台風なのに「出社強制」でけが、死亡…勤務先に“賠償請求”できる?【弁護士解説】
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近年、台風の接近や上陸が予想される日に、企業が従業員に出社を控え、在宅勤務を行うよう、呼び掛けるケースが増えています。ただ、中には、台風で天候が荒れる予報が出ているにもかかわらず、出社を命じる企業があるようで、SNS上では「うちの会社、台風が来ようと出社らしい」「台風なのに強制出社」「台風が来ようと電車が動いている限り出社」などの声が上がっています。
もし、台風の接近時や上陸時に出社を命じられた人が、通勤時にけがをしたり、亡くなったりした場合、本人や家族が勤務先に賠償を請求できるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士が解説します。
会社の「安全配慮義務違反」が認められるケースはそれほど多くない
台風の接近時や上陸時にもかかわらず、会社から出社を強制され、通勤時にけがをしたり、死亡したりした場合、従業員やその家族は会社への損害賠償請求が認められることがあるでしょう。なぜなら会社には、労働契約に伴い、従業員がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする「安全配慮義務」があるからです(労働契約法5条)。
しかし、通勤時の事故の場合、会社の安全配慮義務違反が認められるケースは、それほど多くありません。
台風時の出社命令が安全配慮義務違反に当たるかどうかは、気象庁の警報などの内容、公共交通機関の運行状況、従業員の自宅と勤務先の距離や通勤経路などによって変わると考えられます。これらの状況を考慮して、従業員の生命や身体に現実に危険が及ぶ高度の蓋然性(確実性)が認められるようなケースでは、会社は出社しないよう命じるなど、必要な配慮をしなければなりません。
それにもかかわらず、通常通り出社を命じ、台風の影響で従業員がけがを負ったり、死亡したりすれば、安全配慮義務違反となり、会社が損害賠償責任を負うことになるでしょう。
ただし、先述のように、通勤時における会社の安全配慮義務違反が認められるハードルは相当高く、実際に会社への損害賠償請求が認められるケースは多くないと思われます。
会社の安全配慮義務違反が認められない場合であっても、通勤時にけがを負ったり、死亡したりした場合、労災保険の対象になるため、原則、治療費などの給付を受けることができます。
会社が台風の接近時、上陸時に従業員に出社を命じた結果、従業員がけがをした場合には、損害として、治療費や休業損害、慰謝料などを請求されることになります。従業員が死亡した場合には、損害として、本人が生きていたら得られたはずの収入から本人の生活費を控除したものである「逸失利益」や慰謝料などを請求されることになります。
労災保険の請求がなされた場合、会社は、労災保険でカバーすることのできない分について、賠償金を支払うことになります。
なお、会社が、「台風で天候が荒れるため、出社、在宅勤務どちらでも可」と従業員に伝えていたとします。もし台風で天候が荒れている日に従業員が通勤時にけがをしたり、死亡したりした場合、会社の安全配慮義務違反が認められる可能性は低いと思います。
ただし、台風の状況などによっては、出社することが明らかに危険なこともあるかもしれません。そのような場合には、従業員の判断に委ねず、明確に「出社しない」などの指示を出す方が、会社の安全配慮義務の観点からも良いように思います。
もし台風で天候が荒れている日に会社から出社を命じられていたのにもかかわらず、出社を拒否し、懲戒処分を受けた場合、従業員が懲戒処分の無効を争うことは可能です。台風の規模、気象庁の警報などの内容、公共交通機関の運行状況、従業員の自宅と勤務先の距離や通勤経路などにより、出社することで生命や身体に危険が及ぶ可能性がある場合には、出社を拒否したとしても業務命令違反に問うことはできないと考えられます。その場合、会社が行った懲戒処分は無効となります。
懲戒処分が無効となった場合、会社は、懲戒処分によって従業員が負った経済的損失を補填(ほてん)しなければなりません。例えば、減給処分をしたのなら、減給した分の未払いとなっている賃金を支払う必要があります。
無効な懲戒処分をした場合であっても、会社に慰謝料の支払い義務まで認められるケースは少ないです。無効な懲戒処分による経済的損失が補填されることによって、通常生じる精神的苦痛は、相当程度慰謝されると考えられているからです。
トラブルを避けるためにも、台風の接近時、上陸時の対応について、勤務先と話し合っておくとよいかもしれません。
オトナンサー編集部
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