「ソ連の裏庭に姿見せてやれ!」米国による “名誉挽回の大作戦” その背景とは?「世界初の原子力潜水艦」誕生秘話
- 乗りものニュース |

世界初の原潜が生まれたキッカケとは?
昨今、日本でも改めて保有の是非で話題に上がっている原子力潜水艦。略して「原潜」と呼ばれるこの種の軍艦が誕生したのは1954年9月のこと。世界初となったのが、アメリカ海軍の「ノーチラス」でした。
2025年11月現在、アメリカ最新の原子力潜水艦である「アイオワ」。ヴァージニア級の24番艦である(画像:アメリカ海軍)。
それまでの潜水艦といえば、その運転に大気の吸排気が必要なディーゼルなどの内燃機関を用いて浮上航行し、蓄電池に充電するとともに圧縮空気タンクにも空気を充填。潜航すると、吸排気が不要の電動モーターで航行しました。ゆえに電力や空気が尽きれば充電や充填のため浮上しなければならず、厳密には「潜水艦」ではなく「可潜艦」と呼ぶべき存在でした。
そこでアメリカ海軍は、第二次大戦終結から1年後の1946年、核分裂エネルギーを軍艦の動力に利用できないか研究を開始します。しかし当時は、核の軍事利用=原子爆弾というイメージであり、それが軍艦の動力に使用可能だと理解できる人材は専門家ぐらいしかいませんでした。
そのひとりが、技術士官で国立原子エネルギー研究所に勤務していたハイマン・ジョージ・リッコーヴァー海軍大佐でした。彼は同研究所に勤務する多くの研究者との検討を経て、核分裂エネルギーを船の動力に用いることは可能という結論を得ており、これを用いれば「可潜艦」ではなく、常に潜航していられる「本物の潜水艦」が造れると考えます。
そこでリッコーヴァーは、当時の海軍作戦部長チェスター・ウィリアム・ニミッツ・シニア元帥に直訴したところ、かつて潜水艦乗りだったニミッツはリッコーヴァーの提案の価値を理解し、海軍原子炉部を設立して彼を責任者に据えたのです。
名文句「本艦は原子力にて航行中」が生まれた背景
リッコーヴァーは品質、納期、そして人選に厳しい完全主義の独裁者的存在で、軍人にもかかわらず、ほとんどの時間をスーツで勤務しました。その理由は、民間の科学者や技術者と過ごす時間が長いので、周囲が違和感を持たないようにするためだったといわれています。
世界初の原子力潜水艦「ノーチラス」の進水式1954年1月21日に行われた(画像:アメリカ海軍)。
かくして、潜水艦に搭載可能な小型原子炉であるS2W加圧水型が、ウェスティングハウス・エレクトリック・コーポレーション社で造られました。実はリッコーヴァーの原子力潜水艦開発は、この小型原子炉の実用化がほとんどを占めていたと言ってもよいほどでした。
なぜなら、動力さえ確保できれば極端なハナシ、「どん殻」となる船体は、既存の技術で造られた潜水艦でも、とりあえずは通用するからです。そこで船体は、第二次大戦型潜水艦のテンチ級などに用いられた海中性能向上改修である「ガピー改修型」に類似した形状とされました。そのため、水上における最大速力は22ノット(約40.74km/h)で、水中最大速力についても、水上よりもわずかに速い23.3ノット(約43.15km/h)でしかありませんでした。
今日の原子力潜水艦が、水中最大速力で30ノット(約55.16km/h)以上を発揮するのと比べると、初めてだからとはいえ、速力に関しては特段突出した性能を持っていたわけではありません。
ちなみに、武装は魚雷のみで、その発射管は艦首の右舷と左舷にそれぞれ3門ずつ計6門が装備されました。
こうして生まれた世界初の原子力潜水艦は「ノーチラス」と命名され、潜水艦の建造では歴史のあるエレクトリック・ボート社グロトン造船所で造られたのです。
そして1955年1月17日、グロトンを出港した「ノーチラス」はロングアイランド海峡へと進み、11時ちょうどに同行する潜水艦救難艦「スカイラーク」に向けて、短い発光信号を発しました。
「Underway on nuclear power(本艦は原子力にて航行中)」
かくして、世界初の原子力動力艦船で、かつ世界初の原子力潜水艦が完成したのです。
アメリカが仕掛けた 原潜でないと達成不可能な作戦とは?
それから約3年後の1958年夏、当時、宇宙開発競争でソ連(現ロシア)の「スプートニク」の後塵を拝していたアメリカは、名誉挽回をかけて、この「ノーチラス」を用いた科学実験航海を計画します。それは、潜水艦で北極点を通過するというもので、「サンシャイン作戦」と命名されました。
就役から4年後の1958年、ニューヨーク市の沖合を航行する「ノーチラス」の後ろ姿(画像:アメリカ海軍)。
当時、ソ連は原潜を保有していなかったので、北極海を潜航したまま通り抜けることはできません。そのため、これはソ連にとって「裏庭」的存在の北極海に、「仮想敵」のアメリカがわが物顔でのさばるという由々しき事態といえます。
実はこの作戦は、リッコーヴァーが「ノーチラス」の2代目艦長として指名したウィリアム・ロバート・アンダーソン中佐の提案によるもので、それまで誰も、原潜の潜航能力を用いて北極海を航行し、北極点を通過するということに考えが及んでいませんでした。
陸地の南極大陸上にある南極点とは異なり、北極に陸地はないので、北極点は海底にあることになります。ゆえに「サンシャイン作戦」が発想できたのでした。
かくしてアンダーソン艦長が指揮する「ノーチラス」は1958年8月3日、潜航したままで北極点上を通過。この事実を伝える通信文も有名になりました。
「Nautilus 90 North(ノーチラス北緯90度)」
宇宙競争ではソ連に遅れをとっていたアメリカですが、海洋開発競争では逆にソ連をリードした瞬間でした。そしてこれを機に、極寒の北極海をめぐる米ソの「海中の冷たい戦い」がヒートアップしていくことになるのです。
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