まさかの「公費でタクシー通学」「保育園で朝食」なんて…どこの話!? 移住して驚いた7つのことレポート【フィンランド編】
- マイナビウーマン |
フィンランドといえば、ムーミン、オーロラ、サンタクロース、といったイメージを持たれるでしょうか。近年では、教育や暮らし方にも注目されることが増えているようですね。そんな淡いイメージを抱いている国に、ひょんなことから引っ越してきた私。何もかもが初めてだらけの国で、子育てをしながら見えてきたこと、感じたことをお伝えします。
驚いたこと1|保育園では、朝食が提供される
夫婦(パートナー)共働きが基本とされるフィンランドでは、両親ともに早朝から仕事に出かける、ということもあり、保育園と、後述するプレスクールでは、なんと! 朝食が提供されます。日本では、朝食付きの保育園や幼稚園なんて、聞いたことないぞ! と目玉が飛び出るくらい、驚かされたことのひとつが、これ。朝食のメニューは基本的にオートミール。日によってバナナやリンゴ、オレンジなどの果物が付いたり、ベリーソースやバターなどのトッピングが付いたりします。
日本でも「朝ごはん」の大切さが叫ばれているなかで、家庭環境の格差なく、みんなが朝ごはんを食べることができるシステムは、単純に素晴らしいと思います。しかも、朝食に大切とされる、炭水化物、タンパク質、ビタミン、ミネラルといった栄養素は、オートミールにすべて含まれている、という完璧さ! 朝の忙しい時間帯に、朝食を家で食べさせる必要がないなんて、最高! と喜んでいたのですが、保育園に通っているうちの娘は、オートミールが苦手なため、朝食は自宅で食べてから通園しています……。
驚いたこと2|6歳からのプレスクール
6歳の年長組に当たる年齢の子どもたちは、「プレスクール」に通うことになっており、義務化されています。小学校生活へのスムーズな移行を促すことが目的なので、プレスクールの一年間は、小学一年生の内容とほぼ同じことに触れ、子どもたちの様子をみます。
※2015年にプレスクールは完全に義務化され、義務教育の一部になりました。(プレスクールの動きは1960年代に始まり、1970年代に新しい学校制度が開始された際に、試験的に実施されました。その後、さまざまな形でおこなわれていましたが、2001年に、すべての自治体が、無償で提供しなければならない〔参加は自由〕、という法律ができました)
息子が通っていたプレスクールは、午前8時から12時までで、12時以降は、通常の保育に切り替わります。12時からは、保護者が迎えに来る時間帯(保護者の仕事などの都合により、決めることができる)まで、自由に遊んでいます。つまり、プレスクールの時間帯は、義務で無償ですが、保育の時間帯は義務ではないため、世帯収入に応じて利用料金が発生します。
プレスクールの、ある一日
では、プレスクールでは、具体的にどのような一日を過ごしているのでしょうか。たいへん気になります! 昨年、息子が通っており、保護者としては、プレスクールとのつながりはあったものの、実体験をしないことには、なかなか実情がつかめない、ということで、行ってきました、近所のプレスクール!プライバシー問題、特に教育機関では、たいへん厳しいフィンランドなので、無理を承知で、園長先生に頼み込み、やっとのことで取材許可をいただくことができました。
※それぞれのプレスクールや、その年によって、子どもの人数や、やり方は異なってきます。ここでは、あくまでも一例として、一個人が見てきたプレスクールをご紹介します。
8:00 朝食 給食はビュッフェスタイル
5歳以下の保育園では、一般的に教員が取り分けて配りますが、小学校ではビュッフェ形式のため、その練習も兼ねて、プレスクールでは、何をどれくらい食べるか、「自分で選んで決める」ことを習得していきます。
8:30 教室で自由時間
9:00 アルファベット”U”の文字について学ぶ(この日の活動)
このクラスは、子ども13名に対して、教諭1名、保育士2名の計3名のスタッフが担当しています(現在の規定では、教員1名に対して7名まで、教員3名に対しては、21名までの子どもを受け持つことができる)。
今日の天気、曜日を確認するなど、毎日やる一通りのことを全員で話し合ったあと、13人を2つのグループに分けて、それぞれ別の部屋で、この日のテーマ”U”について学びます。
ひとつのグループは、大きなテレビ画面に映し出された絵を見ながら、お話を聞きます(このとき、寝転んだり、くつろいだりしながら、好きな格好で見て良い)。
その後、”U”から始まるものを絵から探して、みんなで話し合います。
次に、さらに2人組に分かれて、”U”をテーマに、それぞれ活動をします。
▲粘土で”U”の形をつくる
▲タブレットで”U”の文字をなぞる
▲ホワイトボードに”U”の文字を書く
▲色とりどりのボタンを”U”の形に並べる
▲”U”の文字が含まれる言葉カードを使って、クイズを出し合う
▲アルファベットのマグネットの中から、”U”の文字だけを選び出す
▲いくつかのイラストが描かれている中から、”U”がつく単語を選ぶ
もう一方の6人グループは、
▲好きな色の画用紙に、鉛筆で”U"の文字を大きく書く
▲好きな色のフェルトを選んで、小さくハサミで切る
▲”U”の文字の上に糊でフェルトを貼り付けて、”U”のフェルト作品の完成!
各グループは入れ替わり、全員がすべての課題をこなします。90分ほどの時間をかけて、”U”の文字を感覚的に覚えていきます。同時に、はさみや糊の使い方、タブレットの扱い方などを経験し、覚えていきます。
ある程度の人数がいても、重要な課題では、少人数に分けて指導しながら、先生たちは、一人ひとり丁寧に様子をみてまわっていました。このようなきめ細かい指導があることによって、小学校への進学が、スムーズに促されます。
11:00 昼食
フィンランドでは、1943年に無償給食の法律が定められ(世界初!)、5年間の準備期間ののち、1948年から義務教育を受けるすべての子どもたちに、完全無償の給食提供が開始されました。プレスクールは義務教育なので、朝食と昼食が無償(公費)で食べることができます。
この日のメニューは、
・ニンジンの野菜ナゲット
・茹でたジャガイモ
・コールドソース
・パイナップルとズッキーニのサラダ
・サラダドレッシング
・マスタード
・牛乳
・クリスプブレッド
人気メニューは、チキンナゲット、ひき肉マカロニ焼き、ほうれんそうパンケーキ、フライドフィッシュ、ミートボールなのだとか。自宅では野菜を食べないけれど、プレスクールの給食はどれもおいしくて、給食のときだけ野菜を食べるようになった、という子どももいるほど。ビュッフェとはいえ、このプレスクールの先生たちは、嫌いなものでも、少しは食べるように、と指導していました。
11:30頃に教室に戻ってきて、キシリトールを食べます。これは無償ではなく、各自で購入して記名し、プレスクールに保管しておきます。さすがはフィンランド、キシリトールはやはり、虫歯予防に効果があるのですね。
11:40頃 自由遊び
このクラスでは、遊ぶ前に、誰とどこで何をして遊ぶのかを自分で決めて、自分のネームタグをボードに貼り付けて、誰が見てもわかるようにします。
▲りんごの中のサイコロの目は、遊べる最大の人数
▲ボードゲーム
ブロックやレゴ遊びをする子どももいれば、タブレットを使って、ブロックを組み立てる遊びをする子どももいます。
子どもたちはみんな、家であそんでいるような感覚で、リラックスしている様子でした。フィンランド語で保育園は、”päiväkoti”というのですが、直訳すると「日中の家」。まさにその通り! と納得。プレスクールの時間は12時までで、早い子どもは、保護者のお迎えがきます。
驚いたこと3|学用品は無償で配布
日本でも義務教育の課程で、教科書は無償で配布されますが、フィンランドでは、教科書、ノートはもちろんのこと、毎日使用する鉛筆、消しゴム、定規などの文房具まで無償で配布されます。鉛筆一本まで無償で配布されるとは!と、これまた度肝を抜かれた私。でも考えてみれば、教科書だけ無償配布されたとしても、鉛筆がないと勉強できない。誰もが、完全に無償で教育を受けることができる環境を目指しているフィンランド、そのあたりのことは、やっぱりすごいなぁと感心します。工作や特定の時間に使用するハサミや色鉛筆などは、必要な時に貸し出されます。一つひとつ、細かいものに記名する必要もなく、学校に置いてくるため、忘れ物をすることもない、という、いいことばかり。
▲プレスクールで配布される鉛筆と消しゴム
▲貸し出されるはさみ
▲小学校で配布される教科書やワークブック
フィンランドでは、日本のように家では靴を脱ぐという習慣があり、学校でも玄関で靴を脱ぐのですが、上履きなどはなく、みんな靴下で校内をうろうろしています。日本のように、必ずしも上履きを用意する必要はありません。また、体操服も指定はなく、動きやすい服を持っていくという感じ。体育の授業を見ていると、みんなバラバラの服装で、半袖もいれば長袖もいる、タンクトップ、キャミソールを着用している生徒もいます。さすがにスカートをはいている生徒は見かけませんでしたが、色もバラバラで、パッションピンクや蛍光イエローなど、目立つ色の服を身に着けている生徒もいました。日本の感覚からしてみたら、ん? ここは学校? というほど自由。
ランドセルもなければ、名札や文房具(道具箱)、上履き入れや給食袋などの細かいものも一切なく、特に必要なものは、まったくと言っていいほどないので、息子が小学校入学(入学式というものも特にないのですが)にあたり、かかった費用は、驚くべきことに、正真正銘0円でした。
驚いたこと4|通園、通学方法は自由 冬はソリ通園も
保育園や学校に通う際に、徒歩、自転車、車など決められておらず、自己責任で選択します。その日の気分次第で、自転車で通う日もありますし、冬の雪が積もっている日は、子どもをソリに乗せて通う光景もよく見られます。
15歳になると、原付バイク、原付自動車(日本では、あまり見たことのない軽自動車のような乗り物。バギーとも称される。一般的にはATV〔all-terrain vehicle〕という)での通学も許可されます。先日、中学校の前を通りかかると、駐車場にそのATVが、ひっきりなしに駐車されていて、日本ではあまり見られない光景を目にしました。
驚いたこと5|自宅が遠ければ、公費タクシーやバスで通学
フィンランドでは、一般的に、自宅から一番近い学校に通うことになっていますが、さまざまな事情で、自宅から5キロ以上離れている学校に通う場合は、バスで通学、バスが利用できない場合は、タクシーで通学することになります。バスやタクシー料金も公費から支払われるので、保護者が負担することはありません。
▲スクールタクシー
驚いたこと6|中学校の休憩時間は、スーパーマーケットに
平日のある日、私は近所にある、行ったことのないスーパーマーケットに出かけました。お昼前の時間帯だったのですが、やけに若者が多く、あちこちでうろうろしているのが目に入りました。どうやら、そのスーパーマーケットの近くに中学校があり、そこの生徒が買い物にきている、とのこと。授業の合間の休憩時間や、授業がないコマのときには、自由に過ごすことができ、いったん自宅に帰って軽食をとったり、近所のスーパーマーケットで、食べ物や飲み物を自由に買ったりすることができるらしい。日本の一般的な公立中学校に通っていた私にとっては、これまた大きな驚きであり、ここでも日本とフィンランドの自由度の違いを実感させられました。
驚いたこと7|学校での保護者面談は、母国語の通訳付き
学校と保護者の個人面談では、保護者の母国語がフィンランド語ではない場合、公費で通訳を付けることができます。面談だけでなく、子どもの健康診断や、病院での診療のときでも、必要があれば付けることができます。これは、移民に対しても、言語や文化を尊重するという観点で、誰もが平等に扱われるべき、という考え方からであるといいます。直接通訳者が同席してくれる場合もありますが、遠隔地であったり、時間的な問題があったりする場合は、オンラインでの通訳も可能です。
まとめ
旅行では、何度か訪れたことがあるフィンランドでしたが、やはり、「旅行する」と「住む」とでは大違い!生活の実情が見えてきて、驚くことばかり。いろいろな方が、本やウェブに執筆されているように、教育に関しては特に、個人の自由、意志が尊重され、誰もが、できるだけ平等に教育を受けることができるように配慮されていることを実感しています。また、みんな違ってみんないい、ありのままの姿でいいんだよ、という考え方が根底にあるんだなということが、ひしひしと感じられます。
(文・写真:Toma)
実は損している?
ニュースを読んでポイントが貯まるサービスがあるのを知っていますか?ポイントサイトのECナビでは好きなニュースを読んでポイントを貯めることができるのです。(※ECナビはPeXの姉妹サイトです。)今日読んだニュースが実はお小遣いになるとしたら、ちょっと嬉しいですよね。
ポイントの貯め方はニュースを読む以外にも、アンケート回答や日々のネットショッピングなど多数あるので、好きな貯め方でOK!無料で登録できてすぐに利用できます。貯まったポイントはPeXを通じて現金やAmazonギフトカードなどに交換できます。
運営実績も15年以上!700万人以上の方がポイントを貯めています。毎日好きなニュースを読んでお小遣いを貯めてみませんか?
簡単無料登録はこちらYOUの気持ち聞かせてよ!
いいね | ||
---|---|---|
ムカムカ | ||
悲しい | ||
ふ〜ん |