トランプ政権再び!「防衛費ヤバ…」「戦車が買えるかも!」 戦々恐々の国/ほくそ笑む国 日本はどっち?
- 乗りものニュース |
アメリカの第二次トランプ政権が発足しました。これから世界を“ひっかき回す”ことが予想され、防衛の面で戦々恐々としている国々も。一方で、千載一遇のチャンスと考えているところもありそうです。
トランプ大統領に戦々恐々の「仲間たち」
2025年1月20日(日本時間21日)、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.Cで大統領就任式典が開催され、ドナルド・トランプ氏が第47代大統領に就任しました。
アメリカ空軍のF-35C。第一次トランプ政権時に日本は多くのF-35の導入を決めた(画像:アメリカ空軍)
トランプ氏は2017年から2021年まで第45代大統領職を務めていますが、在任当時が同盟国への防衛費増額を求めたことなどから、今から戦々恐々としている国も少なくないものと思われます。
第二次トランプ政権の誕生で最も戦々恐々としているのは、NATO(北大西洋条約機構)に加盟するヨーロッパ諸国でしょう。
NATO加盟国は、ロシアのウクライナ侵攻に危機感を覚えた事などから、防衛力を強化するため防衛費をGDP(国内総生産)の2%以上に引き上げる目標を掲げており、2030年までにはGDP比3%にまで引き上げることも検討していますが、トランプ大統領の要求はさらに高そうです。
2024年12月20付のフィナンシャルタイムズ(電子版)は関係者の話として、第二次トランプ政権が、NATO加盟国の国防費を、GDP比5%に引き上げるよう要求する方針であると報じています。
正式な就任は連邦議会の承認を得てからになりますが、トランプ大統領は2024年12月22日、国防次官(政策担当)に、エルブリッジ・コルビー氏を指名しています。
コルビー氏もトランプ大統領と同じく、同盟国に防衛費の増額を求める考えのようで、2024年9月には自身のSNSで、日本は防衛費をGDP比3%程度にまで引き上げるべきだとの見解を示しています。
2024年12月27日に発表された令和7年度防衛予算案のGDP比は約1.6%ですが、それでも大軍拡との批判は起こっています。コルビー氏の見解通り3%程度にまで引き上げることは容易ではなく、石破政権は難しい舵取りを迫られることになりそうです。
再任で「あの夢をもう一度!」
戦々恐々としているNATO加盟国や日本とは対照的に、第二次トランプ政権の誕生を、新兵器購入の絶好のチャンスと捉えている国や地域もあります。その代表格と言えるのが台湾でしょう。
台湾への引渡し前にアメリカで試験を受ける、M1A2エイブラムス戦車の台湾バージョンM1A2T(画像:アメリカ国防総省)
台湾陸軍は2024年12月15日に、M1A2エイブラムス戦車の第一陣38両を受領しています。同陸軍は2024年の時点で約1100両の戦車を保有していますが、そのほとんどはM60などの旧式化したもので、実際の戦力としてはともかく、中国に対する抑止力としての効果はあまり期待できるものではありませんでした。
このため台湾は10年以上前からM1の購入交渉を進めていたのですが、アメリカ民主党政権は中国への配慮などから応じてきませんでした。
しかし2017年に誕生した第一次トランプ政権は、同盟国や友好国が自費で軍事力を強化すれば、アメリカ軍の防衛負担が軽減できることなどを理由に、台湾とのM1の輸出交渉を進め、第一次トランプ政権時代の2019年に輸出契約を締結しています。
筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は2007年に台湾で発行された、台湾軍の兵器カタログ「國軍武装」を所有していますが、その本の将来導入を希望している兵器をまとめた「未来編」の項には、当時購入できる見込みがなかったM1戦車のほか、F-35戦闘機やイージス艦なども記載されていました。
台湾メディアは2024年12月に、台湾政府が第二次トランプ陣営の政権移行チームに対して、F-35とイージス艦の輸出を非公式に打診したと報じています。
おそらく台湾政府は「M1の夢よもう一度」とばかりに、F-35やイージス艦の輸出を、第二次トランプ政権に求めていくことになると筆者は思います。
もう一つの「ほくそ笑む国」とは?
ベトナムも第二次トランプ政権の誕生を新兵器購入のチャンスと捉えている国の一つです。
第一次トランプ政権時代の2019年に、ベトナムの首都ハノイで開催された防衛装備展示会「DSEベトナム2019」で展示されたF-16の模型(竹内 修撮影)
ベトナムには第一次トランプ政権のころからF-16V戦闘機やC-130J輸送機などの売り込みも積極的に行われていました。
筆者は2019年と2022年にベトナムの首都ハノイで行われた兵器展示会を取材していますが、会場でベトナム人に話を聞いたところ、「アメリカ製兵器の導入によって中国から侮られなくて済むなら、ウェルカムだよ!」と言われて少し驚いてしまったものです。
国民からの抵抗も少なく、購入できるだけの資力があるにもかかわらずアメリカ製兵器の導入交渉が進まない理由の一つには、ベトナム人民軍に多数の兵器を供給しているロシアへの配慮もあるものと思われます。
ベトナムの複合企業体ビン・グループで主席経済顧問を務める川島博之氏は「JB Press」に執筆された記事の中で、第二次トランプ政権が求めてくるであろう貿易不均衡の是正圧力を、アメリカ製兵器を購入することの「言い訳」としてロシアに使うことをベトナム政府が考えはじめており、「取引」を好むトランプ大統領はこの案に応じる可能性があるとの見解を示しています。
トランプ政権が今後4年間、世界をひっかきまわすことは確かだと思いますが、台湾やベトナムなどはただ戦々恐々とするのではなく、トランプ政権を利用してやろうと考えているように思えます。
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