消滅しかけた「2人乗り戦闘機」が復権? 変化しつつあるパイロットの役割 “もう一人がいないと酷”なワケとは
- 乗りものニュース |

かつてはテクノロジーの進化により廃れてしまった「複座型戦闘機」、じつは皮肉にもさらなるテクノロジーの進化によって各国の次世代戦闘機において「復権」しつつあるといいます。これからの複座型戦闘機の役割とは、一体何なのでしょうか。
テクノロジーの進歩で「消えた」はず…なのに復活した複座型戦闘機
1978(昭和53)年から1984 (昭和59)年まで、小学館の「週刊少年サンデー増刊号」に連載された新谷かおる氏の漫画『ファントム無頼』は、航空自衛隊が2021(令和3)年まで運用していたF-4EJ「ファントムII」のパイロット神田鉄雄と、ナビゲーターの栗原宏美の2人が主人公を務めていました。
ボーイングが開発・生産するF-15EX「イーグルII」戦闘機(画像:ボーイング)。
戦闘機のナビゲーターという職種は、現在ではあまり馴染みがないかもしれません。F-4EJは当時の最新鋭技術を用いていたとはいえ、レーダーや航法装置なども現代の基準では貧弱で、複座型戦闘機の後席に搭乗してパイロットをサポートするナビゲーターが必要とされていました。
『ファントム無頼』の作中、栗原はその怜悧な頭脳と冷静さから「コンピュータ」 を自認し、他の登場人物からもそう評されていたのですが、皮肉なことにコンピュータ技術の急速な進化によって、戦闘機に搭載されるレーダーや航法装置などの性能が向上した結果、パイロット1人でナビゲーターの行っていた任務が行えるようになりました。
現在でも、精密誘導兵器による攻撃を行うF/A-18F「スーパーホーネット」のような複座型戦闘機は存在しますが、1990年代以降に実用化された複座型戦闘機はほとんどが機種転換などの訓練に使用されており、21世紀に入って実用化されたF-22「ラプター」や、航空自衛隊も導入を進めているF-35「ライトニングII」は、機種転換訓練さえシミュレータで済んでしまうため、複座型は開発されていません。
このまま複座型戦闘機は絶滅してしまうと、最近まで考えられていましたが、「CCA」(Collaborative Combat Aircraft/協調戦闘機)と呼ばれるUAS(無人航空機システム)の登場によって、複座型戦闘機が複権する可能性が生じています。
ボーイングが「複座型の方が適している」と話した最新戦闘機
アメリカ空軍は、F-15戦闘機の最新仕様、F-15EX「イーグルII」の導入を進めています。2025年5月21日から23日まで幕張メッセで開催された防衛総合イベント「DSEI Japan」の会場で、F-15EXを開発・製造しているボーイングは同機に関する記者説明会を行いました。
そこで同社は、F-15EXはパイロット1人で運用できると断った上で、1機の有人戦闘機が複数のCCAを統御するシチュエーションでは、F-15EXのような複座型戦闘機の方が適していると述べていました。
また、韓国のKAI(Korea Space Industry)は国産戦闘機KF-21「ボラメ」の開発を進めていますが、KF-21の試作機の6機のうち2機は複座型です。
韓国も中国も「複座型」用意!
筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は2022年7月にイギリスで開催されたファンボローエアショーの会場で、KAIにKF-21の複座型を開発する意図を担当者に聞いてみました。
フランスやスウェーデンなどが2000年代後半から2010年代にかけて研究していた戦闘用UAS「ニューロン」の実大モックアップ(竹内修撮影)。
いわく、「試作機の複座型は基幹パイロットの養成と、国内外の要人が試乗するためのもので、CCAの統御能力は与えられていない」とのこと。
しかしその上で、「KAIと韓国空軍はKF-21が複数のCCAを統御する戦闘コンセプトの研究開発を進めている。このコンセプトが実用化された場合、単座型のKF-21のパイロット1人が複数のCCAを統御するのは荷が重いので、量産機でCCAの統御を主任務とする複座型が開発される可能性は高いのではないか」との見解を示しました。
「有人機+無人機」でパイロットの負担はどうなる?
中国は、第5世代戦闘機に分類されるJ-20戦闘機の複座型、J-20Sを実用化しています。2024年12月26日に初めてその存在が明らかになった第6世代戦闘機と言われるJ-36も、複座型機だと推定されています。中国が複座型戦闘機の新規開発に取り組んでいる本当の理由は不明ですが、ボーイングやKAIと同様、複座型戦闘機の方がCCAの統御に有効だと考えているという報道もあります。
フランスをはじめとするヨーロッパ諸国は、2000年代末期から2010年代初頭にかけて、戦闘用UAS「ニューロン」の研究開発を行っていました。当時の技術ではUASが有人航空機と協調飛行をすることさえ困難だと考えられていたため、ダッソー「ラファール」やサーブ「グリペン」などの戦闘機の複座型の後席に登場するオペレーターが、1機のニューロンを統御するコンセプトが打ち出されていました。
しかしその後、UAS技術は飛躍的に進化しており、現在では有人航空機に随伴飛行するのはもちろん、おそらく攻撃もAI(人工知能)に依存できるレベルに達しているものと思われます。
ただUASの普及に伴い、主に自由主義陣営諸国では、人命を奪う可能性のある攻撃の判断だけは人間がしなければならない、いわゆる「マン・イン・ザ・ループ」という概念が定着しつつあります。
1機のCCAの攻撃判断を有人戦闘機のパイロット1名で行うことはそれほど難しくないと筆者は思いますが、「マン・イン・ザ・ループ」の概念のなかでは、随伴するCCAの数が多ければ多いほど、パイロットの負担は大きくなると考えられます。
そのため、パイロットの負担を軽減するために、CCAの統御をオペレーターが同乗する複座型戦闘機を開発するのは、合理的な考え方ではあると筆者は思います。
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