「あのSUVに似ている…!」 新型キックス“40歳代にぶっ刺さる”戦略にヒット車の面影 ライバルの弱点を徹底的に突いてきた!? 試乗で実感
- 乗りものニュース |

大人の“遊び心”を刺激する「3つの武器」
いまや登録車で最大のシェアを誇るカテゴリーとなったSUV市場ですが、なかでもコンパクトSUVクラスのモデルの販売は、約半数となる52万台を占めています。市場はトヨタ「ヤリスクロス」、ホンダ「ヴェゼル」、スズキ「クロスビー」といった人気モデルがひしめく激戦区ですが、日産は2026年6月、このマーケットに満を持して新型「キックス」を投入しました。
激戦のコンパクトSUV市場に挑む日産の新型「キックス」
新型キックスのコンセプトは「大人の“遊び心”を刺激するクルマ」。強力なライバル群に打ち勝つために用意した武器は、大きくわけて「デザイン」「先進技術」「ユーティリティ」の3つです。これらの魅力について、公道での試乗を含む実車のインプレッションを通じて紹介していきます。
まず「デザイン」については、担当したスタッフたちが「本当に欲しいSUVとは何か?」をゼロから考え、これまでの枠にとらわれることなくまとめたといいます。そうして生まれたのが、力強くダイナミックな「TOUGH(タフ)」と、俊敏で軽快な「AGILE(アジャイル)」の2つをキーワードとしたエクステリアです。
フロントマスクは、アメリカンフットボールのヘルメットから着想を得たそう。確かに、強い衝撃から顔面をガードする黒いバーが左右を貫き、その端をデイタイムライトがガッシリと固めているような、力強い雰囲気を放っています。
またリアスタイルは、テールランプとバンパーの一部が“口の字”を描くような独特の形状。前後ともに、フットワークの軽さだけでなく“守られている”感のあるデザインで、ほかのどのクルマにも似ていない強烈な個性を持っていると筆者(まるも亜希子:カーライフ・ジャーナリスト)は感じました。
さらに「X」「X+」グレードでは、前後バンパーにスニーカーのソールのようなモチーフが入るほか、「G」グレードのモデルには、クラス最大サイズとなる19インチのホイール(専用デザイン)を装着。足元の印象を引き締めています。
サイズ拡大の恩恵を活かした「ユーティリティ」
一方インテリアのデザインは、守られている安心感と心地よい開放感を両立した空間を目指したとのこと。低く抑えられたダッシュボードと横長のディスプレイがスッキリとした視界を作りつつ、太めのセンターコンソールがしっかりと助手席との間を隔てています。座ってみると上半身は開放的でありつつ、下半身はガッチリと守られていてリラックスできる印象です。
インテリアは解放感と安心感を両立した空間
インテリアに関連して、次に「ユーティリティ」に関するトピックを紹介していきます。最大のポイントは、室内の広さをしっかり確保したことでしょう。ボディサイズは先代比で全長が75mmプラスの4365mm、全幅が40mmプラスの1800mm、全高は10mmプラスの1615mmとなり、ゆとりのある乗員スペースを実現しています。
前席の快適性ももちろんですが、圧倒的だったのが後席の広さです。実寸で横幅は1390mm、頭上で86mm、膝まわりも630mmの空間を確保していますが、これはライバルを凌駕する数値。全シートに、身体を優しく包み込んで支え、疲労感を軽減する日産独自の「ゼログラビティシート」が搭載されているのも魅力的です。
細かな部分では、よく見るとインパネに置かれたディスプレイの下部分が、少し張り出しています。これはタッチ操作をする際に、手を置いて支えながらラクに操作できるようにするための工夫で、使い勝手がよく考慮された部分のひとつです。
またサイドミラーも先代はAピラーの根元に付くタイプでしたが、新型は少し後方にずれた位置に。これは右左折の際などに、斜め前方の死角を小さくするための配慮とのことで、開発陣のユーティリティへの強いこだわりを感じました。
そしてラゲッジ容量も先代から53Lプラスと大幅にアップし、476Lの大容量を確保しました。台形の開口部は大きく開き、パワーバックドアや1500Wまでの電源が備わるなど、SUVならではの使いやすさを備えていると感じます。
静かさとキビキビ感を両立! 第3世代e-POWERの実力は
そして「先進技術」に関しては、パワートレインが国内向けモデルでは初採用の「第3世代e-POWER」へと刷新されたことが最大のトピックでしょう。このシステムは、排気量1.4Lの発電特化型エンジンと新開発の「5-in-1電動ユニット」から構成されています。
パワートレインは国内向けモデルでは初採用となった第3世代の「e-POWER」
エンジンは圧縮比のアップとロングストローク化で発電効率を改善し、出力で20%、トルクは11%アップ。これに加えモーター、インバーター、発電機、増速機、減速機という5つの電動機構を1つにまとめたことで、出力5%、トルク13%のアップを上乗せしています。
また車両側でも、リアスポイラーやアンダーカバーなどの性能の最適化で空気抵抗を低減したほか、回生協調ブレーキも制御で回生量をアップ。結果として、燃費は25.7km/L(WLTCモード)を達成しました。
公道での試乗は、19インチタイヤを履く2WDモデルの「G」と、17インチタイヤが装備されたe-4ORCEの「X」をインプレッションしました。
まず「G」は大径タイヤのほか、BOSEのサウンドシステムなどの上級装備が充実したグレードです。発進から軽快な加速フィールで、すぐにパワーが立ち上がる力強さ、長続きする気持ちよさが印象的でした。
エンジンの作動時間は先代比で75%も低減しているとのことで、ほとんどエンジンの存在を感じません。モーター走行ならではの滑らかさ、静かさが際立っていました。首都高に入って、ようやくエンジン音がかすかに聞こえてきましたが、回転数は従来比で400rpm低く、振動も少なくなっています。エンジンルームから入る車内騒音は1.5dBほど低減したそうで、前後席の会話をまったく邪魔しない静かさが保たれています。
その反面、後席に座っての試乗では路面へのタイヤの“当たり”がやや硬めに感じ、特に60km/h近辺では微振動が気になりましたが、速度があがるにつれて落ち着きがアップ。全体としてはボディ剛性も高く、ハンドリングのよさの方が勝っている印象でした。
「G」にはガラスルーフが装着されているためか、タイトなカーブではもう少しガッシリ感が欲しいとも感じたものの、高性能ショックアブソーバーを採用した足まわりはしなやかで、キビキビと走れる楽しさがあります。
次に17インチタイヤ装着でe-4ORCEの「X」に乗り換えると、加速フィールやハンドリングの質はほとんど変わらないまま、乗り心地の安定感がグッとアップ。高速カーブでもしっかり感があり、2WDのキビキビ感とe-4ORCEの上質感をうまくバランスさせた、いいとこ取りのといえる良さを感じました。
新型キックスをテストしながら、筆者はふと「この走行感覚は『エクストレイル』、それもかつての、特に2代目までのモデルに似ている」と感じました。今でこそエクストレイルは質感も重視した少し上級のモデルになっていますが、初代と2代目は、いい意味でスニーカー感覚の作りが魅力の車種でした。
さらに言えば、新型キックスがメインターゲットとしている40代の人々は、まさに多感な10代の頃に、初代エクストレイルの登場を目の当たりにした世代です。今では自分が家族を持ち、かつてのエクストレイルのようにワクワクする“自分が欲しいSUV”を求めている人も多いのではないでしょうか。先進技術や使いやすさとともに、遊び心を刺激する新型キックスは、そんな人たちに響く、新感覚のコンパクトSUVとなっています。
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