訪れた人を時空旅行にいざなう街「青梅」 江戸商家から猫スポットまで、その魅力の真髄に迫る
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映画が輝いていた時代の記憶が残るまち
東京駅から在来線を乗り継いで1時間半の青梅。市の観光案内を見ると、御嶽山(みたけさん)のハイキングや御嶽渓谷のカヤック、そして四季折々の花を愛でるコースなど、そのほとんどが大自然を堪能するものばかり。今回は、そんな大自然に囲まれた青梅のちょっと変わった楽しみ方のご提案です。
青梅は、江戸時代から石灰、木材、織物産業で栄え、江戸中期に整備された青梅街道が、地の利を生かした江戸との通商に拍車をかけます。特に江戸から明治期の「青梅縞(じま)」、明治から戦後までの「青梅夜具地(やぐぢ)」に代表される織物は、青梅の発展を根底からささえた基幹産業でした。
青梅は今、江戸時代の商家から明治期の蔵造り、戦前の看板建築や町家、そして平成に展開された映画の街としてのまちおこしの名残など、さまざまな時代の栄枯盛衰が渾然一体となって共存し、摩訶不思議な異空間を作り出しています。そんな青梅の魅力を、
1.映画の街
2.看板建築
3.町家建築
4.三業地
5.猫の街
6.昭和幻燈館
の6つのポイントから、具体的に解説します。
1.映画の街
まずは映画の街としてまちおこしをした名残から。青梅駅構内の地下通路には、壁一面に往年の名作映画の看板が展示されています。『旅路』『終着駅』『怪傑黒頭巾』『鉄道員(ぽっぽや)』。洋邦ないまぜ、時代もまちまちに並べられた映画の看板群は、とても駅の構内とは思えません。

街へ歩みだしても、旧青梅街道のそこかしこに掲げられた映画の看板が目を楽しませてくれます。『ティファニーで朝食を』やフェリーニの『道』。色、フォント、表情、すべてが懐かしの映画看板そのもの。
実はこれらの看板は看板絵師、久保板観(ばんかん)さんの作品。90年代初頭に青梅で開催されたアートフェスティバルで描いて以来、まちおこしも兼ねて描き続けては掲示されてきたのだそうです。
惜しくも板観さんは、2018年の初春にこの世を去り、新作を見ることは叶わなくなってしまいました。今では老朽化による崩落の危険もあるため、徐々に撤去されつつあるのが残念です。
市内には、板観さんの手による看板以外にも、大小さまざまな手描きの看板が見られます。例えばバス停の上にはマリリン・モンローの『バス・スットプ』や、傘屋の上には『シンギング・イン・ザ・レイン』など、洒落の効いた演出もまた一興。
しかし現在、青梅に映画館はありません。映画が最も輝いていた時代の記憶だけが封印されたかのようです。
変わった造りの看板建築も
2.看板建築
青梅は映画の看板だけではなく、建物の看板も興味深い街です。そう、20世紀のニッポンを席巻した商店建築のスタンダード・看板建築。東京の下町に残る看板建築は、その多くが銅板葺きや地味な壁面を垂直に立てたものですが、青梅の看板建築は本当に看板然としているものが数多くあります。
傘の文字と屋号の書体が涙モノの傘店「ホテイヤ」(青梅市本町。以下、町域のみ)は、なんと操業130年越えの老舗。その隣には、二軒のふりをしながら、実は一軒という変わった造りの看板建築も。

もともと玩具屋だったゲストハウス「青龍」(仲町)の看板建築もまた見応えがあります。人造石で造ったアーチを描くバルコニーの中に、木製サッシュの窓。緑青に色づいた銅板との配色が絶妙です。
仕舞屋(しもたや。商売をやめた家)も含めて、青梅の街ではいたるところに、バラエティーに富んだ看板建築を見ることができます。特に、建物の正面を本当に看板として使用しているものが多く、看板建築に興味のある方は、それだけでも足を運んで損はありません。
江戸から大正までの「商家の博物館」のようなまち
3.町家建築
さらに青梅には、看板建築以前に商店建築のスタンダードだった町家も数多く残っています。商店街のほぼ中心に位置する「昭和レトロ商品博物館」(住江町)と「赤塚不二夫会館」(同)は、懐かしの昭和グッズと漫画家・赤塚不二夫さんの足跡が所狭しとひしめくテーマショップ。綺麗にリノベされているので一見新築のようにみえますが、以前は家具屋として使われていた、れっきとした町家だそうです。
上記のようにリノベされた町屋はごく一部で、ほとんどの町屋は創建当時の姿のまま。特に明治時代の創建で現役の米とお茶の「柳屋」(森下町)は見応えある町家造り。通し土間や木製の陳列箱、上がり框(がまち)の凝りに凝った「ねじれ組み継ぎ」といわれるホゾなど、すべてのアイテムが時空旅行へと誘ってくれます。

また、柳屋か少し西にある旧稲葉家住宅(同)は、なんと江戸後期の建造。青梅宿の町年寄を務めた名家の跡で、材木や青梅縞の仲買問屋を営んだ豪商の保存家屋です。町屋の他に、蔵を改装した屋敷も数多く散見し、その様子はさながら江戸から大正までの商家の博物館と言っても過言ではありません。
旧花街と猫トレンドが共存
4.三業地
青梅は青梅街道の宿場町として発展した街。となれば三業地もあるはず。ご存知の方も多いと思いますが、三業とは料理屋,芸妓屋,待合の3つの業種が集まった場所、すなわち花街です。
前述の看板建築は市街地のおもに中心地に、また町家はおもに西寄りに点在していますが、三業エリアは駅の近隣に広がっていました。現在ではほとんどの建物が建て替えられているものの、カフェ建築風の美容室や洋風商店建築の写真館など、三業地の名残を感じさせる建物もちらほら。
三業通りと筋違いの中通りにある、1887(明治20)年創業のうなぎ店「寿々喜家」(本町)は、三業時代を見てきた生き証人。壁には全盛期の写真が展示されています。
また、三業通りの突き当たりには「ガチャ萬商會」(住江町)という、なにやら不思議な名前のお店も。かつて青梅の名産だった「青梅夜具地」を使った鞄などを販売する雑貨店。青梅夜具地は布団などに使用されたカラフルな生地で、最盛期には全国の約90パーセントものシェアがあったとか。ちなみに「ガチャ萬」とは、青梅に限らず、機織り機を「ガチャガチャ」と動かして「萬」の富を得たことから生まれた表現でした。
5.猫の街
さまざまな時代の繁栄の跡が交錯する青梅は、猫の街でもあるようです。ガチャ萬商會の敷地には猫のオブジェや、猫が描かれた街頭ゴミ箱など、猫にまつわるモノがそこかしこに。また、映画の看板も『ALWAYS 三丁目のタマ』や『極道の猫たち』など、猫絡みのパロディが笑いを誘います。
駅のすぐ近くには「昭和の猫街 にゃにゃ曲がり」(仲町)と入口に書かれた路地もあります。極めて細い路地の両側には、これでもかというくらい猫のレリーフやオブジェ、そして絵画がひしめき、その猫づくしっぷりに圧倒されます。

しかし、手作りの猫はたくさん見かけるものの、実際の猫にはまったくお目にかかりません。では、なぜこんなに猫なのかというと、かつて映画の看板描きをしていたことのある赤塚不二夫さん(青梅市出身ではない)が、映画でまちおこしをする青梅に共感を持ち応援。彼の愛猫「菊千代」はかつてCMにも出演した有名な猫だったので、赤塚さんが応援する青梅で、彼の愛猫にあやかり猫の街に……と、あまりにも複雑すぎる経緯にはいささか失笑ですが、手作りの猫はみなほっこりして、楽しい街角を演出しています。
唯一無二の異空間、それが青梅
6.昭和幻燈館
最後はそんな青梅を凝縮したような「昭和幻燈館」。実はこの幻燈館は前出の「昭和レトロ商品博物館」の別館で、雑然とした販売スペースの奥にこっそりと口を開ける赤暖簾の入口が、幻燈の世界へと誘ってくれます。
幻燈館の最大の見所はなんといってもジオラマ。映画やCMも手がけるジオラマ作家・山本高樹さんによる『青梅猫町通り』と題されたジオラマは、とある旅人が青梅の町にふらりと辿り着くと、町の人すべてが猫で、呼び込みも猫なで声だったという架空の町の話。よく見ると、カフェ・マタタビの屋号、清酒猫正宗の看板、そして雀・トカゲ・ネズミ料理といった品書きなど、遊び心満載。架空の町にもかかわらず、妖しげな灯り使いもあいまって、さながらリアルな商店街が再現されているようにすら見えます。

また館内には、赤塚不二夫会館のスタッフだった画家・有田ひろみさんによる、味のある可愛い猫の絵画やオブジェも展示されています。街角の猫にまつわる看板やオブジェともに、猫好きにはたまらない町ともいえるでしょう。
さまざまな時代の栄枯盛衰が渾然一体となって織りなす時層のラビリンス。ほかのどの街にもない、唯一無二の異空間っぷりをいかんなく発揮した新手のテーマパーク・青梅で、夏休みの1日を過ごしてみるのはいかがでしょうか。
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