまでには紆余曲折がありました。

「晴嵐」も残る世界屈指の「飛びもの」博物館

 第2次世界大戦末期の1945年8月6日午前8時15分、B-29大型爆撃機「エノラ・ゲイ」が広島市に原爆「リトルボーイ」を投下しました。広島市によると同年末までの4か月あまりで約14万人が亡くなったと推計されています。さらに大勢の市民が原爆の熱線や爆風、放射線による病気やけがに苦しんできました。

Large figure1 gallery91945年、テニアン島の飛行場でB-29爆撃機「エノラ・ゲイ」とともに写真に収まる乗組員たち(画像:パブリックドメイン)。

 筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は以前、アメリカの首都ワシントンDCで勤務している際、現存する「エノラ・ゲイ」の見学を目的の1つとして、ワシントン近郊にあるスミソニアン航空宇宙博物館別館「スティーブン・F・ウドバーヘイジー・センター」(バージニア州)を訪れたことがあります。

 この博物館は、ANA(全日本空輸)の羽田空港と結ぶ路線も発着するワシントン・ダレス国際空港の付近にあり、ライト兄弟による世界初の有人動力飛行から100年を迎えた2003年に開館しました。

 広さは約7万1000平方メートルと福岡ドームにほぼ匹敵する大きさで、屋内にはアメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙往還機「スペースシャトル・ディスカバリー」や、航空会社エールフランスが運航していた超音速旅客機「コンコルド」、第2次大戦中に愛知航空機(現・愛知機械工業)が製造した水上攻撃機「晴嵐」の世界で唯一現存する機体など、航空宇宙分野の博物館としては世界屈指のコレクションを誇ります。入館は無料で、運営するスミソニアン協会によると2024年に約120万人が訪れました。

簡潔な説明文の裏に隠された複雑な背景

 別館の中央部分に常設展示され、ホームページで紹介された9つの主要展示機にも入っているのがB-29大型爆撃機の44-86292号機「エノラ・ゲイ」です。ところが、先頭部にガラスを多用した操縦室を設け、主翼に4発のプロペラを備えた銀色の機体の傍らにある説明文は驚くほど簡潔でした。

Large figure2 gallery10スミソニアン航空宇宙博物館別館「スティーブン・F・ウドバーヘイジー・センター」に展示されたアメリカ軍の爆撃機B-29「エノラ・ゲイ」(大塚圭一郎撮影)。

 スペックとして翼幅43m、全長30.2m、全高9m、最高速度546km/hなどの数字が並ぶ脇に、「1945年8月6日、マーティン製のB-29-45-MOは日本の広島に戦闘で最初に使われた原爆を投下した。その3日後、(B-29)ボックスカーは長崎に2発目の原爆を投下した。エノラ・ゲイはその日、先遣気象偵察機として飛行した。3機目のB-29のグレート・アーティストは、両方のミッションで観測機として飛行した」と記されていました。

 筆者は日本人の1人として原爆投下の被害に触れてほしいと率直に思いました。しかし簡潔な説明文は、展示されるまでの複雑な経緯を、ある意味で示すものでした。

 そもそも「エノラ・ゲイ」は、大戦後に現役を退くとメリーランド州アンドルーズ空軍基地で解体・保存されていました。その後、ワシントンDC中心部のスミソニアン航空博物館(現・本館)で、原爆投下50年の節目となる1995年に公開することが決定。このとき奔走したのが、1987年に館長となったマーティン・ハーウィット氏でした。

 アメリカでは、原爆投下が大戦終結に大きく貢献したとの世論が、いまだ根強くあります。民間調査団体のピュー・リサーチ・センターが2015年に実施した世論調査で、広島と長崎への原爆投下についてアメリカ人の56%が「正当だった」と回答。日本人の79%が「正当ではなかった」と答えたのとは対照的な結果となりました。

 そのためか、展示に向けた準備に携わった元学芸員のグレッグ・ハーケン氏は「ハーウィット氏は両国に目を向け、決定を下した人々とその結果に苦しんだ人々の視点から出来事の全てを物語る展示をするつもりだと明言していた」と解説します。

裏切られた広島平和記念資料館の「全面支持」

 ハーケン氏は1991年夏に広島平和記念資料館を訪れ、当時の館長に展示計画を説明。すると、「自身も被爆者だった当時の館長は全面的に支持してくれ、あらゆる収蔵品を貸し出すと申し出てくれた」と振り返ります。

Large figure3 gallery11B-29「エノラ・ゲイ」についての説明文(大塚圭一郎撮影)。

 その後はハーウィット氏自身も資料館を訪問し、原爆の被害を伝えることに熱意を示しました。心を動かされた資料館側は、真っ黒に焼けこげた弁当箱といった貴重な収蔵品を貸し出すことにしました。

 しかし、こうした動きにアメリカ国内から待ったがかかります。ブレーキをかけたのは、退役軍人団体であるアメリカ在郷軍人会と空軍協会(AFA)でした。AFAは展示について「政治的に偏向している」と執拗に攻撃し、展示に次の3点を明記するよう要求しました。

 それらは「原爆が戦争を終わらせた」「原爆が100万人のアメリカ人の命を救った」「原爆使用以外の現実的な選択肢はなかった」というもので、スミソニアン側は「もはや交渉の余地がない」とさじを投げてしまうほどでした。

 結局、展示は胴体前部だけにとどまり、連邦議会議員らから責任を追及されたハーウィット氏も1995年5月に館長を辞任。こうしたアメリカ国内での動きに、広島平和記念資料館の関係者や日本人被爆者らが大いに失望したのは言うまでもありません。

 かくして、前述したように別館に展示されたエノラ・ゲイの説明文は、淡々としたものになったのです。スミソニアン協会の関係者は筆者に「学芸員も、説明するボランティアも、来場者に客観的な事実以外は言及してはならない決まりになっている」と説明しました。

 しかし、そのような中で2026年には状況に動きがありそうです。というのも、当初予定より1年遅れの2026年に本館の大規模改修工事が完成して展示内容を刷新する計画ですが、それに伴い原爆投下後の広島と長崎の街の写真を展示しようとしているからです。

 これは、展示や言及は客観的な事実だけに留めるという決まりがある中でも、原爆投下が大勢の全く罪のない日本人らの命を奪った悲劇もなんとか浮かび上がらせようと関係者が動いている証といえるのではないでしょうか。

 原爆投下後の写真展示が今度こそ実現し、原爆がもたらす惨禍と平和の大切さが伝わることを願わずにはいられません。

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