「そのデカいのは“帆”なのか!?」世界の船乗りが驚愕! 商船三井の「スゴい貨物船」が帰還 風を味方にして“意外な効果”も
- 乗りものニュース |
商船三井が貨物船への採用を進める巨大な“帆”を搭載した船が、北米への航海を終えて日本に来ました。風を味方にして環境に優しい運航を目指す装置ですが、どれほど有効なのでしょうか。“意外な効果”も明らかになりました。
デカい“帆”は注目度もめちゃ高い!
巨大な“帆”の現代版を搭載した船がその姿を現しました。商船三井ドライバルクが運航する風力推進装置「ウインドチャレンジャー」搭載のウルトラマックスバルカー(載貨重量6万4000トン型ばら積み貨物船)、「GREEN WINDS」が2024年11月8日、名古屋港で関係者などに披露されました。
ウインドチャレンジャーを搭載した商船三井ドライバルクの「GREEN WINDS」(深水千翔撮影)。
同船に乗り組み、太平洋の往復航海を終えた仙田晶一船長は「帆を使っていると体感的に速くなったように感じ、実際にエンジンの負荷も軽くなっている」と効果について話し、「素晴らしいものだなと実感しました」と絶賛しています。
「GREEN WINDS」は今年7月、長崎県の大島造船所で竣工しました。全長は199.95m、全幅は32.26mで、載貨重量は6万3896トンとなっています。ウインドチャレンジャーの搭載は「松風丸」(10万422重量トン)に続く2隻目で、デッキクレーンを備えたバルカーへは初の導入となります。1回目の航海で日本からカナダへドライ貨物を運んだ後、米ニューオーリンズで穀物を積載し、名古屋港にある全農サイロのバースに接岸しました。
「風を利用してGHG(温室効果ガス)排出や燃料の使用量を削減するだけでなく、宣伝効果も高い。フロリダ半島の東側を航行する時、けっこうな数のプレジャーボートが集まってきた。大洋航海中でも国際VHF(無線通信)を使って『船首に付いているのは帆なのか? そうすると帆船の航法が適用されるのか?』と聞かれたことがある」(仙田船長)
ウインドチャレンジャーは状況に合わせて角度や高さの変更が可能な伸縮機構を備えた硬翼帆です。2009年に東京大学を中心とする産学共同プロジェクト(大型風力推進船開発)としてスタートし、2017年からは商船三井と大島造船所が実装プロジェクトとして発展的に引き継いでバルカーへの搭載を前提とした共同開発に取り組んできました。
貨物の積載量への影響を抑えるため、帆の素材には軽量のGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を採用。帆全体の面積も大きくすることが可能になり、風を利用した推進力の最大化を図っています。
実は自動で伸縮 得られる“意外な効果”とは?
1隻目となる「松風丸」には4段式で最大高53m、幅15mのタイプが搭載されましたが、2隻目の「GREEN WINDS」に採用されたのは、3段式で最大高39.5m、幅11.4mのタイプです。これは100型バルカーの「松風丸」に比べて小さい船型の64型バルカーである「GREEN WINDS」に合わせたものですが、量産化に向けて多くの点で改良がされています。
商船三井の技術ユニットゼロエミッション技術革新チームでチームリーダーを務める若林陽一さんは「積載する荷物の量を減らさないようにするため、軽量化に気を配った」と説明します。
「昇降機構を油圧式から電動式へ変更し、帆の枚数も4段から3段へ減らした。機構をシンプル化することで、製品として完成度を上げている。さらにCFRPの採用部分も増やした。搭載ハードルを下げることで普及を進めていく」(若林さん)
さらにウインドチャレンジャーでは風力を最大限に活用するため、帆を自動で制御するシステムを備えています。風が弱い時には帆を伸ばす展帆を、風が強い時には帆を縮める縮帆も自動的に行います。
荷役時や出入港時は縮帆した状態ですが、大洋航海に出てナビゲーションオートモードに切り替えると、3枚のセイルが展帆し最大推力を得られるよう、風の強さや向きをセンサーで感知し帆を回転させます。
ウインドチャレンジャーの効果を話す仙田晶一船長(深水千翔撮影)。
「例えば真横から風が吹いた場合、普通の船はローリングが激しくなる。今回の航海では風速15mぐらいの横風の中を通ったが、帆を風が受け止めたのかローリングが小さいという体感があった」(仙田船長)
商船三井はウインドチャレンジャーを「GREEN WINDS」に搭載したことで、航路などの条件次第で約7―16%の燃料節減とGHG削減効果を見込んでいます。同社は今後、ウインドチャレンジャー搭載船を2030年までに25隻、2035年までに80隻を投入することを計画しており、新造船では4万2000重量トン型のハンディサイズバルカー3隻と5万8000重量トン型のハンディマックスバルカー3隻への導入が決まっています。
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